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歓楽等部も【無双】を目指すんで、そこんところヨロシク  作者: 椎鳴津雲
零の章 とある少年の日々
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零の章 第十二話 今となっては分からないことの数々

 伏見ふしみ理美りみと言う尊い命が失われた後、俺ら生徒は教師陣の指示の下、各自の教室へと行くように言われていた。心がからとなった俺は、黙ってそれに従った。

 

 今現在、俺は自分の教室にいる。

 自分の席に座り、俯きながら自分の机を見つめていた。


「……」


 隣の席へと視線を向ける。

 けど、そこに伏見さんの姿はなかった。

 

「……」


 教室を見回した。

 生徒の半数しかおらず、教室にいる生徒の全員が暗い顔をしてる。

 どうして半数しか教室にいないのか?

 理由は単純に他の連中は違う場所に運ばれていったからだ。

 数分前に起きた悲劇。それを目撃した多くの生徒の中には、具合を悪くした生徒もいた。吐き気やめまいといった軽い症状の生徒は保健室へ、気絶や精神的ショックを受けて動けなくなった生徒は救急車で病院へと救急搬送されていった。

 だから教室には半数くらいの生徒しかいないのだ。

 伏見さんの死は、それほど衝撃的で多くの生徒の心に深い傷を負わせた。

 誰しも予想しなかった突然の死。未だに信じられない。


「本当に……現実なのか?」


 現実だ。

 これは間違いなく現実。事件は起きてしまったのだ。

 

 その証拠に――


「……外が騒がしい……」


 外はとんでもない大騒ぎ。

 警察や救急車や消防車のサイレンが鳴り響く。

 音と音が混ざり合い、不協和音にも似たいびつな音が耳に届く。

 音だけではなく、救急隊員や教師陣の叫び声も聞こえてくる。


「離れてください!」「近づかないで!」と言う警察官の声も聞こえる。


 外では警察の現場検証が行われていた。そのうち生徒の事情聴取が始まる。

 情報収集のため、歩ける生徒は一旦教室に集められているのだろう。


『校内でのいじめはあったのですか!!』

『亡くなった彼女は社長令嬢とのことですが!!』

『教師は見て見ぬふりをしていたのですか!!』

『お答えください!! 無言と言うことは肯定派ですか』


「……雑音がうるさい……」


 マスコミの声も聞こえる。

 さすがはネット社会だ。情報の拡散が速いな。

 呆然と教室の席に座っている状態なので、正門の方にいるマスコミの姿は分からない。だけどわざわざ見なくても、どうせゴミのような姿をしているのだと容易に想像できる。きっとマイクを片手に、警察の制圧を押しのけて敷地内に入ろうとしているのだろう。10人、20人……多分沢山のマスコミがいるのだろう。多分この学校の誰かが、軽い気持ちで自殺のことをSMSに載せたのだろう。それが一気に拡散され、蜜に誘われて蟻が群がってきたのだろう。

 これではもう隠ぺいできない。自殺はあった。紛れもなく人が死んだ。

 学校は対応でてんやわんや。尻に火が付いて鎮火できない状態だろう。


「……」


 だけど、これから行われるでろう事情聴取は上手くいかないと思う。

 なぜなら、この高校に通う生徒の全員が、どうして伏見理美が自殺をしたのか分からないと思うからだ。誰がどう見ても、伏見さんは幸せな人生を送っていた――と思う。

 父は一流企業の社長さんで、母は第一線で活躍する世界的なファッションデザイナー。

 祖父母も才色兼備のエリートで、伏見さんもその血を継いでエリート。

 2年2組の学級委員であり、高校三年生になれば間違いなく生徒会の会長に選ばれるような人間。八方美人で皆に優しく、運動神経もよくて成績優秀、いわゆる全てが万能な完璧超人。

 まるで女神だ。

 彼女を嫌う生徒なんていなかった。金持ちなのに自分が金持ちだと自慢せず、優等生なのに劣等生にも優しく接する。こんなクラスの異端者である俺にも優しくしてくれた。

 

「いじめもなかった」


 誰も伏見さんをいじめようなんて考える訳がない。

 仮にもしいじめられていたら、彼女はその優しさで相手を包み込む。

 優しさに包み込まれた人物は伏見さんのファンになり、いじめをやめる。


「……だったら……どうして自殺なんて……?」

 

 彼女は衝動的に何かを行うような人間ではない。

 無計画の思いつきで行動するような人間でもない。

 なら、何が彼女を自殺をするまで追い込んだんだ?


「分からない」


 ここ最近、何か変わった出来事でもあったのか?


「いや、ないな」


 思い返してみた。俺の知る限りでは何もなかった。

 だとすると、他にどんな理由が考えられる??

 責任転嫁? 見せしめ? 自殺願望? 目標のない人生に絶望?


「……願望……」


 自殺願望――ないとは言い切れない。

 結局のところ、伏見さんは聞き上手。いつも相談される側だ。

 あまり自分のことを人に話さないタイプの女の子だった。

 だから俺も実際のところ、本当のあの子のことを知らない。

 それが今回の件を招いた――のかもしれない。


「……」


 でも、俺の知ってる伏見さんが本当の伏見さんだとしたら、自殺願望はないと思う。そういう雰囲気も『自殺したい』と言うような考えも持ったことはない――と思う。


「だとすると」


 見せしめ、とか? ――ないとは言い切れない。

 誰かに恨みがあったとか? 自分が死ぬことで誰かへの復讐になるとか?

 伏見さんは人の悪口を絶対に言わないので、本当の所は分からない。

 言わないだけで、本当は誰かのことを良く思っていなかったのかも……。

 

「でも」


 自分の命を犠牲にして成し遂げる復讐ってことは、相手は相当恨まれていたってことだよな。

 果たしてそこまで憎める人間がいるのだろうか?

 

「分からない」


 分からないことだらけだ。

 分からないことが多すぎて過ぎて頭が痛くなりそう。

 俺は頭を抱え、机に膝をつけ、ゆっくりと瞳を閉じた。

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