人類では到底勝つことのできない圧倒的な存在
この世界には、人類の天敵と呼ばれるモノが存在する。
猛毒を持ち、恐ろしいほどの締め付け力で人を殺す蛇。
鋭い牙を持ち、容赦なく人の体を切り裂く熊。
食事時となれば人など肉の塊、慈悲もなく人を食らう獅子。
水中の悪魔であるシャチや水中の狩人である鰐や鮫。
だがこれらは『脅威』であれこそ、対策ができないモノではない。
毒には抗体、猛獣には銃、鮫の牙には鉄の糸で編み込んだチョッキ。
人類はそうやって力をつけ、食物繊維の頂点であると思い込んでいる。
しかし、どう足掻いても人類では到底勝てない事柄が二つ存在する。
一つは自然的災害で、もう一つは人為的災害だ。
自然的災害:地震、津波、洪水、台風、噴火、干ばつなどなど。
人為的災害:列車事故、爆発、有毒ガス、ウイルス、化学物質。
それでも人類は抵抗した。知識を蓄え、災害に備えた。
結果、災害が起きても被害を最小限に抑えることに成功した。
なのに……二十年ほど前、温暖化の影響か、地球の怒りか、はたまた神の悪戯か、なんの前触れもなくヤツらが誕生した。人を人とも思わず、容赦なく生物の命を奪う圧倒的な存在。
それが――【災獣】だ。
自我を持たないはずの大自然が、動物の形として顕現した怪物の総称。
地震蜥蜴、干ばつ蜂、細菌蛇、竜巻山羊、洪水鯨、噴火蛙など。
その全長は一般的に知られる動物の比ではない。100倍、いや、1,000倍。
少し動いただけで、町一つが消え、多くの人が命を奪われる。
そんな怪物を目の当たりにした時点で人は皆、死を悟る。
咽び泣き、生にしがみつき、まだ死にたくないと懇願する。
だが震度9の地震蜥蜴と対峙したとある部活のとある生徒たちは、泣くこともせず、嘆くこともせず、喚くこともしない。まっすぐと怪物を睨み、ふつふつと闘志を燃やす。
『人類は災獣には勝てない?』
それは誰が決めた常識?
死を受け入れ、これが俺らの運命だと諦めるのは弱者の言い訳。
死んでも死にきれない理由があるヤツは強い。
だからこそ彼らは戦う。生きるために戦う。仲間のために戦う。死んでも戦い続ける。
「みんな!! 気を引き締めていくぞ。この戦い、負けるわけにはいかない!!」
「「「「「「「「おう!」」」」」」」」
12月24日。
とある少年の言葉で、人類史上最悪と呼ばれた災害との戦いが始まる。
しかし現実は……そう甘くはなかった。
戦闘開始から数秒後、あまりにも一方的に、彼らは大自然の驚異によって呆気なく捻り潰された。何も出来ず、ただただ虚しく散っていった仲間たち。大自然と言う概念は、まるで恐竜がアリを踏み潰すように殺意もなく関心もなく人の命を奪う。
少年は仲間の亡骸を見つめ、己の弱さを嘆いた。
「力があれば仲間を守れたのにな……」
後悔したところでもう遅い。
なぜならもう終わりなのだから。
その後、大自然の脅威は差別することなく、平等に、少年の命を仲間の元へと送り届けた。