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本がないので文章を書く理由について考察した話

作者: 神谷愛

本が無い、鬱。 


 いつもは会社の休憩時間で本を読んでいるのだが、今日は持ってくるのを忘れた。こう書くと休み時間を共に過ごす人の一人もいないのかなどと思われるだろうが別にそういうわけではない。単純に一斉に休憩時間を取る職場ではないので必然一人の時間が多くなるというだけである。

 閑話休題。私の働いている環境なぞ今はそこまで関係ない。要はいつも本を読んでいる時間が暇になったのでこうしてペンを持っているわけだ。正確にはペンではないが。ネットのペンも現実のペンも役割を果たすのならそこにさしてこだわる必要もない。

 暇で暇でしょうがないので何で自分がこうやって文章を書いているのか考えてみることにした。元来本を読むのは好きだ。それこそ子供の頃から本を読みながら歩き、教師の目を盗んでは本を読んでいたわけだから。少なくとも嫌いなどとは口が裂けても言えないわけだ。

 閑話休題。とはいえ自分が何で本を書き始めたのかがわからないほど耄碌したわけでもないし、年月を重ねて来たわけでもない。そう、これは暇潰しだ。どこまで言っても暇潰しの領域を脱することはできず、脱しようという気概もないわけである。

 さてはてつらつらと駄文を書き連ねたわけだがそろそろ本題に入らなければ就業時間が終わる。就業時間内に書き終えなければこの文章は暇潰しどころかインク染み、そうネットのインク染みとして消える憂き目にあるのである。それではこの文章が、引いてはこれを書いた私の魂も浮かばれまい。

 私が文章を書き始めたのは今からかれこれ5年ほど前である。世間が未だに感染症の対応をどうするかで世論が紛糾した後の静かさは対面の原則自粛という形で訪れたわけであった。私という愚かさ極めた実家通いの大学生というのは大学の授業の出席率が宜しくない。正確には授業に間に合わないが連発した結果、テストに遅刻したりするわけである。

 そんな人間にとってオンライン授業にというのは正に渡りに船だったと言っても過言ではない。いや、何だかんだでどこかで尻に火がつきちゃんと卒業はしたとは思うのだが、感染症が流行らなかった世界線の自分なのであまり信用はできまいとも思う。私はそこまで自分を信用していない。

 オンラインが授業の中心となってから私は思った。暇であると。別に遊び歩く性分でも金を溶かすような趣味も持ち合わせていないのでバイトに精を出すこともなかった。そうなると必定ネットの世界に飛び込んだりするわけであるのだが、そこで私は初めて二次創作という世界に顔を付き合わせたわけである。そう、二次創作である。なろうではそこまで幅を利かせることもないジャンルの気がする。まあ私はなろうで何かを読むということをしないのでもしかしたらとてつもなく巨大な界隈があるのかもしれないが。

 また話が逸れた。もうここまで話が逸れるともはや一種の才能があるのかもしれない。自分の溢れる才能には驚愕の嵐である。

 それはさておき、二次創作を見始めるようになってから思ったことはたくさんあるが、一番は自分の好きなシチュエーションが無いということだった。無いなら誰かに依頼して書いて貰うということは当然選択肢として思い付くところだが、それは今だからこそ思い付くことである。どちらにしてもあの時は金をたくさん稼いでいたわけでもないのでその選択肢を選ぶことはないだろう。無いならどうするか、そう自家栽培である。究極の地産地消というわけである。もしかしたら数年もすればSDGsの中に含まれているかもしれない。そうしてパンがなければ作れば良いじゃないと思いとある二次創作を書き始めたわけである。最初に書いた二次創作はとある超過疎村である。未だに新着順で見れば直ぐに私が書いたものに辿り着く。因みにそれを投稿したのは2020年である。私の後に投稿されたものは三作品しかなかった。それだけの過疎村である。それ自体は気にするところではない。古い作品にはまってしまった者の宿命でしかないのだから。流石に寂しく感じてしまうが。

 そうして次の二次創作を書き始めた。それも既に完結した作品のため同じ環境になるだろう。これに関しては調べていないのでわからないが。というか調べたくない。これで過疎村になったら泣き崩れる自信がある。良い年こいて泣き崩れる自信がある。

 そうやって二次創作を続けながら、ある時一次創作に出会ったわけである。二次創作への向き合いかたは人それぞれだろうが私はできるだけキャラの造詣を深めて、そのキャラでなければ話として成立しないような話を書きたいのである。これだったら側だけ変えれば他のキャラでも良いものは書きたくなくなってしまう性分である。我ながら面倒な性分であるとは思うが仕方がない。こればかりは育った環境と私の性格の問題だ。

 最初は普通の恋愛小説を書いていた。我ながら雑な進め方をしているななどと過去の自分に思ったりするわけであるが、なんだか悲しいので過去の自分の作品は読まないで置くことにしている。私がもっと過去を笑って読めるようになるまでお預けだ。

 ある時ふと書いた成人向けが自分のなかで大いにツボにはまった。もっと端的に雑に言うのならはまった。沼に落ちたとも言う。濡れ場などは筆が進む進む、ご飯に紫蘇をふりかけたぐらい進むのである。そうやってr18作品を書くことにはまってから気づいた。私が書きたいのは性交渉に至る過程であって性行為ではない。私が好きなのは例えばホテルの向かう道中、エレベーターの中の沈黙であって、性行為真っ只中のあえぎ声ではないのだ。ピロートークが好きなのであって、性行為の途中の上下関係の構築の会話ではないのだ。

 ここまで来るのに四年ほどかかったわけだ。これが長いと見るのか短いと見るのかは私の短い人生経験では測ることが出来ないけれど、まあ人によって違うだろう。

 存外ひたすら駄文を書き連ねることも楽しいことがわかっただけでも今日本を持っていくのを忘れたことの埋め合わせにはなっただろう。

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