ちょっとだけオチのある短編集(ここを押したら短編集一覧に飛びます)
糞
「ところでさ、最近のラノベってタイトルバカみたいに長くない?」
登校中、幼なじみの芽衣が急に小説の話を振ってきた。
芽衣は見た目はお淑やかだが口が悪い小説が好きな読書家で、いつも突然読書の感想とか本に関するマイナーな話を俺にべらべらと悪口のオンパレードで語ってくるのだ。
「まあ、それが世間の流れだからなあ。普通の小説はともかく、ラノベはタイトル長くしないと読んでもらえないことが多いんだろ。知らんけど」
「むー、でも私は納得しないなあ」
芽衣はムスッと頬を膨らませた。
「ねえ、短いタイトルで世間はおろか世界から注目してもらえるものを私たちで勝手に考えようよ」
「あー、じゃあ、勇者様とお姫様の伝説、とか?」
「なにそれ全然面白くない、ゴミカス以下ね、ハゲ」
俺、ハゲてるか?
ちょっと心配になってきた。
「今日はいつにも増して口悪すぎない?」
「何言ってんのフツーでしょ、このクソザコ」
「はいはいクソザコクソザコ。じゃあどんなのがいいんだよ」
「そうね、やっぱり男らしく漢字一文字かな」
「お前女だろ」
「うっさいわねカス、今の時代男とか女とか関係ないんだよ、アホ」
「発言めちゃくちゃで支離滅裂だな。へいへいサーセン」
どうしてこいつはいつも口が悪いんだろうか。
何を食ったらこうなるんだ?
「決まったわ」
それからしばらく二人して考え込んでいたところ、ふと芽衣が口を開いた。
「どんなタイトルだ?」
「今の世間はおろか世界にぴったりのタイトルよ」
「なるほど。では、発表をお願いします」
そして芽衣は声高らかにその言葉を発した。
「糞」