第4部 第13話
「何だ⁈何が起こった⁈」「分からない。煙がすごくてよく見えない。」
ヒデオたちの周りには砂煙のようなものが立ち込めていて視界が悪く、衝撃と音に驚いた周りの人たちの「キャー!」とか「うわー!」といった叫び声だけが聞こえていました。
「怪物の仕業か?」
「たぶんそうだと思う。クソッ!この騒ぎに乗じて襲われるかもしれないぞ!気を付けろよ、2人とも!」
「心配しなくてもそんなことはしねぇよ!」
ヒデオとコウイチの会話に急に混ざる声がしたので、ヒデオたち3人に緊張が走りました。
砂煙が収まるまで一瞬も気を抜かずにいたヒデオたちでしたが、本当に砂煙が収まるまでヒデオたちだけでなく、周りの逃げ惑う人たちも襲われることはありませんでした。砂煙が収まるとヒデオたちの前には、身長4メートルぐらいはある天狗のお面を被ったような顔をした体が黒い怪物が立っていました。
「俺の名前は『オオキイ』!お前が…えーっと…ユウキ・ヒデオはどいつだ?」
天狗の顔をした怪物はヒデオたちの顔を矯めつ眇めつ見ても誰がヒデオか分からず、ヒデオたちに質問してきました。するとヒデオは、怪物に全く臆することなく「俺がユウキ・ヒデオだ!俺に何の用だ?まさかサインをもらいに来たわけでもないんだろ?」と、聞き返しました。
「アッハッハッハ!確かにサインをもらいに来たわけじゃない。もらいに来たのはお前の命だ、ユウキ・ヒデオ!俺たちの仲間である『ヤワラカイ』、『カタイ』、『アツイ』、『ツメタイ』の4人を倒したお前をいつまでものさばらせておくわけないだろ!」
「…つまり、お前は俺を殺しに来たわけだな?」
「ああそうだ。もちろん、お前の仲間であるそこの2人も殺すし、お前らを殺した後は他の能力を持った奴か自衛隊とか言う奴らが来るまでここで暴れるがな。」
「オオキイ」と名乗った怪物は不気味に笑いながら言いました。
すると、ヒデオも少し口角を上げました。それを見た「オオキイ」は「何がおかしいって言うんだ?」とヒデオの笑みを見て、気分を損ねたようにヒデオに尋ねました。その問いにヒデオは笑みを浮かべながら「いや、『オオキイ』といった割にはあまり大きくないなと思ってさ。これなら…。」と答えました。
「これなら?」
「オオキイ」はヒデオの最後の一言が気になり聞き返しました。
「これなら倒すのに1分もかからないなと思ってさ!」
そう言うと、ヒデオは駆け出して「オオキイ」との間合いを一気に詰めました。
しかし、急な行動でも「オオキイ」は慌てることなく、ヒデオに向かって右手でパンチをしてきましたが、ヒデオはそのパンチをするりとよけて、ジャンプして「オオキイ」のあごに向かってパンチを繰り出しました。
「よしっ!いけるっ!」
ヒデオが自分の攻撃がヒットすることを確信した瞬間、腹部に衝撃を受け、そのままヒデオから見て左の方へ移動させられてしまいました。ヒデオが痛みで閉じたまぶたを開くと、自分が「オオキイ」の左手で腹部を横から鷲掴みにされていることに気が付きました。
「ハッハッハッハ!体が大きいから動きがノロいと思って油断しただろ?最初の右手のパンチはわざと少し遅くしたのさ!本命はこうやって左手でお前を掴むことだったのさ!」
「オオキイ」が得意げに笑っているのを見て、ヒデオは「オオキイ」のことを舐めてかかったことを後悔しました。
「ハッハッハ!このまま握り潰してやるわ!」
そう言って、「オオキイ」は左手に力を込めてヒデオを握り潰そうとしました。
ヒデオは何とか逃れようと何度も「オオキイ」の左手を叩きましたが、全く「オオキイ」の握力は弱くなりませんでした。
「ハッハッハ!無駄無駄!絶対放さないか…。」
「オオキイ」が笑って油断していたら、頭上から氷の塊が降って来て「オオキイ」の頭にぶつかりました。その衝撃で一瞬「オオキイ」の意識が途切れた隙に、ヒデオは「オオキイ」の左手から逃れました。
「俺のことを忘れてるんじゃねぇよ!」
リョウスケが「オオキイ」に対して怒りの声を上げました。
「助かったよ!ありがとう、リョウスケ!」
「あんな簡単に掴まってんじゃねぇよ!馬鹿が!」
「悪かったよ、もう油断しない!本気で行く!」
「ふーっ、油断していたのは俺もだったか。そっちが本気を出すんだったら俺も少し本気を出そうかな。」
そう言って、「オオキイ」はヒデオたちから間合いを取り、その場で力み始めました。
「何かするつもりだ!やられる前に倒しちまうぞ!」「ああ、そうだな!」
ヒデオは今度こそ「オオキイ」に一発食らわせようと駆け寄って行きました。ヒデオに続いて、リョウスケも隙だらけの内に氷漬けにしてしまおうと「オオキイ」に近づいて行きました。
リョウスケより先に難なく近づいたヒデオはジャンプして「オオキイ」のあごを殴ろうとしましたが、スカッと空振りました。
「おい!何やってんだよ!」
追いついたリョウスケに責められましたが、ヒデオには一度目に「オオキイ」に向かってパンチを繰り出した時との違和感がありました。




