第3部 第28話
「それもそうだな。今すべきことはツバサに怒りをぶつけることじゃなくて、チカラが目を覚ましたことを喜ぶことだよな。…ところで、ムカイさんは?」
「えっ⁈ムカイさん来てるの?」
ヒイロのショウへの問いかけに出て来た「ムカイさん」という単語に引っかかったチカラが、ショウがヒイロの質問に答えるよりも先に尋ねてきました。
「うん、怪物のことを俺から聞こうと病院に来てるんだ。病室の前まではいたはずなんだけど…。」
「ムカイさんは『チカラくんが目を覚ましたなら積もる話もあるだろうから、僕は病室の前で待っているよ。』って言って病室の外にいるよ。」
「そっか…。」
「ところでヒイロ、チカラが目を覚ましたら聞きたいことがあるって言ってなかった?」
ショウの全く予期しなかった会話のパスにヒイロは慌てて「ショウ、何言ってんだよ!そんなのないから!」と、ショウの発言を否定しました。
「えっ⁈ヒイロ、僕に聞きたいことあるの?なになに?」
「いや、何もないから。ショウがふざけてるだけだから、気にしないで!」
「おいおい、良いのか?すごく聞きたそうにしてたじゃないか。自分で言いづらいなら俺が代わりに聞いてやろうか?」
「ショウ!いい加減しろよ!あんなの今聞くことじゃないから!」
「え~、なになに?教えてよヒイロ!今聞いてくれたら何でも答えてあげるよ!」
「ホント⁈ホントに何でも答えてくれるのか?」
自分の「何でも答えてあげる。」という発言を聞いて、急に態度を変えたヒイロにちょっと恐怖を感じたチカラは「いや、やっぱり何でもは言い過ぎたかな。あまり変な質問じゃなければ…。」と、自身の発言を修正しようとしましたが、「いや、ダメだよ!『何でも答える。』って言ったもんね。絶対答えてくれよ!」と、ヒイロは1回取った言質を手放そうとはしませんでした。
ヒイロの必死さに気圧されたチカラは「分かったよ!何でも答えるよ!ただし、1つだけだよ!」と、仕方なく質問に答えることにしました。
「よしっ!それじゃあ聞くけど、チカラが俺のことを羨ましく思う理由って何?」
病室内が一瞬静寂に包まれた後、その静寂を破るように「プッ!アハハハハッ!」とチカラの笑い声が病室内に響き渡りました。チカラは笑いがなかなか止まらず、数十秒間笑っていました。その様子を見ていたヒイロは「何だよ!そんなに笑わなくてもいいだろ!こっちは真剣に考えても答えが分からないのに!」と、愚痴りました。
それに対してやっと笑いが収まって来たチカラは「アーッ、笑った笑った!真剣に考えても分からないようだからおかしかったんだよ!でもまあ。ずっと悩んでいたみたいだし、良いよ!教えてあげる!僕がヒイロを羨ましく思う理由はね…。」
「理由は…?」
「ヒイロが自由自在に空を飛べるからだよ!」
「…は?何だよそれ⁈チカラだって空飛べるじゃん!それのどこが羨ましいんだよ⁈」
「はぁ。ヒイロ、僕の能力は何か知ってるよね?」
物分かりが悪いヒイロに対してため息をつきながらチカラは問い返しました。
「もちろん!『手を使わずに物を動かせる能力』だろ!それが何だって言うんだよ⁈」
「はぁ~。まだ分からないんだ?僕の能力は本当は空を飛ぶための能力じゃないんだよ。僕が空を飛んでいるときは、自分の能力で自分の体を浮かしたり動かしたり、常に頭で考えてなきゃいけないんだよ。それに比べてヒイロの能力は『空を飛ぶ能力』だから、気軽に空を飛んでいるように見えてずっと羨ましかったんだよ!」
チカラが言い終わった後も納得できなかったヒイロは「ホントに~?…そうだ!ショウ!チカラが言ってることはホント?」と、ショウに尋ねました。
ショウはやれやれという感じで「ホントだよ。チカラはウソをついてない。ていうか、チカラの顔を見れば分かると思うけど。」と、言いました。
ショウに言われて、ヒイロがチカラの顔をまじまじと見ると、チカラの顔は本音を言って恥ずかしかったのか真っ赤になっていました。
それを見たヒイロはチカラの顔が真っ赤になっていたことにすぐに気が付かなかったことやチカラの本音を聞いたことで恥ずかしくなり、少し頬を赤くしました。




