第3部 第20話
首がなくなった「アツイ」の体から血がふき出て、それに驚いた人質だった女性は「キャー――!」と叫びながら座り込んでしまいました。ヒイロは座り込んだ女性にもたれかかっている「アツイ」の体を退かそうとして両手で掴みましたが、その熱さに驚いてすぐに手を放してしまいました。そのため、また女性に「アツイ」の体がもたれかかろうとしたので、ヒイロは女性には失礼だと思いましたが、足で蹴って退かしました。
「「大丈夫ですか?」」
ヒイロと同じタイミングで「アツイ」の首を蹴り飛ばした人が、人質だった女性に声を掛けました。
「…は、はい。大丈夫です。」
「すみません。驚きましたよね?一撃で怪物を倒さなきゃいけないと思ったので、利き腕が使えなかったため、利き足を使ったのですが、まさか首が飛ぶとは思いませんでした。申し訳ありません。」
「いえ、助けてもらったのに、血くらいで騒いでしまって、こちらこそすみません。あ、ユウキ・ヒデオ!」
人質だった女性は助けてくれた人がユウキ・ヒデオだと気づき、余計にしおらしい態度をとりました。
なぜなら、ヒデオが怪物退治をしている人たちの中で一番有名で、一番報酬金を稼いでいるだけでなく、一番整った顔立ちをしていて女性人気が高く、この女性もファンだったからです。
「すみません。もう少し加減すれば良かったんでしょうけど、一撃で倒せなかったらヤバいと思ったので、全力を出してしまいました。」
「いえいえ、命を助けていただいたのだから、それで充分です。あまり気にしないでください。」
人質だった女性が両手を開いて前に出し、ヒデオに気にしないでほしいと手を振るジェスチャーしていました。それを見たヒイロは、今までヒデオと自分の圧倒的な差は、ヒデオが能力を使って怪物退治で活躍していて、自分は能力を使って遭難者の捜索など目立たない仕事しかしていないから生じるものだと思っていましたが、ヒデオの容姿が秀でているのも関係していたということをひしひしと感じていました。
一見すると怪物の血で汚れた女性にケガは無さそうに見えましたが、一応目視でしっかりとチェックしていたヒデオは、脇腹の辺りのスーツが焦げているのに気付きました。
「ちょっといいですか?脇腹の辺り、怪物に何かされませんでしたか?」
「えっ?脇腹ですか?…ああ、そういえばこの方が怪物をからかう様なことをしたら、怪物の体が熱くなるのを感じました。多分、その時焦げたんだと思います。」
女性がヒイロを指差してヒイロへの批判ともとれる発言をしたので、ヒイロは即座に「すみません!あの時はヒデオさんが後ろにいるってことを怪物に気付かれないようにするために、僕に注意を向けさせようとしてあんな行動をとってしまったんです!本気であなたのことがどうでも良かったわけではないです!」と、謝罪と言い訳をしました。
すると人質だった女性は微笑みながら「分かってましたよ。誰かが後ろにいるのは。だってあなたの後ろにいる人たちの視線が私の後ろにいる誰かに向いていましたから。しかもその人たちの表情が喜びを隠せていなかったので、私の後ろにいるのは私を助けようとしてくれている誰かだとすぐに分かりました。だから全然心配してなかったし、スーツが焦げたことも気にしてないので、あなたも気にしないでください!」と、言ってくれたのでヒイロは「ありがとうございます。」と、女性が言ってくれたことを素直に受け取ってお礼を言いました。
「でも、ケガしていたらいけないので一応病院に送りますのでついて来てくれますか?」
いつの間に近くにいたのか、コウイチが人質だった女性に向かって言いました。
「分かりました。どこの病院に行くんですか?」「○○病院に向かいます。」
「えっ⁈○○病院は怪物に襲われたって聞きましたけど?」
「確かにそうですね。でもケガ人の手当てのプロフェッショナルが来ていて、もしケガがあった時は跡が残らないように治してもらえるので、○○病院に向かいたいと思うのですがよろしいですか?」
「後が残らないなら、是非ともお願いしたいです。○○病院でお願いします。」
「それじゃあヒデオ、ヒイロくん、怪物の死体の後始末の人たちが来るまで、怪物の死体を見張っててくれ!」と、言い残してコウイチは人質だった女性と○○病院にワープしました。
その後、ヒイロとヒデオで怪物の死体を見張っていましたが、周りの人たちが全員ヒデオのことしか見ていないうえに、ヒデオにばかり「助かりました!ありがとうございます!」と、お礼を言うので、ヒイロはまたもやもやした気持ちになりました。実際に怪物を倒したのはヒデオだし、利き腕をケガしているのに無理してヒイロと人質の女性のピンチを救ってくれました。それに比べてヒイロは怪物を弱らせただけのうえに、ビルの壁にひびを入れ、怪物に人質を取られたりする失態をしてしまったのもヒイロは分かっていましたが、少しは自分のことも労ってほしいと思っていました。




