第3部 第19話
「おーっと…それ以上動く…なよ。動いたら…こいつが…どうなるか…分かってるだろうな!」
「アツイ」はビルにぶつかった衝撃でしゃべるのもやっとといった感じでしたが、ヒイロは万が一のことを考えて動けずにいました。
「そうだ…それでいい。お前が…『ハヤイ』を倒した…ソラ・ヒイロだな。気をつけては…いたんだが…まさか…何百度にも…なっていた…俺の体に触れて…無傷とはな。お前に…壁にぶつけられた…衝撃で…俺は重傷だって…言うのにな。もう…ユウキ・ヒデオや…ウドウ・チカラを…倒すのは無理だろうから…お前だけでも…道連れにしてやる!さあ…人質を殺されたくなければ…こっちへ来い!」
「アツイ」は今にも倒れそうなくらい弱っていましたが、気迫だけはすごく、ヒイロが言うことを聞かなかったら、今にも人質の女性を殺しそうでした。
「た、たすけて…。」
人質の女性がか細い声でヒイロに助けを求めて来たので、ヒイロは(何か打開策はないか?)と考えながら、「分かった。言う通りにするから、人質には何もしないでくれ!」と言って、ゆっくり「アツイ」に近づいて行きました。
「そうだ…そのまま…こっちへ来い!」「分かってるって。逃げも隠れもしないから。」
ヒイロは出来るだけゆっくり歩いて、打開策を考えていましたが、何も思いつきませんでした。
そして、ヒイロはもうこれ以上近づくと飛んで「アツイ」に逃げられずにタックルするスピードが出せるギリギリの距離まで来てしまいました。
「何してる?…さっさと来い!」
ヒイロは頭をフル回転させて考えましたが、この状況の打開策が全く思いつきませんでした。
(怪物が約束を守るかも分からないから、このまま飛んでタックルしてやろうか。)と考えた瞬間、あるものが目に入りました。それを見たヒイロは、うつむいたまま「アツイ」に近づいて行きました。
そしてもう一歩近づけば、「アツイ」の右手が届く距離まで来ると、ピタッと歩くのをやめました。
すると「アツイ」が「何やってる!…人質が殺されても良いのか!」と恫喝してきましたが、ヒイロはうつむいていた顔を上げて、笑みを浮かべながら「やれるものならやってみろ!どうせお前には出来ねぇよ!」と「アツイ」をからかうように言いました。
ヒイロの発言で「アツイ」のひょっとこ顔がみるみる怒りの表情に変わっていきました。
「バカにしやがって!俺が人質に手を出さないとでも思っているのか!お前がそういう態度をとるなら、見せしめとしてこいつを殺してやる!」
「そんなことさせるかよ!」「誰だっ⁈」
「アツイ」は急に背後から声がしたので振り向くと、顔面に回し蹴りを食らいました。そのまま「アツイ」の首は体から離れて、蹴られた方向に飛んでいきました。




