第3部 第16話
(どうしよう⁈どうしよう⁈今逃げなきゃ、もう逃げられないかもしれない!でも入院している人たちを放ってはおけないし、どうしたらいいんだ?いや、逃げずにここにいるということは、もう答えは分かっているのかもしれない。ただ怖くて決断できずにいるだけなんだ。怖い!怖い!怖い!怖い!けど、もう後悔する選択はしたくない!)
覚悟を決めてゲンキは黒ずくめの人の前に立ちふさがりました。
「何のつもりだ、少年?そこを退け!」
「いやだ!退けと言われて退くほどの覚悟でここに立っているわけじゃない!」
ゲンキは黒ずくめの人の顔をまっすぐ見て言いましたが、その時に初めて黒ずくめの人の顔を見たので、そのひょっとこのお面をかぶったような顔に驚いたのと同時に、異様な恐怖を感じました。
もうお分かりだとは思いますが、黒ずくめの人は「アツイ」と言う怪物でした。
「ほお、思ったよりも強気な少年だな。それなら、これはどうかな?」
そう言って「アツイ」は自分の体温を上げて、周りの室温を上げました。
「アツイ」の近くにいるゲンキの体感温度は60℃を超えていました。
「ハハハ。どうだ、暑いだろ?退かないというのなら、もっと温度を上げてやろうか?」
「…暑いよ。…暑いけど、ここを退くわけにはいかないんだぁ!」
ゲンキは暑さにひるむどころか、「アツイ」に走って向かっていきました。
そしてそのまま「アツイ」にタックルして、患者が入院している病室から遠ざけようと「アツイ」の体を押し始めました。
しかし、特に鍛えているわけでもないゲンキの力で押したくらいでは「アツイ」の体はびくともせず、病院のエントランスの室温を何十度も上げるくらい「アツイ」の体温も何百度に上がっていたため、それに触れているゲンキの体は酷いやけどを負っていました。
(ぐわぁー!熱い!熱い!熱い!燃えているんじゃないかってくらい熱い!「どんなケガも治る体」じゃなければ、タックルしようなんて決して思わなかっただろうな。それにしてもこいつの体、全く動かないし!こんだけ力一杯押しているのになんでだよ!それに…なんか頭がボーっと…してきた…。)
「ハハハ。俺の体温にひるまずにタックルしてきたその根性は認めよう!ただ、俺も遊んでいるわけにはいかないのでね。さっさと終わらせようか!」
ゲンキの意識が薄れていく中、「アツイ」は笑いながらもっと体温を上げていきました。
(もしかして…僕…死ぬのかな…。)
ゲンキが死を予感した次の瞬間、何かがものすごいスピードで「アツイ」にぶつかりながら、「アツイ」の体から元気の体を引き離し、そのまま「アツイ」を病院の外へ連れていきました。
そのゲンキを救ってくれた何かの正体はチカラのお見舞いに来ていたソラ・ヒイロでした。




