第3部 第5話
「えっ⁈入院してないってどういうことですか?」
「ですから、ウドウ・チカラという方とユウキ・ヒデオという方はこちらには入院しておりません。」
ヒイロたちがチカラとヒデオのお見舞いに来たと病院の受付に言ったところ、受付の人に「その2人は入院していません。」と門前払いされていました。
「いやいや、入院しているはずですから、ちゃんと調べてください!」
「ですから、何度も申し上げている通り、その2人はこちらの病院には入院しておりません。」
何度も頑なに否定されるので、ヒイロたちは一旦受付を離れて話し合いました。
「ねぇ、どういうこと?本当にこの病院には2人は入院してないのかなぁ?もしかしてヒイロ病院間違えた?」
「そんなわけないだろ!ちゃんと病院の名前メモって置いたし。ほら、見てみろよ!」
ヒイロは疑ってかかるツバサにメモ用紙を差し出しました。メモ用紙を受け取ったツバサは隅々までメモ用紙に書かれていることを確認しました。
「○○病院、住所、電話番号、確かに間違ってないな。あれっ?これ裏にも何か書いてあるよ。……ヒイロ、ここに『チカラのお見舞いに来る時はムカイさんの名刺を受付に渡す』って書いてあるけど。」
「えっ?…そうだった!ムカイさんにチカラのお見舞いに来る時は、そうしろって名刺渡されたんだった。」
「じゃあ、もしかしてヒイロ今名刺持ってないの?」
「いや、確かそのことを忘れていても名刺を忘れないように財布に入れておいたはず……ほら、あったよ!」
「良かったぁ!じゃあ、受付に戻ろうか。」
ヒイロたちがまたやって来たので、受付の人は少しうんざりしているように見えなくもありませんでしたが、ヒイロがムカイの名刺を見せると、「少々お待ちください。」と言って、受付の人は奥に行ってしまいました。しばらくすると戻って来て、「お待たせいたしました。では、こちらにお見舞いに来た方の名前を記入してください。」と手のひらを返したような対応をしました。
ヒイロたちが名前を記入すると、受付の人は「ウドウさんは4階の○○号室で、ユウキさんは4階の××号室です。」と教えてくれました。
「…ありがとうございます。」
ヒイロたちはお礼を言って病室へ向かいました。
「でも、なんで名刺を見せないとお見舞いさせてくれないのかなぁ?」
ツバサが疑問に思ったことを2人に聞きました。
「それは多分、世間でヒーローと呼ばれているヒデオさんが怪物にやられたってことを隠すためじゃないかなぁ。」
ショウがそれに答えました。
「それは分かるよ。でも何でチカラも、と思ってさ。」
「ニュースとかで報道されていないだけでチカラが怪物退治で活躍しているのは結構知られているから、そうしないと記者の人たちがチカラをケガさせた怪物がどんな奴か調べちゃうかもしれないだろ。そうなるとやっぱりヒデオさんが怪物にやられたことが世間にバレちゃうかもしれないから、チカラが入院していることもきっと機密事項なんだよ。」
「多分、ショウが言ってることは正しいと思う。なにせ2日前に倒した怪物のことはニュースで全くやっていないからね。国はヒデオさんを倒した怪物なんて初めからいなかったことにするつもりなんだろうな。」
ヒイロがショウの意見に賛同しました。
「ヒデオさんを倒した怪物が出たって言うのに隠すって言うのかよ!また同じような怪物が現れて国民に危険が及んだら、国はどう責任を取るつもりなんだろ?」
頭では理解できても納得できないツバサは政府に対して文句を言いました。
それに対してショウが「ヒデオさんが怪物にやられたなんてことを国民に知らせた方が混乱が起こるかもしれないぜ。それと国民に危険が及んでも、国は責任なんて取らないよ。日本ってそういう国じゃん。」と、あっけらかんと言いました。
「国は俺たちを上手に利用することしか考えてないんだな。」
「国って言うか、能力をもらってない国民のほとんどがそうだと思うよ。小学生くらいの頃の話だから忘れたかな?俺たちみたいに能力をもらった子たちのごく一部の子たちが能力を使って犯罪すれすれのことをしていたのが問題になった時、国民の中にはそういう子たちを厳しく罰する法律を作るように国に求めていた人たちもいたじゃん。結局まだ子供なんだから、教育で何とかしようという意見が通って、今俺たちが通っている学校が造られたんだけどね。まあ、それは建前で本当は俺たちみたいな子を集めて管理するために造られたんだけどさ。それでも俺たちへの風当たりが弱まって来たのだって、ヒイロやツバサみたいに遭難者の救助とかを手伝っている子たちがいたのにもかかわらず、怪物が現れるようになって、ヒデオさんやチカラみたいに怪物退治に能力を使う子たちが現れてきてからだぜ。ホント、嫌になっちゃうよ!」
ショウはツバサの皮肉よりもさらにひどい皮肉を言いました。
「ショウもツバサも少し落ち着いて。ほら、チカラの病室に着いたよ。」
ヒートアップしているショウとツバサをなだめながら、ヒイロはチカラの病室のドアを開けて中に入りました。




