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第2部 第1話

 ヒデオは激怒していました。その怒りの矛先は「自分たちではもう無理だ。」と諦めていたライフセーバーの人たちではなく、なかなか来ない救助隊の人たちでもなく、自分自身に対してでした。


「願いごとを何でも叶えてあげる。」光に包まれて姿形も分からない得体が知れない宇宙人みたいな存在にそう言われた時に、(強くなりたい!)と思って、「地球上で一番強くしてほしい!」というくだらない願いごとを叶えてもらった小さかった頃の自分を殴ってやりたいとヒデオは思っていました。


(そんなくだらない願いごとを叶えてもらったからずっとやっていた空手をやめることになったし、ちょっと目を離した隙に大事な妹が離岸流で流されて沖まで行ってしまうという一大事に、助けることも出来ずに手をこまねいていることしか出来ずにいるんだ。)と自分に腹を立てていました。


(叶えてもらうんだったらもっと役に立ちそうな願いごとを叶えてもらうんだった。未来を予知できる能力とか、どこでもワープできる能力とか、遠くのものを動かせる能力とか、空を飛べる能力とか…。)


ヒデオが無意味な後悔をしていると、誰かが沖の方へ飛んでいくのが見えました。



 ジリリリリッと目覚まし時計が鳴る音でヒデオは目を覚ましました。ヒデオは朝に弱く、目覚まし時計を3個もセットしていました。今止めた目覚まし時計は3個目で、起きなきゃいけない時間の30分前から10分おきになるように一個ずつセットしていました。


「またあの夢か…。」


ヒデオはベッドから起き上がりながら何度も見る夢について考えていました。3年前家族で海へ行って妹が離岸流で沖に流されるという事件が起こってから週に一度は見ている夢でした。8年前光のぬしに願いごとを叶えてもらってから今日まで、ヒデオはその時ほど自分の無力さを感じたことはありませんでした。ヒデオはどんな怪物でもすぐに倒せてしまうので、その強さを信頼されて世間の人たちから「ヒーロー。」と呼ばれたりしていますが、あの夢を見た時は「自分の能力を過信するな!」という光のぬしからの警告だと思い、自分の能力や世間の評価におごることがないように気を引き締めていました。


「あの夢を見るということは俺もまだまだおごりがあるってことだな。」


ヒデオは気合いを入れ直しました。特に昨日は日本全国に出現した全部で80体以上の怪物のほとんどをヒデオが倒すという自他共に認めるほどの大活躍をしたので、「過信するな!」という警告があってもおかしくないなとヒデオは思いました。ヒデオが立ち上がろうとすると部屋のドアがバ~ンッと開き「お兄ちゃん!もう7時だよ~!起きて~!」とヒデオの妹がヒデオを起こしにやってきました。


「あれ?もう起きてる!珍しいこともあるんだね!お兄ちゃん今日は怪物に負けちゃうんじゃない?」


「ランカ、俺が目覚まし時計で起きられるといつもそう言ってるけど、そんなに俺に負けてほしいのか?」


「そんなわけないじゃん!お兄ちゃんが怪物に負けちゃったら日本が終わっちゃうよ。それに…。」


「それに?」


「今うちの家計を一番支えているのはお父さんじゃなくてお兄ちゃんなんだから、頑張って稼いできてもらわないと。ほら、朝食できてるから早めに下りてきてね。」


そう言ってヒデオの妹は部屋を出て行きました。


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