第1部 第27話
5人がグラウンドに到着すると、怪物はすでにグラウンドを出て校舎の方に向かっていました。
「作戦通りよろしく頼む!2人とも!」
「わかった!」
そう言ってツバサはチヒロに出してもらったインカムを付け、更にさすまたのようなものを持って怪物の方へと飛んでいきました。もう1人の方のヒイロはインカムを付けてさすまたのようなものを持ったまま動きませんでした。チヒロは恐怖で動けないのではないかと心配になり「大丈夫、ソラくん?」と聞くとヒイロは意を決したように「ヤハギさん!」と口を開きました。
「ヤハギさん、もしかしたらこうして話せるのは最後になるかもしれないから言うけど、食べたから。」
「えっ食べたって何を?」
「ヤハギさんにもらったエナジーバーちゃんと食べたから!どうしてもこれだけは直接言っておきたくて。」
そう言うとヒイロはスッキリした表情で怪物の方へ飛んでいきました。
発言の意味が分からず、ポカンとしていたチヒロに対してショウが「ごめんね、ヤハギさん、説明が足りなくて。ヒイロの奴、ずっと気にしていたんだって。先週の土曜日にヤハギさんからもらったエナジーバーを食べていなかったこと。それを今日学校に来る前に食べたからそれを伝えたかったみたい。今日ヤハギさんとぶつかった時に俺が『まだいてくれて良かった。』って言ったでしょ。あれはヒイロがエナジーバーを食べたことを直接伝えておきたいって言ってたからなんだ。」と補足説明しました。
「あっそうだったんだ。すっかり忘れてたよ。」
チヒロはヒイロの発言の意味が理解できてスッキリした表情をしました。
「お互いにスッキリしたところで頼むぞ、ヒイロ!」
「わかってるよ!」
インカムからショウがチヒロに自分の発言の意味を説明しているのを聞いていたヒイロは、ばつが悪そうに答えました。
「まずは怪物をグラウンドに誘導するんだ!ただしサッカー部のグラウンドには倒れている生徒がいるから、隣の陸上部のグラウンドにね!」
「「わかった。」」
怪物をグラウンドに誘導するためにツバサが怪物の周り(怪物がツバサを捕まえようとしてもギリギリ届かない距離)を飛んで注意を引き、ヒイロが後ろからさすまたのようなものでグラウンドの方に押していきました。もちろんそんなことをすれば怪物はヒイロに襲い掛かろうとしましたが、そうなったらツバサとヒイロの役割を交代してヒイロが怪物の周りを飛んで注意を引き、ツバサが後ろから怪物を押しました。それを繰り返して何とか怪物を陸上部のグラウンドまで連れてくることができました。
「よしっ!ここまで来たら後は作戦通りに。」
ショウが作戦通りに事が進んでいくので安心しきっていたら、怪物が急にヒイロたちを捕まえようとするのをやめてしゃがみ込みました。
「あれっ怪物の奴しゃがんじゃったけどどうしよう、ショウ?」
そう言いながらツバサが高度を下げて怪物に近づいていくと「う~ん。とりあえずさすまた…。」
「ダメ!今すぐ離れて!」
ショウが指示を出そうとしたら急にトモが割り込んできました。ツバサがそれを聞いて怪物に近づくのをやめた瞬間、怪物が地面をけってツバサ目掛けてジャンプしてきました。突然のことでツバサは動けずにいると「ツバサ~!」ヒイロがさすまたのようなもので怪物の横腹を押してツバサから怪物を遠ざけました。怪物は急に体勢を崩されたにもかかわらずきれいに着地しました。
「危なかった~!ありがとう!ヒイロ!イヌヤマさん!すごいよ、よくわかったね!」
「怪物がジャンプすればツバサくんを捕まえられるって考えているのが聞こえただけだよ。すごいのは私よりソラくんの方だよ!」
「俺もただ無我夢中だっただけだよ。それよりどうする、ショウ?怪物の奴またしゃがんだけど。」
「むしろまたジャンプさせればいいよ。ジャンプして着地するまでは無防備だからそこを狙えばいいよ。」
「「分かった。」」
ショウの指示にヒイロとツバサが返事をした瞬間、怪物がまたツバサ目掛けてジャンプしてきました。ツバサはさっきよりも高い所を飛んでいたのにもかかわらず、怪物は悠々とツバサの飛んでいる位置までジャンプしてきて、ツバサを捕まえようとしました。しかし今度はツバサも来るのが分かっていたので高度をさらに上げて怪物をかわしました。そしてツバサを捕まえられずに落ちていく怪物をヒイロが羽交い締めにしました。
「よしっ!そのまま行け~!ヒイロ~!」
ショウの叫び声を合図にヒイロは怪物と一緒に上空へとロケットのように高速で飛んでいきました。
「あれっ?そういえば怪物をソラくんが捕まえる所までしか作戦を聞いていなかったんだけど、この後ってどうするの?私はてっきりヒデオさんみたいな人が来るまで捕まえとくものだと思っていたんだけど。」
チヒロが今までなおざりにしてきた疑問をショウにぶつけました。
「ううん。違うよ。ヒイロには怪物を遠くに連れて行ってもらうんだよ。」
「えっ⁈でも連れて行った先で暴れられたら、そこにいる人たちに迷惑がかかるんじゃない?大丈夫?」
「大丈夫だよ!人なんていないから!あっいや、少しはいるかな。国際宇宙ステーションとかに何人かは。」
「もしかしてヒイロくんの行き先って…。」
「宇宙だよ!」
「「え~!」」
ショウの発言に質問していたチヒロだけでなく、それを聞いていたトモまで驚きの声を上げました。
「宇宙まで飛べるの、ソラくんって?」
「たぶん飛べる。ヒイロの本当の能力なら。」
「ソラくんの能力って『空を飛べる』ってだけじゃなかったの?」
「違うよ。ヒイロが本当に願ったのは『UFOのように飛べるようになりたい!』だから。UFOなら宇宙まで行けても不思議はないでしょ。」
「確かに。でも宇宙のことあまり知らない私でも知ってるけど宇宙って酸素ないんでしょ?ソラくんは宇宙に行っても大丈夫なの?」
「それはもう賭けだね。大丈夫なことを祈るしかないよ。」
そう言ってショウはヒイロが飛んで行って見えなくなった先を見つめました。




