表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/133

第1部 第17話

 怪物と20メートルぐらい離れた場所でヒイロはこうなってしまった原因を考え始めました。


(なっ、なんでこうなった?)


(それは肩がぶつかった人が俺をヒーローだと勘違いしたから。)


(なんでその人は俺をヒーローと勘違いしたんだっけ?)


(それは女の子の飛んで行った風船を捕るために空を飛んだから。)


(なんで飛んだ?)


(それは空へ飛んで行った風船を捕れるのは空を飛べる俺だけだから。)


(つまり極論になるけど俺が空を飛べたことが原因?)


(まぁ、そうかも。)


(あの時、空を飛べるようになりたいという願い事を叶えてもらったから、怪物と相対しているにもかかわらず、周りの人たちから助けを求められて、逃げることを許してもらえない状況になっているんだ。)


(悪いのは俺だ。)


(俺も周りの人たちと同じ立場だったら、怪物が出たという危機的状況で、空を飛んでいる人を見つけたら、自分にはない超人的な能力で助けてほしいと強く思うかもしれない。)


(目の前にヒーローと呼ばれる人が現れたら、安心感から逃げるのをやめて、ちょっと離れたところでスマホで動画を撮りながら見物をしていたかもしれない。)


(得体の知れない宇宙人…らしき存在が仮に神様だったとしても、疑いもせずに願い事を叶えてもらうものじゃないんだ。)


(いや、むしろ神様だったのならこの状況は神様が与えた試練なのかもしれない。)


(…乗り越えられる可能性は今のところ全くないけど。)


この状況の原因は自分にあると結論付けたヒイロが、自分を責めている間に怪物は突っ込んだ店から体を引き抜いて、煩わしさが晴れたことを喜ぶかのように巨体を大きく震わせました。ヒイロの姿をその目でしっかりと捉えた怪物は、自然界でも巨体を誇る熊の3倍はありそうな体に死を感じさせるほど鋭く尖った牙と角を持っており、四足歩行の姿も相まって巨大な猪を彷彿とさせました。巨大な猪を彷彿とさせる怪物は鼻息を荒くさせ、ヒイロに突進する準備運動をするかのように足で地面を掻き始めました。怪物が自分に明らかな敵意を向けていることに気が付いたヒイロは、自分を責めている場合じゃないと気持ちを切り替え、この状況に対する打開策を考え始めました。


(どうする⁉どうしたらいい⁉まともにぶつかっても勝てる相手じゃないし…!あぁ~ッ!このまま飛んで逃げ去りたい!でも俺が逃げたら後ろにいる人たちが助からない!まぁ、あの巨体が突進してきたら俺一人じゃ何の障害にもならないだろうけど。…あ、そうか!怪物の周囲を飛び回って時間を稼げれば…!)


ヒイロが打開策を必死に考えていると、準備が整ったのか怪物がヒイロに向かって一気に突進してきました。


(あっ。死ぬ。)


怪物の放つ殺気に強い恐怖を感じて目をつぶり立ちすくんでしまったヒイロは、自分が死ぬことを直感しました。


ドッシーンと何か重たいものが倒れる音がしたので、ヒイロが目を開けると、目の前に誰かの背中が見えました。「大丈夫か?」と目の前にいた人が振り返りながら聞いてきました。ヒイロが呆然として何も答えずにいると、「ワー。」と後ろの方から歓声が起こりました。

その時になって、ヒイロは目の前にいるユウキ・ヒデオが怪物を倒してくれたことに気付きました。ヒデオは周りの人たちに頭を下げて、「皆さん!この怪物は2日前に取り逃がした怪物で、ずっと行方を捜していたのですが、こんな甚大な被害が出る前に倒すことが出来ず申し訳ありません!」と謝罪しました。すると、無事だった人たちが「気にしないで~!」「助けてくれてありがと~!」と、店が壊された店主や怪我人が近くにいるのにもかかわらずヒデオに対して歓声を送っていました。中には、「ヒーローならもっとヒーローらしい恰好をしろよ~!」と、ヒデオの恰好に文句を言う人もいました。

ヒデオは怪物退治に都合がいいように、動きやすくて丈夫で怪物の血や泥などの汚れも落ちやすい作業着を着ていて、漫画やアニメに出てくるヒーローみたいな恰好をしていないので、生で見た人にがっかりされることもありました。しばらく頭を下げていたヒデオは顔を上げると、ヒイロの方を向いて「ところで、キミは怪物の近くで一人で何をしてたんだ?」と、聞いてきました。

どうすれば良いかか分からなくてただ棒立ちしていたところを周囲の人たちに見られていたと感じたヒイロは「周りの人たちに頼まれて怪物を倒そうとしていました。」とは、恥ずかしくて口が裂けても言えませんでした。さらにそんなことを言ったら、怒られそうな気がしたので余計に口をつぐみました。でも、何も言わずにいて変な誤解をされても困るので、ヒイロはどうすればいいんだろうと考えて、ショウに言われてやろうとしていた「怪我して倒れている人を助けようとした。」と答えようと考えつきました。


「たっ、たっ、たおれ…」


「倒そうとしたのか⁈」


ヒイロは緊張からか一気にしゃべることが出来ず、どもってしまいました。そして、ヒイロがどもって発した言葉を誤解して受け取ったヒデオはヒイロを諭すように話し始めました。


「キミもしかして俺と同じ学校の生徒かい?だとしても無茶をしすぎてる。俺が簡単に怪物を倒しているように見えるから、キミみたいな後輩が出てしまうのかもしれないけど、怪物退治は命がけの危険なことなんだ。簡単なことじゃない。いいか?人にはて…」


ヒデオはその後も命知らずな後輩を諭すように話し続けましたが、ヒイロは誤解されたショックでほとんど聞こえていませんでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ