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第1部 第14話

 次の日の日曜日、9時半に家を出て、40分ほどかけて目的地であるショッピングモールに着いたヒイロは、ショウにメッセージを送りました。


「着いたけど、今どこにいる?」というヒイロのメッセージに、ショウから「駐車場の自販機の所。」と返信が来たので、ヒイロは駐車場に向かいました。


駐車場に着いたヒイロは、自販機の前に立つショウの姿を見つけました。


「よっ!車で送ってもらったの?」


「いや。ただ人が多い所に居たくなかっただけ。」


「そっか。」


「うん。」


「じゃあ、行こっか。」

ヒイロと会話している間も、あまり表情を変えなかったショウでしたが、ヒイロの提案に頷いて答えました。


ショウは小学校からのヒイロの幼馴染みで、「明石証(アカシ・ショウ)」が彼の本名です。頭脳明晰なショウは特に理系の科目が得意でした。意欲さえあれば数学オリンピックや物理オリンピックなどの日本代表になれると高校の教師たちには言われていました。ヒイロたちが通う高校にも学力で入学したとショウ本人は言っていました。

ヒイロたちの高校は、幼い頃に光の主に願い事を叶えてもらって、超人的な能力を授かった子たちが多く通う高校ですが、中にはショウのように難関大学の入試に匹敵するレベルの入学試験に合格した生徒や、スポーツや芸術面において優秀な成績を修めたことにより入学した生徒も在籍しています。

この背景には「願い事を叶えてもらったことでスポーツや芸術の才能が開花したり、頭が良くなったりした子どもたち」が現れたという報告を受けていた政府が、「願いを叶えてもらった記憶がない子たちの中にも、本人が覚えていないだけで超人的な才能をもらった子たちがいるかもしれない。」という考えの下、そういう子たちを取りこぼさないようにするため実施した超法規的措置です。そして政府はそういった子たちの才能が伸びるように、高校に対して最新の設備を投資し、高レベルの授業を受けさせるため優秀な指導者や教師を積極的に派遣しました。


「学力で入学した。」


そんなショウの言葉を、ヒイロは未だに信じられませんでした。小学校からの付き合いですが、小学生の頃のショウが良い成績を取ったと聞いたことがなかったからです。しかし、中学校に進学すると、偏差値の高い進学校と言うわけではありませんでしたが、1年生の頃から全ての学力試験で校内トップの成績を取っていた姿を見ていたので(中学生になってから頑張ったのかもしれない。)と思うようになっていました。

ただ、ショウが月に2,3回、多い時は週に1回以上学校を休むことへの疑問は未だに消えておらず、休んだ理由を教えてくれないことに対し、不信感みたいなものを感じていました。

(ショウが頻繁に休む理由…って何だ?一応「病欠」って扱いになっている日もあるけど、休んだ翌日は学校に来るんだよな…)駐車場からショッピングモールに向けて歩いている最中も、ショウが学校を休む理由について考えていたヒイロは、(何かしら能力を本当は授かっていて、政府からの要請で学校を休んでるのか…?その要請は極秘事項だから、病欠という理由で学校を休まなきゃいけない状況になってる…とか?)


「ヒイロ。」


「…うん。」


「服を買いにここに来たんだよな?」


「…うん。」


「どの店で服買うの?」


「…え?」


ショウが頻繁に学校を休む理由について推測することに夢中になっていたヒイロは、ショウの質問でようやくショッピングモールに着いたことに気付きました。


ヒイロはとりあえず何度か入ったことのある店を提案しました。


「そういえば、今日買う服の用途って何?普段着?」


「女子にモテる服!」


「そっか。了解。」


口角を少し上げたショウの表情を見たヒイロは(今のは渾身…とまではいかないけどさ、ボケたんだから、もう少し笑って欲しかったなぁ。)と、悔しい気持ちになりました。ヒイロはここ最近、笑ったショウを見る機会が明らかに減っているのを実感していました。2人きりの時は冗談なのか本気なのか分からないトーンでヒイロをからかって爆笑するショウが、1日に1度も笑わない姿を何度も見て以来、ヒイロはショウと2人きりになった時は、積極的にボケて笑わせようとしていました。(次はどんな感じでボケようか?)なんてことを考えながら歩いていた為に、「おい、どこに行こうとしてるんだよ!ここだろ!」と、ショウに呼び止められるまでヒイロは自分たちが目的の店の前に着いていたことに気付きませんでした。


「ごめん。ちょっと考え事してた。」


ショウに謝ったヒイロは入店してすぐ、明らかに自分には似合わない派手なカラーリングの服を見つけました。


「ショウ!これ似合うと思う?」


鏡の前で改めて自分には似合わないことを実感しつつ、ジョークのつもりでショウに聞いてみたヒイロでしたが、「えっ、女子にモテる服が欲しいんでしょ?」真顔でショウに言われてしまい、ジョークでしたとは言い出せなくなってしまいました。


「えっ⁈どこか変かな?」


「その服が変っていうか…ヒイロが女子にモテたかったことが変、だなって…。」


ショウはヒイロが全く予想していないことを言い出しました。


「何だよそれ!俺が聞いたのはこの服が似合うかどうかだろ。」


「俺に意見を求めたってことは、俺の好みを知りたいってことだろ?」


「客観的な意見を聞きたかったの!そういうことじゃない!」


「女子にモテるための服を買いに来るならさ、女友達と一緒に来ればよかったじゃんか?」


「俺に女友達がいると思うか⁈…って、寂しいこと言わせんなよ!泣けてくるだろ!」


「じゃあ、彼女。」


「彼女なんていたらお前を誘ってねぇよ!」


ヒイロは怒鳴るように言い切ってから、暴言めいた発言にハッとして恐る恐るショウの顔色をうかがういました。すると、ショウはもうこれ以上堪えきれないとばかりに「あはははっ。」と腹を抱えて笑い出しました。そんなショウの様子にヒイロが呆気にとられていると、「そんな怒るなって!ごめん。からかいすぎた!あ~…フフッ。久しぶりにこんな笑ったわ!その服だけど、ヒイロには派手すぎると思う。明るい色の服ならこっちの方がヒイロに似合うんじゃないかな。」

謝罪の言葉を口にしつつ、いきなり服選びを始めたショウに少しイラッとしたヒイロでしたが、久しぶりに声を上げて笑うショウの姿を見て嬉しくなりました。


「お前さぁ、選んでくれるなら変なこと言わずに素直に選んでくれよ!…その色、いいな。」


「だろ!…あっ、何もこの店だけで選ばなくても良いのか。ヒイロ、別の店も覗いてみようぜ!」


「確かに!他の所も見てみるか。」ヒイロとショウは今いる店を出て、別の店を探し始めました。



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