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護衛契約

女の後を歩いていたら、広場のようなところへでた。

中央には噴水がありそれを囲うようにベンチが置いてある。


俺が思っている以上に疲れていたのか、ベンチへと腰を降ろしたら、暫くは立ち上がれそうにない。昔は、他県から遠征してきた馬鹿どもを相手に徹夜で喧嘩したことがあったが、ここまで疲れなかった。


「助けて貰ってなんだけも、貴方は何者なの?」


「何者と聞かれても俺も自分で何者なのか分からないんだ。名前は霧生。それだけだよ。そもそもここがどこなのかも分かっちゃいない。本当ならば、俺は胴体を真っ二つにされて死んでいるところさ」


「何それ? 面白いジョーク?」


「俺の頭ではそんなエッジの聞いたジョークなんて言えないよ。逆に、君は一体誰で、何で襲われていたんだ? 銃を持った兵士に追われるなんて何をしたんだ?」


「私はエリアス。帝国が王族を根絶やしにしようとして襲ってきた巻き添えを絶賛喰らっている最中よ。私は王族として見放されたからあんな孤児院にいたのにね」


「それこそジョークか? 帝国だ、王族だなんてファンタジーな世界さ。ありえない…………嘘だろ?」


エリアスと名乗った少女は終始真顔だった。とても冗談を言っている風には見えない。それに奴らの武器は人を殺すだめだった。日本の不良達とは違った。今、思い返せばだが。戦っている最中はアドレナリンドバドバでそんなことを考えている余裕もなかった。


「え、マジ?」


「逆に、なんで私が嘘をこの状況で言わないといけないのよ? くだらないボケを噛ますために命を張るほど愚かな女に見える?」


「そう言われたら納得するしかないか。俺は、馬鹿だし、今まで学校にも通っていなかったかし、だからと言って、ワタルみたいに自主的に勉強なんてほとんどしてこなかったけど、明らかに俺が知っている世界とは根本的に違うんだなんな。俺の世界には帝国なんて国はない」


「なら、君は壁の外から来たのかもね」


「壁の外? なにそれ? リアル進撃の巨人かよ」


「壁のことももしかして知らないの? 本当に変わった人ね。壁のことなんて、子どもでも誰でも知っているわ。スパイにしては設定が間抜けすぎるし、この国に知り合いとかいないの?」


「エリアスが俺がここで一番最初に言葉を交わした生きている人間だよ。兵士たちとも言葉は交わしたが、もう動かない屍だからな」


「そうだったわね……なら、悪いのだけど少しの間だけ、私に雇われてくれない? やっぱりここにいるのはまだ危険だと思うから王宮に向かいたいんだけど、きっと王宮に帝国の連中はいると思うから護衛を頼みたいの。私は王位継承権は一番下でも、一応は王族だからね。それなりの報酬は約束するわ」


見るからに庶民。まぁ、パジャマ姿に一般人も王族も大差無いのかもしれない。


「別に報酬なんか何でも構わないよ。こんな見知らぬ街でいきなり何をしたら良いか分からないからとことん付き合うよ。その方が面白くなりそうだ」


「なら、決まりね。顔色がまっさをで無理そうだけど、せっかちだから。一応、言っておくけどもう動けそう?」


心配しているのか。心配していないのか分からないが心配してそうな顔をしている。


「舐めるな。俺は身体が丈夫なことくらいしか取り柄はないんだ。それに喧嘩するのに顔色は使わない。身体が動けさえすれば、問題ない」


「もしかしなくても、相当にイカれているわね。でも、嫌いじゃないわ。面白いし」


王宮に向かって歩く最中も、誰ともすれ違うことはなかった。


王宮と聞いて、想像するのはアラブ風の玉ねぎ型ドームの神殿だろうか。いや、ディズニーランドにあるシンデレラ城だろうか。王宮にこれから向かうとなれば、期待に胸を膨らませる。少年心をくすぐられる事態だ。


しかし、実物は案外、普通の建物でがっかりした。俺がファンタジー小説の読みすぎだろうか? 前世で本読んだ記憶なんて限りなくない。学校にもほとんど行っていなかったし、行ってもずっと寝ていた。


「これが王宮? こんなの都庁じゃん。高層ビルを二つ並べて合体させたような建物。パクリじゃん」


「何を想像していたのよ」


「王族の住む城にしては面白くもない形しているなと思ってさ。なんと言うか地味だな。機能性とか全部捨てて、もっと見た目の格好良さを追求しろよ」


「一応、王宮の中で暮らすいけ好かない連中がいるわ。機能性を捨てたら、生活がしずらいじゃない? 別にアイツらがどれどけ困ろうと私は一向に構わないのだけどね」


王宮に対して強い嫌悪の意思を感じた。あんまり王族に関して聞くと、地雷踏みそうだな。


「一旦、中断だ。慎重に行こう」


王宮の前まで来ると警備室が見える。中には黒い鎧に身を包んだ衛兵が3人がいて、呑気にも寝ている。


「あれはどっちだ?」


「……一応は味方ね。呑気に寝ているけども」


「王族が狙われたり、王宮にまで攻められるのはもしかすると日常茶飯事だったりするのか?」


「そんな訳がないでしょ? 国王がかそう簡単に狙われてたらやばいでしょ? たぶん、平和ボケね。隣国とは戦争中だけど、王都は特に平和だからね」


「……いや、流石にこれだけ警報がうるさくて寝てられるわけないよな。敵がいるかもしれないから、ここで待っていてくれ。俺が裏から回ってみてくる」


「分かったわ。ここで大人しく待っているわ」


剣に触れ、敵が飛び出して来ても斬れるように気構えだけして、監視室に近づく。医者でもない俺でもすぐに中にいる衛兵が死んでいるのが分かった。近づくと窓越しに彼らの下半身は垂れてきた血で真っ赤に染まっている。エリアスが心配そうな顔でこちらを見ていたので、手招きして彼女を呼んだ。


「殺されていたのね。不謹慎なことを言ってしまったわ」


死んでいった衛兵に対して、エアリスは手を合わせた。


俺も何となく彼女の真似をして手を合わせた。


警備室の扉の鍵は開いており、すんなりと中に入ることができた。警備員は監視カメラの映像とか見ているイメージがあったから、王宮の中の状況が少しだけでも分かるかもしれないと思った。しかし、相手は頭が良い。それっぽいモニターは律儀にも全て破壊されていた。見たところ、警備室には使えそうな武器もない。


「ここがこの様子だと場内はとんでもなさそうだな」


「王宮には将軍がいるわ。将軍はこの国を支える柱だわ。きっとまだ交戦中なはずよ」


「もし、将軍が死んでいたら本当に国家滅亡かもな。笑える」


「別に王族がどうなろうとどうでもいいけど、国民としては笑えないわ。帝国に王国が負ければ、大陸中が帝国の支配下になる。まさに、地獄よ。あそこは唯一神の代行者として、皇帝が絶対の権限を持ついかれた国だわ」


「なら、お前だけは絶対に守らないとな。お前、王族なんだろ?」


「本当に一応って感じだけどね。私が王位に就いても他の王族が納得しないわ。それに今更、王になるつもりもないわ」


話しながら歩いていると、王宮の入り口に着いた。入り口にはガラス張りの大きな扉が左右にある。他は全て漆黒の大理石で造られている。一応、王宮と呼ばれるには相応しい。


入り口を見張るように白い装甲に身を包んだ兵士が二人、銃を持って立っている。誰かがこちらに来るのを監視しているようだ。


「入口に見張りが立っているけど、あれは殺しても良いのか?」


「あれは帝国兵ね。彼らの胸に青い帝国の紋章が刻んであるわよね?」


「あのペガサスのやつか。それにしても敵だというのならば、最悪な事態じゃないのか? 敵は増援を警戒している。つまり、内部は完全に占領されている可能性があるな。素直に逃げるのが一番賢い選択と思うけれども、どうする?」


「ここまで来たのなら、突入あるのみでしょ? ちがくて?」


「是非もない」


剣を構え、俺は飛び出した。


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