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二度目の人生は、屋上の秘密。  作者: 具流美あみ
一章 スクールライフと屋上マイナス1。
6/7

勉強会と、タメ口。

 あの後、謝り続ける「先輩」こと濃野さんに私に起こったことと自己紹介とをして、とりあえず帰ってもらった。ついでにSNSも交換したけれど、スマホを取り出そうとしてまた謝りだすので、落ち着かせるのに一苦労だった。


「はぁー…」


 現在、私は自室のベッドの上で突っ伏している。濃野さんからのメールは「よろしくおねがいします」という業務的なメール一本のみ。


(にしても、あれほど怖がられるかー…)


 まあ、冷静に考えると幽霊とかと勘違いされてもおかしくない状況ではある…かな。個人的には実感はないけども。

 それにしても、一応同学年なわけだし、丁寧語とはいえ敬語で喋るのはどうなのかな。折角この「転生」?という異常な出来事を共有できる相手なんだから、距離は縮めて行きたいな、と思う。タメ口で話すと距離縮まった感じするかな…?

 そんな私の思考を遮ったのは、メールの着信音。見ると、五十峰さんからのメールが。文面は、


[中間試験の勉強とか大丈夫?]


 というものだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(で、どうしてこうなってるのかなー…)


 少し考える。連休明けに試験があるのは知ってるけど、完全に失念してた。クラスメイトには「タイミング悪かったね」と言われてしまったし…

 それはまあ、いいとして。


「ここって入れたんですね」


 現在、濃野さんと勉強中。目の前には半ばほどまで埋まったノートと問題集1冊。昨日の夜試験の存在を知ってすぐに、どうせならこれをチャンスにしてしまえ!という若干謎なテンションで濃野さんを勉強会に誘ったのだ。

 その日は何も返信がなく、というか既読すらつかなかったので、寝たかそれとも失敗したかと内心若干不安だったんだけど、朝起きたら[じゃあ、今日でお願いします]とメールが来ていた。送信時間は1時ちょうどだった。

 そして、その後1時間後に[待ち合わせはあの屋上でいいですか?]というメールが来ていた。あそこに勉強できる場所なんてあったっけ…と思いながらも、一応[了解です]と返し、母には「今日も帰り遅くなるかも!」と告げて登校した。母は「こんなすぐに友達ができてよかったね」と言っていた。安心しているようで何よりだ。

 学校では昨日ほど人も集まってこなくて、日常風景を見ることができた。まあ高校1年の5月、仲のいいグループも中学のまま、みたいなところがあるように見える。ちなみに五十峰さんは色々なグループに少しずつ顔を出しているようだった。かといって、みんなと相当に仲良くやれている様に見える。ああいうコミュ力ってどこで手に入るんだろ…

 

 そして放課後、例の屋上で濃野さんと会った私がどこで勉強するのかと聞くと、屋上と廃ビル内を繋いでいる扉に向かっていったので、そこは開かないはずだと言うと濃野さんがやや力任せにガッ!と開けてしまった。どうやら立て付けが悪くなっていただけで、鍵も何もかかっていなかった様だ。

 屋上から一階分階段を降りるとそこは、やや薄暗くひんやりとした階だった。廃棄されたのか乱雑に置いてある机と椅子が数セットある内の一つに鞄を置いて、現在に至る。


「…知らなかったんですか?」


「立て付けが悪かったとは思わず、鍵が閉まってると思いこんでたんですよ…」


 そう言うと、濃野さんはくすっと笑った。あ、笑い顔見るの初めてだ。というか、昨日より態度も落ち着いてる気がする。昨夜にでもなにかあったのかな?

 ちなみに濃野さんはクラスでは何考えてるかわからない系のキャラとして扱われており、五十峰さん曰く「無口だし可愛いから密かなファンも結構いるらしいよ〜」とのことです。

 それにしても…置いてある椅子の一つに座り、考える。


(なんで初対面のとき敬語じゃなかったのに敬語で話しちゃってるんだろ…)


 あれかな、転生前は今よりやさぐれてたから…?あれ、そう考えると、性格も前より結構変わってるのかな。にしても、やっぱり敬語は余所余所しいかなーなんて、思いながら濃野さんの方を見る。

 てかこう見ると濃野さんやっぱきれいな顔してるんだよね。昨日は謝られ続けて顔とかしっかり見て無かったから気付かなかったけど。

 黒髪の肩に届くか届かないか程度のセミロングで、ややふわっとしてる髪。天然なのかな。目はやや伏し目がちで、眠そうに見えなくなくもない…なんて、顔をじっと見ていると、気付いたら濃野さんもこっちを見つめてきていた。

 目が合って、それを認識してから数瞬のタイムラグを置いて、私は慌てて視線を下ろす。

 そこからまた十数秒の沈黙の末、沈黙にやや耐え難くなった私は口を切ることにした。


「「あの、」」


 まさかの同タイミング…。またも気まずくなった空気を崩すために、先を譲ることにする。


「あ、先どうぞー…」


「いえいえ、お気になさらず」


 即答。…何でこっちが気にするの!?むしろ気使わないで!なんて内心叫びながら、お言葉に甘えさせてもらうことにする。


「えっと…折角同学年なんだからタメ口で話しませんか?」


 これで断られたら空気滅茶苦茶に悪くなるよね…。そしてまた沈黙…。幸いにその沈黙は長く続く事はなく。「いいよ」というまあ簡潔な言葉で返答された。ホッとする。


「じゃあ改めてよろしく。…それと、さっき言おうとしてたことって何だったの?」


 聞くと、返答は「んー」と首を捻るような動作をした後の「忘れた」という言葉だった。


 何にせよ、距離を縮めることはできた。やった、と内心小さいガッツポーズをする私だった。やや無愛想すぎる気もするけど…。

遅れてすいません!

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