#4
ここは―――魔界でも有数の、『マナカクリム』と言う“街”……
雑多多様な種族が犇めき合い、僅かな衝突はありながらも、未来は扶助け合う……
同じ“仲間”として発展させてきた、冒険者たちの坩堝―――
そんな街が、少しばかりざわつき始めました……。
その…一つは、一人の女性エルフの台頭―――と
あともう一つは……
「ギルド・マスター! たっ…大変です―――!」
「どうしたの、騒がしいわよ。」
「とっ―――取り敢えず、“こちら”を……っ!」
「(!)これは―――……」
『ギルド』という組織は、気性の荒い冒険者たちを統制し、管理する処でした。
そして、その『マスタ-』と言えば、小国の王程度の権限を有しているのです。
そして現在、『マスター』を務めている存在と言うのが……
『黒豹』の“耳”に“尻尾”を持つ『獣人族』―――
そしてまた、現役時代には、こう称されもしたのです。
【韋駄天】
と―――――………
今現在では、現役時代の功績が認められ、魔界でも有数の街である、マナカクリムのギルド・マスターに収まっている……
の、ですが―――
実は、ギルド・マスター【ノエル】には、ある頭痛の種があったのです。
その、“頭痛の種”―――と言うのが、今、ギルド職員を通じて報告された件……だったのです。
それはそれとして―――クランのメンバーだと思い、間違われた女性エルフの方は……と、言うと―――
「ところでさぁ―――あんた達…… そのシルフィって言う人と待ち合わせて、なにをしようっての?」
「他人であるあなたに、その事を話してあげる道理があると?」
「ま―――私もさ、“こんなこと”するの、初めてなもんだからさ、一人でやろうか―――…他の人と組んでやろうか―――… 悩んでたところなのよ。」
「はあ~~ん…… それでオレが、仲間のシルフィと見間違った、あんたに声かけた―――ってことで、あんたと僅かばかりに「縁」を発生させた…と。」
「(エニシ?)そ―――そ―――それ。 それで、どうするぅ~? 私、これでも少々腕には覚えがあるわよ?」
「判った―――こっちも今日は3人で活動するつもりだったんだ。」
「(なッ??)ヒィ君?ちょっと―――……」
「クシナダ―――聞き分けてくれ。 オレ達も今のままじゃダメだ……ってことは、判ってるだろ?」
「それは……そうだけど―――」
「残ぁ~ん念―――だったわねえ?w クシナダちゃあ~んww」
当初の予定に目的では、気の合った3人で、少しでも力をつけよう―――と、していたことではありましたが、ここで、本来のメンバーである女性エルフ……ではなく、同じ女性エルフながらも、こうまで自分の心を掻き乱してくる者と、これから一緒に活動することを、クシナダはあまり快くは思っていませんでした。
今も、こうしたやり取りの最中に、必要以上に自分が想いを寄せている男性剣士に、そのボリューミーな肉体を、押しつけがましいまでに押し付けてくる、この“エロフ”(w)に、クシナダの忍耐値のキャパシティは、限界を迎えつつあったようです。
それはそれとして―――取るも取り敢えず、3人PTを組んだ者達は、依頼を提供しているギルドへ赴いたのです。
そこで彼らは…また数奇な、運命をしてしまう―――……
#4;黒キ魔女
ギルド提供の依頼―――
一番難易度が低いもので『E』から始まり、一番難解な『A』まで……
“種類”としては、『討伐系』や『採取系』―――と、各種取り揃えられており、バラエティ性に富んでいた……
けれど、実は…今回に限り、一番警戒しなければならない“類”が、その内に混ざっていたのです。
しかも……その“類”は、割と冒険者の間では、曰くつきのモノであっただけに、例え目のつく処に貼り出されていたところで、誰も手を出そうとはしない……
眼も向けようとはしない……
ですが―――“彼女”は、『そう』ではない………
「(ふぅ~んんん…なんか、簡単そうなヤツばっかだなあ―――)ねえ~~―――あのさぁ………」
「ん―――?どうした。」
「ここに貼り出されているヤツで、全部………ダヨネ?」
「そうですけれど―――」
「こんな簡単なのばっかでいいの?」
「あんた―――難度『A』のを手にして、そう言える………って、大した自信家だなあ―――」
「(嫌味な女…)じゃ―――それ受けてみれば?」
「うん―――そうする……… あと、コレと…コレと…コレも―――」
ホント………嫌味たらしいったら―――――
難度『A』や『B』を、片っ端から~~って……
確かにシルフィは優秀でしたが、あなたみたいに偉っそうにはしませんでしたよっ!
自分達がクリアしていく内でも、相当な苦難を強いられる難度を―――“簡単”と言い切ってくれる女性エルフ……
確かにエルフは、種族的に鑑みても優秀で……
それこそ『獣人族』や『人族』『亜人族』に対しては、尊大な態度を取ることが多かった……
だから多くの反感を買ったりもするのです。
{*けれど、彼らの仲間であるシルフィに関しては、そうではなかったようで…… だからこそ、シェラザードの言動が悪目立ちしてしまうのも、ある意味無理らしからぬ処ではあったようです。}
―――と…それはそれで良かったのでしたが……
ここでシェラザードの目は、ある依頼に釘付けとなってしまうこととなり……
「(ん~~? なんだコレ―――)へっえ~~これ、面白そ~~」
「(―――ん?)あ゛ーーーーーっ!!」
「な―――なんだよ…ビックリするじゃない……」
「バッ―――バカ……お前…… あああ~~なんてことを……」
「あなた…… それ―――何か判ってて手にしたの?」
「(へえ?)何言ってんの?」
その……依頼は、“種別”としては、「討伐系」―――――
そして……難度は―――――
SSS
【黒キ魔女を討伐せよ】
この魔界で―――冒険者を生業とする者ならば、次第に耳にしていく、『伝説』にまで昇ろうとしている存在―――
『漆黒の導衣』を身に纏い、高度な魔法術式を操る、『術師』系統の『冒険者』……
そう―――その依頼内容とは、討伐対象が『モンスター』などではなく……
一人の『冒険者』であった―――
そして、“これ”こそが、ギルド・マスターであるノエルの、“頭痛の種”の正体だったのです。
つづく