表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

第7話 『Secret Garden』

 三人の了承を得たマグナは、彼女達を連れてギルドホームがある街に転移する。


「「ふわぁ!」」

「……すごい」


 転移した先で彼女達が見たのは天空のお城である。空島とも呼ぶべきその浮島は、大きな岩の上に城を一つ乗っけたような美しい景観をしていた。


 辺りを見渡せば、他にも幾つかの浮島が空に浮いており、その周りを雲が漂っていた。


「す、すごいところですね!」

「ありがとうございます」


 自分の住んでいるところを誉められたマグナは素直にうれしく思い、感謝の言葉を口にする。


「私、こんなすごい景色があるなんて知らなかったよ!」

「あはは、ここは九十レベル以上のパーティ用ストーリー『天空の城の伝説』をやらないといけませんから。知らないのも無理はないですよ」

「へーそうなんだー! 私達も早く九十レベルになってそのクエスト受けたいなー」

「ははは、皆さんならすぐ行けますよ。頑張ってください」


 裏路地のさらに奥深くの小さな建物にいるお爺さんから空島の伝説の話を聞き、天空の城へ行くための道具を集め、無限にポップするゴーレムを倒しながら空島を攻略するというクエストだ。

 ストーリーも重厚で、涙あり笑いありのプレイヤーからの人気も高いクエストだった。


 あれはいいクエストだった、と思い出しているマグナの後ろをココ達三人は少し場違い間に気まずそうにしながらついていく。

マグナがお城に近づくと、すぐに外門が開き、四人はそのままお城の敷地内に入る。


「あれ……」


 そんな時、辺りをきょろきょろして警戒していたレオンが、お城の入口である門の上に正方形の箱に花束が描かれた紋章旗が飾られているのを発見する。


「ああ、あれは僕たちのギルドの紋章ですよ」


 その言葉に答えたのはマグナである。


「へー! あれは……花、かな? 何の花なの? 桜……じゃないよね?」

「いえ桜ではありませんよ。あの花はインパチェンスという花です。花言葉は、鮮やかな人です」

「あの花の形……、どこかで見たような……」


 見覚えがあるのかココは首をかしげるが、ミーナは気にせず話を盛り上げる。


「そうなんだ! 鮮やかな人……。明るい人が多いのかな?」

「うーんどうでしょう。結構人によってまちまちですね」

「おー楽しみー」


 そんな会話をしながら庭を歩き、すぐにお城の扉の前までたどり着く。

 すると、すぐに扉が内側から開かれる。

そして、それと同時に中から一人の女性が飛び出してきた。


「はろはろはろはろはろはろはろはー‼ ようこそお客さんたち! 歓迎するよー!」

「ヒェ!」

「わあ!」

「ん……」


 快活な声とともに飛び出してきた女性に対して、三人は三者三様の驚き方をする。


「あ、ネルさんただいまー」


 しかしマグナにとっては見慣れている光景のため、特に驚くことなく普通に挨拶をする。


「マグナ君もやっほー! おかえりー!」

「おかっすー。おー! 彼女達がマグナ君が助けた女の子っすか!」


 満面の笑みでマグナを迎えたのは、薄い黄緑色の髪に緑色の瞳をした女性プレイヤーと、その後ろから真っ白な猫耳に真っ白な髪の毛を短く切りそろえた女性プレイヤーがやってくる。

 そしてすぐに三人に視線を移すと、自己紹介をする。


「初めましてー! 私の名前はネルでーす! よろよろー!」

「どーもっす! 自分はクーリ・クーと言うっす! よろしくお願いするっす!」

「は、初めまして! 私はココと申します!」

「自分はミーナって言いまーす! よろしくお願いしまーす!」

「レオン……」

「ココちゃんにミーナちゃんにレオンちゃんねー! はいはーい、どうぞどうぞー!」


 お互いの挨拶を終わせると、コミュニケーション能力の高いネルが三人を招き入れる。

 そして、そのままお城の中の応接室へ通される。


 応接室はいたってシンプルな造りだ。

 驚くような装飾はこれと言っていない。

 しかし……。


「ヒエ‼」

「うわ! どうしたの?」


 ココが針でつかれたかのように突然体をびくつかせた。その体は震え、目はこれ以上ないに見開かれ、その視線は真っすぐに応接室の奥に飾られている旗に集中している。

それは、外に刻まれているのと同じ紋章の旗。

震える指でゆっくりとその旗を指したココは、興奮した様子で口を開く。


「お、思い出しました! あ、あの赤い花束の紋章旗……、ネ、ネット掲示板で見たことがあります!」


 その紋章を実物で見たものは限りなく少ない。でも、世界中のプレイヤーが知っている。

 なぜなら、その紋章はネットで広く公開され、彼らの情報には高額の懸賞金までかけられているのだから。


「ま……まさか……あなた方は……」

「ああーそういえばギルド名、まだ名乗ってなかったっすねー」


そういうと、クーはマグナに顔を向ける。その役目はマグナの仕事と言わんばかりのにやにやした表情で。

その視線に気づいたマグナは、やれやれと首を振りながらもまんざらではない様子で三人に向き直る。

そして……マグナの口からギルド名が明かされる。


「『Secret Garden』のギルドホームへようこそ! 副ギルドマスターとして君たちを歓迎します」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ