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第1話 会合

『Infinity of The Life』に数あるダンジョンの一つに「エンジェルガーデン」というダンジョンがある。


 そのステージは「エンジェルガーデン」という名にふさわしく、ダンジョン全体が真っ白な神殿のような作りをしており、出現するモンスターのほぼすべてが天使族である。

 弱点の属性もほぼ統一されており、かつ攻撃してくる属性もほぼ同じ。

 さらに、入口から中盤までは自らプレイヤーに攻撃してこないノンアクティブモンスターも多い。


 ここまで聞くと、一見簡単なステージに聞こえるが、決してそんなことはない。

 天使族モンスターは魔法耐性、状態異常耐性が比較的高く、魔法、物理に対しての防御力も高いのが特徴である。

 さらに各ステージには属性の効果を上げる効果があり、このステージにはプレイヤー、モンスター共に聖属性を上げる効果がある。


 プレイヤーもモンスターもそれぞれ属性値というものがあり、その割合を百パーセントを上限に自由に振り分けることができる。

 例えば、火属性を三十三パーセント、水属性を二十五パーセント、風属性を三十パーセント、闇属性を十二パーセントといった感じだ。


 ここ、エンジェルガーデンにポップするモンスターの全てが、その属性値を聖属性に百パーセントで振り分けられており、このステージの恩恵を完全に受けることができるのだ。

 しかも、聖属性が弱点の属性を弱める効果があり、別の場所で出てくる同レベルのモンスターよりもはるかに強くなっている。


 その結果、このダンジョンは公式適正レベルは六十レベルにもかかわらず、実際には七十レベル相当の装備が必要というのがユーザー間の共通認識だった。


「ああ……しんどい……」

 

 そのステージを一人寂しくアイテム回収をこなす装飾のない地味な白いローブを目深にかぶり、同じく地味な装飾のない木の杖を持ったプレイヤーが散策をしていた。


 プレイヤー名『マグナ・カルマ』


 その風貌は一見魔法職に見えるが、マグナはモンスターを召喚する召喚士であった。

 普段は、人数上限の一割にも満たない小規模ギルドに所属しており、固定ではないものの常にパーティを組んで探索をしていた。

 しかし、今日に限って、マグナ自身がリアル事情により遅刻をしたことや、普段よりギルドメンバーのイン率が低かったことなどが重なり、一人で探索することとなった。


 マグナはこのゲームの上限レベルである百レベルであり、普段はもっと上のレベルのダンジョンに潜っている。

 そんなマグナが自分のレベル帯よりもはるかに劣るダンジョンに潜っているのには理由がある。

 マグナの職業である召喚士は、モンスターを召喚してない状態では、他のあらゆる職業にステータスで劣る。もちろんステータスを振れば防御力を上げられるのだが、マグナは一切そういったことはしていない紙装甲召喚士であった。


 しかし、マグナが恐れているのはモンスターではない。いくら防御に一切のステータスを振っていない召喚職の紙装甲とはいえ、ボスならともかく雑魚MOBに一撃で死ぬほど弱くない。

 さらに、天使族は聖属性と火属性の攻撃をすることが多い。マグナも、それに合わせて聖属性と火属性対策に特化した装備で固めている。油断さえしなければ恐れるに足らないのだ。


 それ以上に恐ろしいもの……、それはプレイヤーである。プレイヤーキラー、言わずもがなプレイヤーを殺すことを専門にゲームをプレイするプレイヤーの総称である。

 しかもこのレベル帯のプレイヤーを狩るプレイヤーキラーならば最低でも七十レベ、下手をすれば八十越えのプレイヤーすらいるだろう。

 そのレベルまで行くと、マグナの状態異常耐性レベルを超えてくる状態異常をもつプレイヤーも出てくる。

 さらに言えば、マグナは探知系のスキルも全く上げていない。レベルを上げていくうえで勝手に上がってはいるものの、それも七十レベル相当の隠密スキルを持つプレイヤーや高レベルの隠密系アイテムを看破することはできない。


 それでも百レベルの装備とアイテムを持つマグナならば、何とかなるぎりぎりのレベル帯。それがここ、「エンジェルガーデン」なのだ。

 とはいえ、油断もできない。パーティを前提としたスキル構成のマグナは周囲に注意しながら一人愚痴る。


 そんな時だった。


「ほらほらどうしたー! もっと早く逃げないと捕まっちゃうよー?」


 そんな声が遠くから聞こえてきた。


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