第94話 街へ
「パパ、堕天使の実ってひとつしかないの?」
「いや、無尽蔵にあるわけではないようだけど、今までのケースだと必ず複数使われている。多分今回も他にも使われるか、既に使われていると思う」
「堕天使の実の効果をかいじょする方法はないの?」
「ああ、今まで倒す以外の方法で効果が切れた事は無い」
それは悪魔の実を口にすれば死以外の選択肢は無くなる事を意味している。
「天使と悪魔の両方が手をくんでるって事なんだよね」
「ああ、今までも何度かあったが、必ず有力な天使が関わっていたんだ。そしてその全てが戦争とも呼べるものへと発展している。おそらく今回も……」
天界で戦争が起こるのか。魔界では争い事は日常茶飯事だったが、天界はそうではない。それに、パパの領地で戦争が起これば領民はただで済むはずはない。
天使が関わっているとなると外部からだけではなく内部からも攻撃があると言う事だ。
今回も野牛を使って明らかに街を攻撃しようとしていた。
しかも悪魔の眷属と化した子供は戦う為の思考は残っていたが、戦略を練る程の自我を持っていたとは思えなかった。
おそらく領内に、指示を与えた奴がいる。
「パパ、あの子はルシェルと同じ街で家を持たない子供で、ルシェルが見たことあるって」
「それならルシェルのいた街に今回の黒幕がいた可能性が高いな。子供が一人で街を離れて遠出して堕天使の実を食べるとは思えない。街で飢えた子供に堕天使の実を与えれば疑問も持たずに食べるだろう」
俺は、家を無くした子供達を救いたいと考えていたが、その子達を利用するとは……
ただ、ルシェルによれば街にはまだ何人か同じ境遇の子供がいると言う話だった。
とすれば、もしかして他にも……
「パパ、街には他にも同じような子供が何人かいたはずなんだ。行って確かめてくるよ」
「いや、これから行けば、もう暗くなってしまう。街へは使いを出そう。ファルエルは私と一緒に明日向かおう」
「わかったよ」
すぐにパパが書面をしたため街へと使いを出す。
確かに俺が馬車で向かうよりもそのほうが早いだろう。
パパへの報告も一段落したので、連れて帰ってきた子供の亡骸を埋葬してあげたかったが、もう少し詳しい検死が必要とのことでそれは叶わなかった。
使いの者は、そろそろ街へ着いただろうか。何も起こっていなければいいけど。
そう思っていると、何故か街へ行ったはずの使いの者が帰ってきて、すぐにパパの部屋へと駆け込んで行った。
おかしい。どう考えても街へ行って帰って来たにしては早すぎる。どうかしたのか?
「ファルエル! まずい事になった。私は今から街へ向かう!」
「どうかしたの?」
「ファルエルの心配が的中したみたいだ。街をモンスターが暴れ回っていると言う報告が来た。街へ向かう途中で、被害をこちらへ通報に来た者と鉢合わせたらしい。このタイミングでモンスターが街中に現れるとは、堕天使の実が使われた可能性が高い」
「モンスターは一体ですか?」
「いや、おそらく複数だろう。私は今からすぐ向かうからファルエルは家で待っていてくれ」
「複数いるなら少しでも人手があったほうがいいと思います。ぼくも街へむかいます」
「だが、悪魔や、敵対する天使もいるかもしれないんだぞ」
「大丈夫ですよ。メルエもいるし、むりはしません」
「そうか……わかった。街を頼むぞ」
「はい」
パパは先に街へと向かい、俺はメルエに馬車の用意をさせて、ルシェルと三人で後を追い街へと向かった。
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