第88話 悪魔の眷属
動物を追い立てている悪魔の眷属にメルエが馬車を併走させる。
悪魔の眷属の顔を見るが、よだれを垂らして目も血走っているように見える。今まで数多くの悪魔の眷属を目にして来たが、これは正常な状況では無い。
「それじゃあ、とりあえず倒すよ『グラビティバレット』」
火球を1つだけ出現させて悪魔の眷属に向けて放つ。
大型の火球が飛んで行き悪魔の眷属に直撃する。
「ガアアアアア〜!」
敵がこちらを認識してこちらを向くが、火球の直撃をくらったにもかかわらず、目立ったダメージが無い。
今までのモンスターは全て一撃で倒せていたのに、こいつにはほとんど効いていない。
何だこいつ?何で消滅してないんだ?
悪魔の眷属とは言え所詮は悪魔の下僕。通常のモンスターよりは強いだろうが、今の俺の魔法を耐えるほどの力があるとは思えない。
「どういうこと?」
「ファルエル様、効いて無いみたいですよ。こっちを睨んでます。逃げますか?」
「いや、逃げないよ。次は十発行ってみる『グラビティバレット』」
一撃でダメなら十発お見舞いしてやる。
火球が連続で悪魔の眷属に命中していき、熱風を巻き起こす。
これでどうだ?
「ガァアアアアア〜!」
再び咆哮が上がり悪魔の眷属が消滅していない事を主張している。
周囲の土煙が晴れ、相手を確認すると、表面に火傷をしているような跡はあるが、ただそれだけ。
十発の『グラビティバレット』をくらったとは思えない軽症だ。
やはり異常に炎への耐性が強いのか?
「ファルエル様〜。まずいですよ。あいつ怒ってます。こっちに来ますよ」
『ブラックバースト』
俺は以前得意としていた魔法を発動し、仕留めにかかる。
聖なる爆発が起こり、こちらに向かって来ていた敵は、弾き飛ばされそのまま派手に後方へとゴロゴロと転がっていった。
今度は流石に死んだか?
メルエは水牛の群れを追う形でそのまま馬車を走らせている。
「ファルエル様、どうですか? もう死にましたか?」
「ぼくのところからじゃよく見えないな。ルシェル見える?」
「はい。敵は起き上がってこちらに走って向かって来ています」
『ブラックバースト』をくらっても起き上がって来るのか。
これで分かったが、敵は炎への耐性だけではなく魔法への耐性が異常に高い。
どう考えても俺の知っている悪魔の眷属の範疇を超える能力だ。
俺の今の魔力であれば上位悪魔であっても十分に通用するはずだ。
それがたたの悪魔に眷属にこうまで耐え切られるとはどう考えてもおかしい。
特殊な魔法具でも持っているのか?
「ファルエル様、完全にまずいです。もう逃げますよ」
「逃げると、またこの水牛達を追い立てると思うから、逃げるのはなしだよ」
「じゃあ、どうするんですか?」
「ルシェル『ロックシールド』を張ってくれる? メルエは馬車を止めて」
「ファルエル様? 今なんて言いました? 聞き間違いだとは思うんですけど」「うん、だから馬車を止めて」
「ファルエル様、魔法が効いてないんですよ。馬車を止めてどうするんですか。襲われてしまいますよ」
「魔法が効かないなら剣で戦うんだ」
「ファルエル様!? 正気ですか? あの巨体にファルエル様が剣で勝てるわけがないでしょう」
「だから二人にもサポートしてもらうよ。それに新しいこの剣なら魔法剣を使いこなせるかもしれないし何とかなるでしょ」
「ファルエル様! 何とかならなかったらどうするんですか? 死にますよ。完全に殺されます。このまま逃げましょう」
「メルエ様、それは難しいと思います。どんどん近づいて来ているのでこのまま逃げ切るのは無理です」
やはり覚悟を決めて戦う以外には無さそうだ。
【読者の皆様へお願い】
いつもありがとうございます。
皆様のブックマークと☆ポイント評価で筆者のモチベーションが支えられています。
興味を持たれた方は是非ブックマークとスクロールして下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にお願いします




