第87話 動物の群れ
「メルエ、あれって………」
「おそらく群れから脱落した個体だと思います」
ルシェルの指示に従って馬車を走らせると、すぐに1頭の大きな野牛を発見した。
野牛をと言うより野牛だったものを発見したと言うべきだろう。
野牛は全身から血を流し既に絶命していた。
倒れてから他の個体にふみつぶされたのか、角以外の部分はペシャンコになっていた。
「どうやら動物は野牛の群れのようだね。近づいているようだからこのまま進んでみよう」
そこから馬車を走らせて野牛の群れを追ったが、なかなか追いつかない。
「見えて来ないな〜」
「かなりのスピードで移動しているようです。捉えるのにもう少し時間がかかるかもしれませんね」
余り野牛に詳しくはないが、集団でこれだけのスピードを持続できるとはそれだけでとんでもない能力なのは理解できる。
それから更に10分ほど馬車を走らせてようやく集団のしんがりが見えてきた。
「メルエ、野牛の群れは分かるんだけど、あれはなに?」
「分かりません。ただあの野牛はあれから逃げているようですね」
「ファルエル様、あれは嫌な感じがします」
前方を見ると野牛を追い立てるようにして最後尾に大型のモンスターらしき物が移動しているのが見て取れる。
最初はよく見えていなかったが、距離を詰めるとその姿は、モンスターというよりも、悪魔の下僕のような姿をしている。
5m程の巨体に頭部には、ねじ曲がった角が2本、足には蹄が見て取れ、悪魔の下僕によく見られる特徴を備えた尻尾も備えているようだ。
「なんであんな奴が天界にいるんだ。あんなのがここまで来れるっておかしいよ」
「ファルエル様はあれが何か分かるのですか?」
「たぶんだけど、本でよんだことがあるけど、あれは悪魔の下僕、眷属の一種だと思う」
「ファルエル様、失礼ですがさすがにそれは無いと思いますよ。こんなところに悪魔の眷属などがいるはずがありません。もし本当なら大変な事ですよ」
「メルエ様、でもあれは、邪悪な気配がします。本当に悪魔の眷族なのでは」
「メルエ、多分まちがい無いと思う」
あれと良く似たのは魔界で腐るほど見たことがある。
あの悪魔の眷属の特徴を見間違えるはずはない。
天界に生まれ変わってから今まで一度も悪魔の類を見た事はなかった。
一体どうなっているんだ?
天界との境界線を破ってこんな内陸部まで入り込んでいるとは、正直意味がわからない。
パパの領地内に悪魔がいてパパが把握していないとは考えられない事だ。
しかも野牛を追い立てて何をしようとしているんだ?
「メルエ、野牛の群れが進んでいる先には何かある?」
「はい、かなり距離がありますが大きめの街があります」
あの悪魔の眷属の目的は街を野牛の群れに襲わせる事か?
いずれにしても、このまま捨て置く事は出来ない。
「メルエ、あいつと野牛の間に割りこめる?」
「ファルエル様、あれを相手にするおつもりですか?悪魔の眷属なんですよね。いくらファルエル様でも危険です。残念ですがここは街に先回りして避難を誘導しましょう」
「メルエ、それは出来ないよ。これだけの群れが街に突っ込んだら被害は計り知れないでしょ。しかもあの悪魔の眷属は誰かが倒さなきゃいけないでしょ」
「ですが、街まで行けばもっと他に適任者が……」
「メルエ、大丈夫だから。ぼくのこと心配してくれてるんだよね。悪魔の眷属ぐらい敵じゃないよ」
「ですが………」
「メルエ様、私も精一杯サポートします」
「ほら、ルシェルもこう言ってるんだから大丈夫だよ」
「………わかりました。でも間に割り入るのは無理です。横に並走しますので、それでお願いします」
「うん、任せたよ」
メルエが悪魔の眷属に並びかけるために馬車のスピードを上げた。
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