第80 話 カスタマイズ
メルエとルシェルがゴブリンを退治してくれたので、すぐに馬車を買ったお店に急ぐ。
急いだ結果また気持ち悪い………
「昨日はありがとうございました。どうかされましたか?」
「すいません……。ゆれが激しすぎて気持ち悪いいんです」
「ああ、そうなんですね」
「どうにかなりませんか?」
俺は藁にもすがるような気持ちで声をかけた。
「いくつか方法はありますが費用がかかります」
「聞かせてください」
「まず一つ目は座面に弾力のあるクッションを張ってはいかがでしょうか?」
「いちおう家にある布とかをお尻の下にはしいてたんだけど、全くだめだったんだけど」
「まあ、布などよりは格段に座り心地が良くなると思いますが、それ以上となりますと馬車の車輪を今の物から弾力のある素材の車輪に替えるのが早いと思います。それ以上となりますと構造に手を入れる必要がありますので、費用も時間もかかります」
「それじゃあその2つをお願いするよ。金額はどのぐらいかかるかな」
「そうですね1200ガル程になりますがよろしいでしょうか?」
今の俺に1200ガルは非常に痛いが他に選択肢がないのでお願いする。
今日中に仕上がるとのことなので、その間街を散策して回る事にした。
「ファルエル様が馬車に弱いとは思いませんでした」
「いや、普通の馬車は今までも乗った事があるけどなんとも無かったんだ。あの馬車が特別なんだよ」
「でも私とルシェルは平気でしたよ」
「う〜ん。相性かな〜。でもこれで大丈夫になるはずだから、またしっかりモンスターを退治しないといけないね」
結構時間があったので街をくまなく回る事が出来たが、回っているうちに俺はある事に気づいてしまった。
「メルエ、今日は孤児の子供達がいないようだけど、どこに行ったのかな?」
「普通、孤児達は残飯にありつく為に夕方以降に活動を始める事が多いようです。ルシェルはそこら辺が疎く昼行動していただけだと思います」
「そうなんだ。子供なのに夜に向けて活動するんだね。やっぱり早く助けないといけないね」
俺の目的はモンスターを倒す事では無い。もちろん倒す事によって領民が安全に暮らせるのでそれももちろんだが、当初の目的は孤児達の救済だ。今回の馬車の件でほとんどの貯金を使い果たしてしまったので、これからは失敗は許されない。今まで以上のペースでモンスターを倒す必要がある。
お昼は街の食堂で済ませてから更に街を回った。
今まで目的を持たずに街をぶらぶら歩く事がなかったのでいい機会だったが、歩いてみてこの街は結構活気があって街の人達も笑顔で元気な人が多い印象だった。
やはりこれはパパが頑張っているからなのだと思う。
今の俺にはそんな力はないが将来は今以上に領民を笑顔にしたいと思えた。
予定の時間が来たのでお店まで戻ると馬車の改良は終了していた。
まず、外見は明かにタイヤが違う。木だけで出来た車輪から木の車輪の周りを何かの素材で覆った車輪に交換されている。
そして車の中に入ってみると板が張っただけだった座席がきちんとした馬車の座面に変更されていた。試しに座ってみると硬さを残しながらも、しっかり弾力が感じられる。
「ありがとう助かったよ」
「ワイルドシャープホースは馬力がある分通常の馬よりも揺れを感じる場合が多いのでその影響かもしれません」
ルドのせいか。おかしいと思ったんだ。以前パパ達と乗った馬車は、今の馬車ほどスピードは感じ無かったし全く揺れが気になったりはしなかった。
ルドを選んだのは俺なので何も言えないが、最初の馬車としては間違えたかもしれない。
その後、馬車で家まで帰ってみたが、効果は劇的で俺がダウンする事は無かった。
全く揺れないわけでは無いし、快適とは言えないかもしれないが、それでも先程までとは全く違う乗り心地に明日からの狩りが楽しみで仕方ない。
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