第8話 部屋の外
本日2話目です。
よろしくお願いします。
魔法については一切使えるようになる気配がないが、歩けるようになったので遂に俺は部屋の外に出してもらう事が出来た。
部屋の外といってもやはり家の中だけだが出ることが出来た。
付き添いのある状態でのみ部屋の外を出ることが出来たが、俺の家は思いの外大きかった。
全部見て回ったわけではないが、部屋数は10を超えているのは間違いない。
よく2人のハウスキーパーだけでこのサイズの家を綺麗にしているものだと変に感心してしまったが、幸いな事に我が家には書庫が存在していた。
予想通り我が家はかなり裕福なのだと思う。子爵級悪魔の時の俺の家にも本はあったがそれよりも遥かに多い蔵書がある。
外に出れないので有れば、この本から知識を得てやる。そう思って本に向かって突撃するが、、残念ながら一番下の段しか届かない。
しかも重い本は全く持ち上がらない。
歩き始めたばかりの俺では本を持ったまま歩くことができないのでその場に広げて読む事にした。
読めない・・・
魔界の文字は問題なく読めるはずだが、この本の文字は全く違うものだ。
共通点を全く見出せない。
流石は悪魔と天使。全く似ても似つかない文字を使用しているようだ。
「あらあら、ファルエルちゃんはご本がお好きなんでちゅか。大きくなったら学者さんになるのかもしれませんね〜。ママが読んであげまちょうか。でもね〜ファルエルちゃんが今手にとっているのは、『天界における領地運営と統計的考察』という題名のすごく難しい本なんでちゅよ。もっと簡単なご本を探してあげまちゅね」
そう言ってしばらくママが探してくれたのは
『天界ネズミの大冒険』
あまりに子供向けすぎて、正直言って全く興味が湧かなかったが、文字が全く読めないので我慢するしかない。
ママの読んでいる部分を追って文字を憶えるしかない。
それから俺は前世でも使った事の無いほどの集中力と勤勉さを発揮して、毎日毎日、同じ本を繰り返し繰り返し読んでもらった。
「ファルエルちゃんは本当に『天界ネズミの大冒険』が大好きね〜。ママも本を見なくても憶えちゃった。ご本なしでママが話してあげましょうかね〜」
いや待ってママ。それは困る。どうしても困る。ママのお話は本当に嬉しいのだが、本が無いと文字が憶えられない」
「ううっ。うぇぇ〜ん」
俺は泣きながら本にしがみついた。
「あらあら、ファルエルちゃんそんなにこのご本が気に入ったんでちゅね。分かりました。今まで通りご本で読んであげまちゅね〜」
おおっ。俺の思いがママに通じた。流石は俺のママだ。
「うふっ。ううっ、ありあと」
「ファルエルちゃん。今ありがとうって言わなかった?きゃ〜ママ感激しちゃった。いくらでも読んであげますからね〜」
俺の言葉に感激してくれたママは、それまで以上に何回も何回も『天界ネズミの大冒険』を読んでくれた。
ママの読み聞かせを1カ月間繰り返し、本の文字を追いながら聞き続けた結果俺はかなりの文字を認識する事ができるようになっていた。
流石に書く事は殆ど出来そうに無いが読み取るだけなら『天界ネズミの大冒険』に出てくる文字だけで有れば
9割程度理解できるようになった。
これで、知識を得る為の本をようやく読めると思い、1人で下段の本を取り出して読んでみたが、殆ど読めなかった。読める部分もあるにはあったが、『天界ネズミの大冒険』には全く出てこない文字が多すぎて、読み取る事が出来なかった。
「あらあら、ファルエルちゃんまた難しい本を読んでいるのね〜。『天界史実』なんて読んでるのね。また新しい本に替えてあげますね〜」
今度ママが持ってきてくれた本は『天界犬マリーの大冒険』
なんだ?天界の本は大冒険ばっかりなのか?
まあ、せっかくママが持ってきてくれたのだからしっかり集中してママの読み聞かせを頭に叩き込みたい。
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