第67話 ゴブリンパーティ
ルシェルの指示する方にしばらく歩いていると声が聞こえてきた。
「グギャギャギャヤ」
声の方を見るとゴブリンの集団が馬車を追い立てている。
どうしてこんな所を馬車が走っているんだ?明らかに街道沿いから外れているが、迷い込んだ所をゴブリンに見つかったのだろうか。
御者が必死の形相で馬に鞭を入れているが、ゴブリンに完全に取り囲まれかけている。
「メルエ、あれ、どう思う?」
「あの馬車を見るに旅の商人では無いでしょうか?それよりも一刻も早く助けなければ!」
「そうだね、まず助けてから聞けば良いか。それじゃあやるよ『グラビティバレット』」
大きな火球が5つ発生して走り来るゴブリンに向かって飛んで行ったので補正を加えて全弾命中させる。
一度には馬車の影になっているゴブリンまでも倒す事は出来なかったので、少し移動して再度攻撃をかける。
『グラビティバレット』
2度の詠唱で見えている範囲の10匹のゴブリンを焼き尽くした。
「メルエどう思う?どうしてこんな外れで襲われてるんだろう?」
「外れだから襲われているのでは無いですか?」
「そうか、そういうものかな」
「そうですよ。街道沿い迄はモンスターも群れでは現れませんよ。それよりファルエル様、楽しそうですね」
「えっ?そうかな」
「いつもより笑顔が素敵ですよ」
反対側のゴブリンも倒したので後残るは陰になっていた2匹だけだ。
「そろそろ終わりにしようか。『ブラックバースト』」
俺のほぼ無詠唱は更に磨きがかかり、真横にいても俺が暗黒魔法を使っているのは誰にも聞き取れないレベルにまで達している。
最後の2体も派手に消滅したのでこれで12体全部片付けたが、ゴブリンでは歯応えが無い。
ゴブリンを全て倒すと、追われていた馬車が速度を緩めて止まったので様子を見る為に近づいていって。
「もう大丈夫だよ。ゴブリンは全部倒したから」
「えっ、こんな子供がなぜここに?」
「まあ子供だけどぼくたちが、ゴブリンを倒したんだけどね」
「あ、ああ。これは失礼した。助けていただいてありがとうございました。もうダメかと諦める所でした」
少し失礼な人なのかと思ったが、そういう訳でも無いらしい。
「どうしてこんな所でゴブリンに追われてたの?」
「それが、行商で商品を運んでいる途中で迷ってしまって気付かないうちにゴブリンの集落に近づいていた様で、気づいて慌てて逃げ出した時には既に遅くゴブリンの一団がついて来てしまいまして。ここまで何とか逃げて来た次第です」
「ゴブリンの集落ってさっきのゴブリンで全部?」
「いえ、遠目に見ただけですが集落には数百匹のゴブリンが住んでいる様でした」
「数百匹?おじさん、その集落ってここから近いのかな?」
「ファルエル様!まさかとは思いますが」
「うん。ちょうど良い機会だなと思って」
「坊ちゃん、もしかして討伐をお考えですか?流石にやめておいた方がいいと思います」
「場所と大体の距離を教えてください」
「必死で逃げていたのではっきりとは分かりませんが方向は多分あっちです。距離は馬車で20分ぐらいですのでそれ程遠くは無いと思いますが」
俺達でも時間をかければ十分いける距離だな。これはいかない手は無い。
「ファルエル様、顔が………」
「えっ?メルエどうかした?」
「ファルエル様、今まで見たことが無いぐらいの笑顔ですよ」
ゴブリン退治出来ると思ったら感情を抑えることが出来なくなっていたらしい。
側から見てゴブリン退治に行けるから笑顔になると言うのは少しまずいかもしれない。
もっと真剣で深刻な顔をした方がいいのかもしれない。
「ファルエル様、真面目な顔をしてもダメですよ。完全に笑顔が漏れ出してますよ」
う〜ん。どうやら俺にはポーカーフェイスは難しい様だが、戦う前からこれだとゴブリンの集落について戦いが始まったらどれだけ楽しいのだろうか。
ルシェルもいるのでそれ程早くは歩けないので、すぐにでも向かいたい所だ。
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