第63話 諦め
「ファルエルちゃん……。ママファルエルちゃんの事ではもう驚かないつもりだったんだけど、今のは……」
ママの反応がおかしい。今の花火を見て反応がおかしくなった。もしかしてやり過ぎたのか?
「ファルエルちゃん、今のは敵に向かって使うような事が有れば、軍が壊滅しちゃうわ。凄すぎてママさすがにびっくりしちゃった。それにしても今のは全部で何発あったのかしら」
「うん今のはね、50発だよ」
「50……今のがファルエルちゃんの1番多い数なのかしら」
「ううん、もっと大丈夫だよ。多分200か300ぐらいはいっしょに出せるんじゃないかな」
「そうなのね……ファルエルちゃん、ママやっぱりあなたは大きくなったら英雄とかになると思うの。ファルエルちゃんは世界を救う力を持って生まれたんだと思うわ。今のファルエルちゃんを見て間違いを起こす事は想像できないけど、その力はね、護るべき人達の為に使ってね。自分の事の為だけに使っちゃダメよ」
「うんわかったよ」
それにしても50発1度に発動したがそれぞれの威力が落ちた気配は見て取れなかった。個数作戦は完全に失敗だ。
それと魔法の練習をしていて気がついたと言うか身に付いたが、魔法の発動の時に詠唱をはっきり口に出さなくても、口先で微かに呟いただけで発動する事がわかった。
側から見るとほぼ無詠唱に見えるのではないだろうか。
今日の練習で威力の低下は出来なかったがほぼ無詠唱を身につけてしまった。恐らく凄い事なのではないだろうか?まあ口に出してもゴニョゴニョ唱えても使い勝手はあまり変わらないが。
「ママ、50個出しても弱く出来なかったよ」
「そうね〜。いろいろやって見てるけど上手くいかないわね〜。やっぱりファルエルちゃんが特別過ぎて、魔法を弱くしたいって言うのは難しいかもしれないわね。人にはそれぞれ得手不得手ってあるから。ファルエルちゃんは強い魔法を使う方が向いてるんだと思うわ」
「そうかもしれないけど、それじゃあ困るんだよ」
「考え方を変えたらどうかしら、全部一人でやる必要はないんじゃないかしら。強い魔法はファルエルちゃん、弱い魔法は他の人に使ってもらうといいんじゃないかしら」
「そう言うものかな。でもそれだとずっとメルエに頼る事になりそうだよ」
「メルエだけじゃなくて、そのうちルシェルちゃんもファルエルちゃんのお手伝いができるようになると思うわ」
「それは嬉しいけど、ルシェルが魔法を使えるのは大分先の事でしょ?」
「それがね〜。ルシェルちゃんも特別なのよね〜。近いうちに魔法が使えそうなのよね」
「えっ?そうなの」
「ルシェルちゃんの希望でファルエルの補助になりそうな魔法中心に練習してるから楽しみにしておいてね」
俺の補助魔法中心。それは非常に助かるし嬉しいが、ルシェルはそれで良いのか?補助はあくまで補助で主にはなれないので、将来困る気がするのだが。
「ルシェル、別に僕の補助だけ考えなくて良いよ。自分の使いたい魔法を1番に憶えた方がいいよ」
「はい大丈夫です。わたしが憶えたいのはファルエル様のお役に立つ魔法です。わたしがんばりますね」
「そう、わかったよ。それじゃあがんばってね。ルシェルがぼくを助けてくれるのを楽しみに待ってるよ、期待してるね」
「はい!がんばります!」
またルシェルの瞳が潤んでいる。
ルシェルにはあまり辛い思いはして欲しくないのだが、ママに任せておけば安心だろう。
「やっぱりファルエルちゃんは特別ね〜。こんな4歳の子供は見た事ないもの。将来どうなるのかしらね」
ママにはやはり俺が特別に映るらしい。前世が悪魔の俺は間違いなく特別なのである意味ママは鋭いのかもしれない。
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