第62話 魔法の訓練
俺がメルエの天索者の補助として活動し始めてから1週間が過ぎたが、1日に平均して150ガル程度の稼ぎとなっている。
どうやらこの前のオーク8匹と言うのは当たりだったらしい。世の中そんなにうまくはいかないようだ。
そして相変わらず素材は一切手に入っていないので稼ぎのペースアップもしていない。
それもこれも全て俺のせいだ。俺が魔法を使うと、とにかく何も残らない。どうにかして弱い魔法を使おうと努力してみたが無理だった。俺には魔法の才能が無いのかもしれない。
自分では、どうしようも無くなり行き詰まってしまったのでママに相談することにした。
「ママ、ぼく魔法の調整がうまくできないんだ」
「ファルエルちゃんが?ちょっと信じられないけど、よかったら一緒に練習してみる?」
「うん、お願い」
そう言う事で久しぶりにママと魔法の練習をする事になった。
暗黒魔法と悟られる訳にはいかないので詠唱はできるだけ小声で行わなければならない。
俺はママとルシェルとシルフィールとで家の外の空き地までやってきた。
もちろんシルフィールはママが抱っこしている。
「それじゃあ、ファルエルちゃん早速やって見てくれるかしら」
「うん、それじゃあやってみるね。『グラビティバレット』」
俺は出来るだけ小声で魔法を詠唱したが、距離が近い上にルシェルもいるので聞かれそうで怖い。
俺の心配を他所に魔法は絶好調で巨大な火球が天に向かって飛んでいった。
「ファルエルちゃん。さっきのは威力が強すぎる気はするけど『ファイアブレイズ』かしら。相変わらず凄い威力ね。特に問題無いように見えるんだけど調整が上手く出来ないってどう言う事なのかしら」
「うん、それがね、今のがぼくの使える1番威力の弱い魔法なんだけど、できたらもっと弱くしたいんだよ。この前、鳥に向かって使って見たんだけど、とまり木毎燃えてなくなっちゃったんだ」
「調整が上手くいかないってそう言う事なのね。魔法がうまくできないんじゃなくて、弱く出来ないって言う意味だったのね。そうね〜ママそんな事を悩む人は初めてだわ」
まあそうだよな。普通はどう威力を増すことが出来るのか研鑽を積むものだろう。威力を弱める為に研鑽を積むなど俺自身も聞いたことがない。
「そうね〜ママもそんな事した事ないから力になれるかどうかわからないけど、普通威力を高めようとするど集中力を高めたり、スムーズに出来るように練習したり、大きな声で詠唱したりするでしょ。だからその逆をやって見たらどうかしら。詠唱を小さな声でやって見たり、集中力を少し散漫にしてみるとか」
う〜ん。詠唱はもう既に小さな声でやってるんだよな〜。あとは集中力を欠いた状態での発動か?
「グラビティバレット」
俺はわざとよそ見をしながら放って見たが変化がない。
今度はママにお願いしてシルフィールを抱っこさせてもらいながら発動する。
「グラビティバレット」
あ〜やっぱりシルフィールは可愛い。俺の妹は最高に天使だ。
残念ながら天使たるシルフィールの力を借りても変化は見られない。
「ダメね〜。それじゃあ、今度は数を出して見たらどうかしら。数を出せば一個当たりの威力は落ちるんじゃないかしら」
確かにそれはあるかもしれない。この前は一度に5個発動したがほとんど変化がなかった。それじゃあ今度は一度に50個ぐらい発動すれば変化があるだろうか?
俺は頭の中に50個の弾をイメージして詠唱する。
「グラビティバレット」
巨大な打ち上げ花火のように炎の弾で空が埋め尽くされた。
昼間でも結構明るく綺麗なものだな。見るとシルフィールがキャッキャッと喜んでいる。夜やってあげるともっと喜ぶかもしれないので今度起きていたらやってあげようかな。
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