第60話 オーク
今年もあと1日となりました。
今年1年ありがとうございました。
オークを倒したのでテンションが上がってきた。
もっと多くのモンスターを倒したいが、先程の戦いは肝心の『グラビティバレット』による威力を抑える練習には全くならなかった。
「メルエ、オークってゴブリンと比べて報酬ってどうなんだろう」
「ゴブリンよりは少しだけ上位の評価ですので報酬も上だと思います」
「それじゃあ、ゴブリンを探すよりもオークを探した方がいいんだね」
「い、いえそういうわけではありませんよ。オークはあまり……」
「そう言えばメルエはオークが苦手なんだね。さっきもかなりいやがっていたようだけど」
「多分女性の方は皆さん苦手だと思います」
「そうなんだ」
男である俺は特別な感情をオークに抱く事はないので、あの醜悪な風貌が女性にはダメなのかもしれない。醜悪さで言うとゴブリンも大差ないような気もするが。
「まあ、3匹出たからこの辺りにまだいるかもしれない。しっかり探して回ろう」
「はい……」
次から次へとオークが出現してくれる事を期待したが、そんなに都合よくはいくはずもなく、それから1時間で出会ったのは小鳥が3羽だけだった。
小鳥を魔法の練習に使おうかとも思ったが、さすがに小さすぎるのとメルエに微妙な顔をされたのでやめておいた。
どうやら俺は魔法への探究心が人より強いのかもしれない。魔法や家族の事になると周りが見えなくなるきらいがあるのは薄々自分でも気がついている。
「メルエ、メルエは探知系の魔法は使えないんだよね」
「はい。使えないですね」
「探知系の魔法って難しいのかな。これから憶えたり出来ない?」
「それほど難しいわけではないと思いますが適性があり、私が身につけてもそれほど効果を発揮しないと思います。ダンジョンならともかくこう言ったオープンフィールドでは目視の方が良いと思われます」
「メルエ、ダンジョンってあるんだね」
「私は行った事がありませんが、世界にはいくつかのダンジョンがあるようですね」
「この近くにはないの?」
「ファルエル様、ダンジョンは危険な所なんです。天索者になるのだって私は反対だったのですからそんなところに連れて行けるわけないでしょう」
「ああ、そうだね。僕が悪かったよ」
そうかダンジョンがあるのか。魔界はそもそもダンジョンだらけだった。大きなものから小さなものまで至る所にダンジョンがあったが総じてモンスターの巣窟と化していた。天界のダンジョンが同種の物かはわからないが、モンスターパラダイスの可能性は否定できない。
メルエの口ぶりからすると近くにダンジョンが無いとは言わなかったので恐らくあるのだろう。
時間をかけて説得して絶対に行ってみようと思う。
これで俺の楽しみが増えた。
話をしている間に遠くにモンスターが見え始めた。
あの独特のシルエットはやはりオークだ。オークが今度は5体並んで歩いている。
先程のオークも3体だったのでオークは結構群れるのかもしれない。これを倒せば8匹となるので先日の稼ぎより全然上になる。
「メルエ、あれオークだよね」
「ふぁい。オークですね」
メルエの返事がおかしい。やはりオークは苦手らしい。
「ファルエル様今度は5匹もいますよ。やっぱり逃げましょう、今なら間に合います。5匹に囲まれてしまったら私は一体……」
「大丈夫だよ。5匹ぐらい問題ないよ。さっきの3体から2体増えただけでしょ」
「それはそうですが、普通その増えた2匹が厄介なのです。オーク5匹を相手にしようと思えば単身であればそれなりの技量が必要ようです。私一人では難しくなります」
「大丈夫だよ。メルエを戦わせたりはしないからね。後ろで見ていてくれるだけでいいよ」
話をしているうちにオークの姿がかなり大きくなってきた。
「グラビティ〜バレット〜」
出来るだけ威力を減衰する為に詠唱をゆるい感じでやってみた。
5個の燃え盛る巨大な弾が現れそれぞれにオークに向かって炸裂し、オークは肉片一つ残さずにこの世から消滅してしまった。
まだはっきりとは分からないが、詠唱の仕方は魔法の威力には影響しないのかもしれない。




