SSクリスマスイブ
急遽クリスマス用SSを用意しました。
今日明日とSSになります。
よろしくお願いします。
天界には変わった風習がある。
冬の決まった日にクリスマスと言う家族みんなでご飯を食べる日がある。
その日はグランパやグランパパも一緒にご飯を食べるのだ。
今年はシルフィールとルシェルが初参加する事になる。毎年子供は俺だけだったので今年は賑やかになる事だろう。
そしてご飯を食べた最後にはみんなからプレゼントが用意されているのだ。俺は毎年本を貰う事が多かった。
「ルシェルはクリスマスにみんなでごはんを食べるのは初めて?」
「いいえ、パパとママと一緒に食べた事を微かに覚えています。そこにおじいちゃんとかもいた様な気がするんですけど、はっきりとは憶えていないんです」
「そうか、じゃあ今年からは家で毎年クリスマスを一緒に迎えようね」
「はい。ファルエル様……」
またルシェルの瞳が潤んでいる。本当にルシェルは涙脆い。
魔界にはこの様な習慣はなかったので天界独自の習慣だと思うが、なかなかにいいものだ。
明日はそのクリスマスだが、メルエや他の者も全員で準備にかかっている。
そのせいで今日は俺はする事が無いので、シルフィールのお世話をしている。
「ふぁる…」
おおおおっ〜。
「シルフィールもう一度おねがい」
「ふぁる…」
おおおおおおっ!
シルフィールが俺の名前を……
何という感動!これは魔法を使えた時の感動を凌駕している。
これはシルフィールから俺へのクリスマスプレゼントだ。そうに違いない。
こんなに感動的なプレゼントを用意してくれたシルフィールに俺からも何かプレゼントを用意してやりたいが、何も考えていなかった。
食べ物はダメだし、シルフィールに本はまだ早い。剣をプレゼントしても喜ぶとは思えない。何が嬉しいんだ?分からない……
ママに聞いてもいいがサプライズ感がなくなってしまう。
困った俺はメルエに聞く事にした。
「メルエ、ちょっといいかな。シルフィールに何かプレゼントしたいんだけど、なにがいいか全然思いつかないんだ。女の子には何がいいんだろう」
「そうですね。シルフィール様ぐらいだと、甘いお菓子か、木製のおもちゃとかはいかがでしょうか?」
「おおっ。さすがメルエだね。お菓子かおもちゃね」
お菓子もおもちゃも作った事は無いが、普通に考えて俺がお菓子を作るのは無理だ。木のおもちゃならなんとかなりそうな気がする。
だが俺は木のおもちゃで遊んだ記憶がほとんど無い。
常に歩く事や魔法を使う事ばかり考えていたので、赤ちゃんの時に赤ちゃんらしい遊びをして来なかった。なのでイメージがあまり湧かない。
材料の木は家の周りで用意できる。作業用の小刀もなんとかなるだろうが、そもそも俺は木を削って何かを作った事が一度も無い。
すぐにうまく出来るとは思えないので早急に取り掛かる必要がある。
急いで、外で木を集めて来てシルフィールの横で作業に取り掛かった。
最初考えたのはシルフィールが乗る木馬のような物だったが、作業し始めて1時間が経過した段階で一切作業が進まなかったので挫折した。
俺は舐めていたのかもしれない。こんなに何かを作り出すという作業が難しいとは……
世の中の物を作る人達に畏敬の念さえ覚える。残念ながら俺には才能が無いようだ……
そこからは現実を見つめ直す作業と不器用な俺の精一杯を発揮する努力の繰り返しだった。
寝ているシルフィールを横目に一心不乱に作業に没頭した。
途中でママに
「ファルエルちゃん、もう休んだ方がいいんじゃない?」
と言われたので今度は場所を移して夜中まで作業してしまった。
明日はクリスマス、是非ともシルフィールに喜んでもらいたい。
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