第57話 ルシェルの秘密
俺は久しぶりにシルフィールのお世話を満喫している。
やはりシルフィールは最高に可愛い。お世話しているとなんとも言えない幸福感に包まれる。
パパの気持ちが4歳にして体感できてしまっている気がする。
ルシェルもしばらく連れまわしたので、今日は本来の仕事である家の掃除や片付けを手伝っている。
グランパはママとグランマとどこかに行ってしまったのでシルフィールとの2人の時間を思う存分味わう事にする。
「2人ともちょっといいか。本当はラファルエルもいた方がいいんだが、帰ってくるのは夜だろうから2人には先に話しておこうと思う」
「はい、なんでしょうかお義父様」
「あの子、ルシェルの事だよ」
「ルシェルちゃんがどうかしましたか?」
「こう言ってはなんだが、孤児にしては可愛すぎると思わんか?」
「それはきっとご両親が綺麗なお顔をされていたんでしょう」
「それに1日で魔力操作ができるようになったそうじゃ無いか」
「そうですね。凄い才能です。これから私が育てていこうと思っています」
「旅行中に両親が亡くなったと言っておったな」
「そう聞いております」
「う〜む。実はな、俺にはルシェルの顔に憶えがあるのだよ」
「えっ?どう言う意味ですか」
「正確にはルシェルに似た顔に憶えがあるのだ」
「それは………」
「うむ、おそらく俺はあの子の両親を知っておる。あの子から名前を聞いて確信に変わった」
「お義父さんが知っていると言うのは……」
「あの子はな、前の天聖に連なる者だ」
「前の天聖様と言うとギルフィリエ様でしょうか?」
「そうだ、そのギルフィリエ様の次男の名前がグラフィエル様、あの子の父親じゃ」
「それではルシェルは前天聖様の孫という事でしょうか」
「そうなるな。母親であるエリーシア様も東の侯爵家の出、ルシェルちゃんと良く似た綺麗な方だったのだ」
「それが本当だとするとルシェルちゃんをギルフィリエ様の所へお返しすることになりますね」
「いやそう単純な話では無い。そもそも今代の天聖には何人か候補がいたが現在の天聖に決まった。決まった最大の要因はグラフィエル様一家の失踪じゃ。候補の一人でもあったグラフィエル様の一家が家族旅行に行ったきり連絡が途絶えてしまったのだ。噂では重圧に耐えきれず逃げたとか、悪魔の軍勢に飲み込まれてしまったなど言われていたが、消息が分からなくなっていたのだ。憔悴したギルフィリエ様の跡を継ぐ形で急遽今の天聖が決まった形だ」
「それってもしかして」
「ああ、可能性は高いな。天聖候補だったグラフィエル様が通常の魔獣如きに遅れをとるとは思えん。何かしら裏があると考える方が自然だろう。もし娘のルシェルちゃんがその場から難を逃れた事が分かればどう言うことになるかわかったものでは無い」
「そうですね。当面あの子はうちの家のルシェルちゃんと言う事で通しましょう」
「ああ、それがいいだろう。それにしてもなんとも聡明でかわいい子だな。ファルエルと並ぶと本当に光が差し込んだ様だな。本人にはもう少し大きくなってから事情を話した方がいいかも知れんな」
「わかりました。今後何事も無いよう家のものにも言いつけておきます。私もルシェルちゃんに魔法をしっかりと教えておきますね。でもファルエルちゃんと一緒にいるのが1番安全かもしれませんね」
「確かにな。ファルエルには次の天聖になってもらう必要があるからな。ファルエルが天聖となればルシェルちゃんが危険に晒されることも無くなるだろう」
「あなた、さすがに4歳のファルエルに今からそれを望むのは酷ですよ」
「わかっているが、ファルエルの姿を見ていると期待せずにはおれんのだ。ファルエルならルシェルちゃんに笑って過ごせる未来を用意できる。それは今からでも断言できるからな」
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