第53話 メルエの魔法
「ファルエル様、やりすぎです」
「そう言われても僕も困ってるんだよ」
「ファルエル様、鳥を仕留めるのにとまり木ごと焼失してしまう魔法を使うなんて聞いた事もありません」
「僕もそんなつもりはなかったんだけど、魔法を使ったらああなっちゃったんだよ」
「ファルエル様、小さな相手にはもっともっと小さな魔法を使ってください」
「メルエ、それが今のが僕の最小魔法なんだよ」
「ファルエル様?今何と言われましたか?」
「さっきのが僕の最小魔法なんだよ」
「ファルエル様、さっきのがですか?」
「うんそうだよ」
「ファルエル様?本当に貴方は天使ですか?」
「うん、そうだと思うけど」
「いいえ、違うと思います。貴方は神か何かの生まれ変わりなのですか?」
「いや違うよ。普通の天使だよ」
メルエまで俺の前世が神だと言い出したが、俺の前世は子爵級悪魔だ。
「ファルエル様、普通の天使の魔法は、あんなのではありません。いい機会なので次は私の魔法を披露しますね。次に獲物が来たら私がやりますね」
「うん、じゃあお願いするよ」
メルエが魔法を見せてくれるらしい。考えてみるとママの魔法とグランパ以外には、ほとんど天使の魔法を見たことがなかった。ママの魔法もかなりすごかったので、普通が分からないのでいい機会だ。
「ファルエル様、やっぱり凄いです。私も頑張りますね」
「うん。頑張ろう。期待してるよ」
「はいっ」
うんルシェルの笑顔はいいな。俺まで嬉しくなってくるな。
そこからまたしばらく歩いて、探索を続けていると鹿の様な獣を発見することが出来た。
「ファルエル様、ここで待っていてください」
そう言うと、メルエは静かに駆けて行き鹿への距離を詰めると
「エタニティレイン」
メルエの詠唱と共に、丁度鹿の頭ぐらいの範囲で雨粒の様な水の細かい粒が発生して、そのまま鹿に向かって行き、見事胴体に命中して鹿を倒す事に成功した。
どうやら今の魔法は、範囲内に発生した雨粒が針の様に変化してそのまま飛んで行って刺さる魔法の様だ。
一見地味だが、結構魔界の拷問に通じるものがある、効果的な魔法だと思う。
「ファルエル様、いかがですか?」
「うん。倒せてよかったよ。メルエもすごかったんじゃないかな」
「いえ、そう言うことではありません。獲物をよく見てください」
「うん。うまく倒せたから、肉は食べれるよね」
「い〜え。そうではありません。先程の魔法は私の使える魔法の中では中位程度の魔法ですが、鹿はしっかりと姿を残しているでしょう」
「ああ、そう言われればそうかも」
「そうなんですよ。これでも私は学校ではそれなりに優秀な方だったんです。魔法も真ん中よりは上の能力があったんです。でもこのぐらいなんです」
「そうなのか。メルエは魔法も得意だったんだな。剣一筋なのかと思ってたよ。凄いじゃないか」
「は、はい。ありがとうございます…。いえそう言うことではないのです。16歳の平均より上の魔法でこのぐらいの威力しかないんです。ファルエル様がどれだけ凄いのかわかりましたか?」
ああ、そう言うことか。
「うん、わかったよ。ありがとう。ただ威力が強けばいいってものじゃないでしょ。ぼくは獲物を捕まえる事が出来ずに、メルエはしっかり捕まえる事が出来たんだから。メルエの方がすごいじゃないか」
「えっ?そ、それはそうかもしれませんが。そう言うことではないのですが」
「これからもメルエの力は必要だから、ぼくに力を貸してくれないかな」
「ファルエル様……。これからもメルエはファルエル様のために頑張りますね」
「うん。ぼくだけでは上手く獲物を捕らえることは、難しい様だから力をかしてね。たよりにしてるよ」
「はぃっ」
それにしてもメルエは上手く鹿を倒す事に成功したのに俺は全然ダメだった。
これからの事を考えるとどうにかして魔法の出力を下げる練習をしないと厳しいかもしれない。
この作品は皆様のブックマークとポイント評価で支えられています。
興味を持たれた方は是非ブックマークと下にスクロールしていただき広告の下部からのポイント評価ボタンで評価をお願いします。
よければhjネット大賞受賞作 モブから始まる探索英雄譚 https://ncode.syosetu.com/n8930fk/
もよろしくお願いします。




