第44話 食事
「メルエ、結構時間がかかってしまったからお腹が空いてきたよ。どこかでご飯を食べようが」
「はい、そうしましょうか。どこにしましょうか」
「う〜ん、よく知らないから昨日の串焼きでもいいんだけど」
「それじゃあ、そこまで歩きながらどこか良い所が有れば入りましょうか」
「そうしよう」
3人で街の入り口に向かって歩き始めるが、しばらくしてルシェルの足が止まった。
どうしたのかと思いルシェルに目をやると、視線の先には昨日ルシェルが追い出されていた食堂があった。
よく見ると店頭には昨日ルシェルを追い出した男が立っている。
俺は、その男の前まで行って
「昨日はどうも、今日は3人だけどいけますか?」
「ああ、あなたは昨日の。今日はもう一人可愛い女の子が一緒なんですね。もちろん大丈夫です、中へどうぞ」
「えっ!?」
「ルシェル、中で一緒にご飯を食べるよ。メルエ入ろう」
「はい」
昨日断られたお店に3人で入ることにしたが、中は結構広くて他にも数組のお客さんが来ていた
俺はあまり外食をした事は無いので何が良いかよくわからない為、メルエに一任する。
「メルエ、適当に3人分注文してもらっていいかい」
「はい、もちろんです」
メルエが3人分の食事を注文してから食事が出てくるまでしばらくかかるらしい。
「ファルエル様。私ここにいてもいいんでしょうか」
「ルシェル、もちろんだよ。お店の人にも確認したでしょ」
「でも、私は・・・」
「ルシェルはもう僕の家族だ。誰にも文句は言わせないよ。それにお店の人も言ってたけど、ルシェルは可憐で可愛いからね。これからは自分に自信を持っていいと思うよ」
「ファルエル様・・・」
ルシェルがまだ泣きそうな顔をしている。俺はまた間違った事を言ってしまったのだろうか。
「ファルエル様、やはりメルエはファルエル様の将来が心配です。どうか今のままでいてくださいね」
どういう意味だ?メルエの言う事は時々よくわからない。
しばらく待っていると食事が出て来たがプレートの上に1人分の食事が全部乗っている。
家ではこんな出され方をした事がないのでちょっと面白いが、効率的でいいかもしれない。
「それじゃあ食べようか」
3人で食べ始めて気がついたがルシェルは食べ方が綺麗だ。
串焼きの時は気がつかなかったが4歳の時に孤児になったはずなのでそれまでに身につけたのだと思うが、テーブルマナーがきちんと出来ている。
この天界の標準がわからないので周囲を伺っていたが、他のテーブルの人たちはもっと豪快に食べているのでルシェルは、標準よりも明かに上手く食べている。
恐らく、ルシェルの家庭はかなり裕福だったのだろう。旅行の最中に襲われたと言っていたので遠くから来たのだとは思うが、よく考えると家族旅行が一般的だとは思えない。
あまり詳しく聞くのもルシェルが辛くなるだろうから控えておこう。
「これ結構美味しいね」
「はい。すごく美味しいです。普段は食べて残ったのとか腐りかけてたのを食べていたので」
ルシェル・・・・
これからは大丈夫だ。
「ファルエル様、この食堂は美味しい方だと思います。当たりですね」
しかしこの普通に美味しい食堂の普通の対応が昨日のルシェルに対してのものだとは。やはり俺がなんとかしなければならない。
ルシェルが綺麗な格好をすれば問題無く対応してくれた。
昨日のルシェルも今日のルシェルも同じ天使なのだ。
孤児だって見かけ、いや環境さえ変わればここにいる人達となんら変わらない。
むしろルシェルの方が可憐で教養も高いでは無いか。
ルシェルは助ける事が出来たが、今の俺には全員を助ける事は出来ない。これ以上家に連れ帰れる訳にもいかない。俺はこれからどうすればいいだろうか。
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