第38話 我儘
「ルシェル、今はどこに住んでいるんだい?」
「決まった場所はないんです。納屋とかの軒先で邪魔にならないように」
「そうか。それじゃあ、働かないといけないけど、住む場所とご飯がもらえるとしたらどうかな?」
「そんな夢見たいな事があるとは思えません。私はもう・・・・」
「そう。僕はね領主の息子のファルエルだ。ルシェルが望むなら僕は君を助けたい」
「ファルエル様!」
「メルエ、僕はね将来この街の領主になるかもしれない。それでね、僕の街ではルシェルの様な子を認める事はできない」
「認める事ができないって言うのは、追い出されるって事ですか?」
ルシェルが泣きそうな顔でこちらを見てくる。
「いや、君の様な子供は全員救って見せる。ファルエルの名に誓って絶対に助けて見せる」
「えっ?助けるって、どうしてですか?」
「僕は我儘だからね。僕がそうしたいからだよ」
「ファルエル様!」
メルエがすごい形相でこちらを見ている。
気持ちはわかる。でも、もうどうしようもない。俺は決めた。俺が将来領主になったらこの子達の様な子供は認めない。認められない。俺が助ける。
今は何の力もないのでパパとママに頼るしかないが、目の前のルシェルを放っておく事はどうしても出来ない。
「メルエ、すまないがルシェルを家に連れて帰ろうと思うんだ」
「ですがファエル様」
「メルエわかってもらいたいわけじゃないんだ。僕の我儘でそうしたいんだ。これはもう決定だよ」
「そうですか。わかりました」
「うん、ありがとう」
「そう言うわけでルシェルには僕の家に来てもらおうと思うんだけど、どうかな」
「私、行ってもいいの?私汚いし、何もできない」
「もちろんだよ。汚れてるのは、お風呂に入ればきれいになるよ。今は出来なくても習えば色々できるようになるから大丈夫だよ。何も心配いらない。大丈夫だから」
「ううっ。うわあぁあ〜ん」
ルシェルが大粒の涙を流して泣き出してしまった。
恐らくこれまでの一年辛かったのだろう。4、5歳の子供が1人で生きていく事がどれほど過酷か想像する事すら難しい。
俺はこの一年、パパとママに愛情を受けて何不自由なく暮らしてこれた。
あまりにルシェルと違いすぎる。俺の今の境遇には感謝しか無いが、罪のないルシェルの境遇には怒りしか感じない。
「それじゃあそろそろ家に行こうか。歩いて30分ぐらいかかるから」
「はい」
俺はメルエと2人で来た道を今度はルシェルを加えた3人で戻る事にした。
俺が声をかけたからには、どうにかして助けなければならない。
それにはママとパパをどうにか説得しなければならない。
犬や猫を拾って来たのとは訳が違う。どうやって納得して貰えばいいだろうか。
俺は帰り道ずっとその事ばかり考えていたが、程なく家に着いてしまった。
「メルエ、僕はママのところに行くから、ルシェルをお風呂に入れてもらえないかな。服は僕の服を着せてあげてくれるかな」
「かしこまりました」
ルシェルの事をメルエに任せて俺はママのところへ向かった。
「ファルエルちゃん。お外はどうでしたか?何かいい事はありましたか?」
「はい。街まで行ってけど、串焼きを食べました」
「そう、おいしかった?」
「はい。すごくおいしかったです。ママそれでね、お願いがあります」
「はい、なんですか?」
「僕には同い年ぐらいの友達がいません。だから友達が欲しいんです」
「そうね。ファルエルちゃんにも同い年ぐらいの友達は必要よね」
「だから僕に友達をください」
「えっと、ファルエルちゃん、気持ちはわかるんだけど、友達って言うのはね、ママがあげられる様なものじゃないのよ」
「うん。それはわかってるよ。だから自分で友達を見つけて来たんだ」
「友達を見つけて来た?」
ここからが勝負だ。なんとしてもママを説得しなければならない。
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