第37話 ルシェル
俺は孤児と思しき子供を伴って先程の串焼き屋まで戻ってきた。
「おじさん、串焼きを3本ください」
「あれ?さっきの坊主じゃ無いか。どうしたんださっきのは落としちゃったのかい?」
「いえ、先程の串がすこく美味しかったのでもう一本食べたくなっただけですよ」
「おおそれは嬉しいな。それじゃあ、おまけして5ガルでいいぞ」
「ありがとうございます」
俺は差し出された串焼き3本を受け取ってから、一本をメルエにもう一本を孤児の子供に手渡した。
「それじゃあ、せっかくだから熱いうちに食べようよ」
「で、でも・・・」
「もうそれは君の串焼きだから、食べても捨ててもいいよ」
「・・・・はい。ありがとうございます」
そう言うど、その子はすごい勢いで串焼きを食べ始めた。
「ふぅ、おいひ〜。うぅおいひ〜です」
よっぽど美味しかったのか、熱さを無視して一心不乱に食べている。
「良かったらこれも食べないか?僕はさっき食べてお腹がいっぱいなんだよ」
その子は一瞬考えてから、俺の串焼きを受け取って、再び頬張り始めた。
「おいひ〜れす。本当においひ〜です」
その子は頬張りながら涙を流している。
確かにこの串焼きは泣くほど、美味しかったがこの子の泣いている姿を見ていると、心の中がざわつく。
「良かったら私のもどうぞ。私も先程一本食べてお腹いっぱいなのです」
その子は、遠慮を見せながらも3本目を泣きながら頬張っている。
「ファルエル様、ちょっとよろしいでしょうか?」
メルエに声をかけられ、端に移動する。
「ファルエル様、あの子供に食事を与えたり、気にかける事は素晴らしいと思います。ただ、ここで一時的な情けをかける事はあの子供の為になりません。ファルエル様の様な方ばかりでは無いので、あの子供も今後、これを期待する様になってしまうど、余計苦労する事になりかねません」
「う〜ん。メルエの言っている事も間違いでは無いと思うけど」
「ファルエル様、厳しい事を申し上げるようですが、世の中にはあの子供と同じ様な子供は多く存在します。あの子供一人に一時的な施しをしても根本的な解決には、ならないのです」
「メルエ、君の言ってる事はまちがいじゃない。だけど、あの子の様な境遇の他の子供を救えないからと言って、あの子に手を差し伸べない理由にはならないよ。他の子供が不幸な環境にいるからと言ってあの子が今の境遇のままいて良い理由には全くならない」
「ファルエル様、それはそうですが。あの子供をこれからどうするおつもりですか?」
「う〜ん。どうすれば良いかな」
「残念ですが、このままお別れをするしか無いと思います」
「ちょっと待っててね。あの子に事情を聞いてくるね」
俺は、串焼き3本を食べ終わった子供に声をかけた。
「遅くなったけど、僕の名前はファルエルって言うんだ。君の名前を教えてもらっても良いかな」
「は、はい。わたしの名前はルシェルです。本当にありがとうございます」
「それじゃあ、ルシェル君は何歳なのかな」
「はい。6歳です」
6歳か。栄養状態が悪いせいか、体の大きさは4歳の俺と変わらない。
「それじゃあ聞きたいんだけど、ルシェルのお母さんとお父さんはどうしたんだい?」
「え、えっと・・・」
「話難いかな」
「いえ、あの2人とも死にました」
「どうして死んでしまったか聞いても大丈夫?」
「はい。旅行の最中に馬車が魔獣に襲われて。私だけは逃してもらったけど、お父さんとお母さんは・・・」
「辛い事を聞いてすまなかったね。ルシェルはいつから1人なんだい?」
「はい。大体1年ちょっとだと思います。なんとかこの街まで歩いて来て、どうしようもなくて」
「そうか、大変だったね。ルシェルはこれからどうしようと思ってるんだい?」
「どうしようと言われても、私にはどうしようもありません」
ルシェルの辛そうな顔を見ていると胸が締め付けられる様な感覚が湧いて来た。
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