第28話 魔法
今日もシルフィールの世話をしているが特に変化はない。
じっと注視しながらお世話をしているが、シルフィールには全く不自然な点を見出すことができない。
やはり俺だけが特別だったのだろうか。今のところシルフィールが転生者である確証を得る事は出来ないが、引き続き観察を続けたい。
問題は、お世話を続ければ続けるほどシルフィールが可愛い。シルフィールが可愛いという感情と愛情がどんどん増していく。このままではまともな判断を下すのが難しくなるのも時間の問題かもしれないので、転生者であるなら早く兆候を示してほしい。
この数日はシルフィールにばかり気を取られていたが、冷静になって考えて見ると今の状況は俺の望んだ状態になっている。
シルフィールは1日のほとんどを寝て過ごし、ママも産後の疲れがあるのか早く寝てしまっている。
タイミングを見計らえばいつでも抜け出せる状況にある。
これはやるしかない。この半年間我慢し続けたのだから行くしかない。
己の欲望に負けてしまった俺は、その日決行してしまった。
ママとシルフィールが熟睡しているのを確認してから家を抜け出して外に向かった。
流石に門を越える時にはビクビクしながら進んだが、今回は襲われる事はなかった。
「できるだけ遠い方がいいがな。音がするとまずいもんな」
余り離れすぎても怖いので、恐らく音が聞こないであろう100mほど門から離れて準備をする。
魔力の操作は無意識に出来ているので特に問題無い。
俺は少し緊張しながら魔法を唱える
「ホーリーボール」
・・・・・・・・・・・・・
やはり何も発動しない。
「ホーリーシールド」
・・・・・・・・・・・・
「ホーリーキュア」
・・・・・・・・・・・・
この2年以上毎日のように練習した聖魔法を一通り詠唱してみたが一切発動しない。
やはり急に聖魔法が使えるようになったわけではないらしい。
「それじゃあやってみるか」
「ブラックバースト」
俺が暗黒魔法を唱えた瞬間、空中に光が集約して爆発した。
「ズドドォーン!」
やった。やはり使えた。しかも俺の記憶にある『ブラックバースト』よりも明かに規模が大きい気がする。
しかも、半年前に発動した時と同様に本来の『ブラックバースト』とは異なっている。
本来『ブラックバースト』は黒い光を発するはずなのに完全に白い光だ。
明かに聖なる光。ママが使っていた聖魔法と同じ光だ。
「アブソリュートメア」
前回も発動した俺の最大魔法を詠唱してみた。
「ズガガガガガーン!」
おおっ。再び強烈な白い光の閃光と共に爆発が起こったが、これはなんだ?
俺の『アブソリュートメア』はこんな威力じゃなかったぞ。
確かに俺の使える最大魔法なので、クソ勇者には耐えきられたが絶対の自信を持っていた。
しかし、今回発動した『アブソリュートメア』はおかしい。
爆発の規模が大きすぎる。
黒い光ではなくやはり白い光、聖なる光による爆発なのは『ブラックバースト』と同じだが、威力がおかしい。
強力すぎる。
実際に敵に使った訳ではないので、爆発の規模と音による感覚的なものだが以前に比べて明かに威力が増している。
「デーモンズフロー」
聖なる光のサークルが展開される。
これも規模が大きいな。やはり威力が増している。
その後もいくつか暗黒魔法を使ってみたが全て使用することが出来た。
全ての暗黒魔法が何故か聖魔法に変換されているかのように聖なる光の魔法に変わってしまっていた。
これは俺が悪魔の生まれ変わりだからだろうか?
それとも聖翔の儀で告げられた無色に関係しているのだろうか?
威力が劇的に増しているのも理由がわからない。
この数年間魔力操作を続けていたせいだろうか?
急に魔法が使えるようになったのは飛び上がるほど嬉しいのだが、わからない事が多すぎて俺の頭ではすぐには消化しきれそうにない。
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