第27話 シルフィール
「ファルエル、どうしたの大丈夫?」
放心状態の俺をみてママが声をかけてきた。
「いえ、あまりの可愛さに我を忘れていました」
「まあファルエルちゃんたら。でも仲良くしてくれそうでよかったわ。ファルエルちゃんの事だからママは心配はしてなかったけどね」
これが妹というものか。可愛い、可愛すぎる。
悪魔の時の俺の美的感覚では天使は醜いものとして映っていたが、ママと言い妹と言い、俺の目は腐っていたのだろうか。
あまりの可愛いさに我を忘れそうになったが、よく考えるとこの妹が俺同様転生者である可能性は捨てられない。
もしもママ達に危害を加えるような奴だと俺が守らなければならない。
しかしこの小さな妹が敵意を持っているとも思えないな。
いや、俺は見た目に惑わされているのかもしれないので、しばらくここを離れずに注視しておこうと思う。
「ママ、赤ちゃんが生まれたばっかりで動けないでしょ。ぼくがお手伝いするから、今日からこの部屋で一緒に過ごしてもいいかな」
「まあ、なんて優しいのファルエルちゃん。それじゃあ、お兄ちゃんにお世話をお願いしちゃおうかな」
「うん、まかせてよ」
「おお〜っ。なんて可愛いんだ。あ〜っ輝く花のようだ。可憐だ。女の子か〜。今から結婚相手が心配だな〜可愛すぎる〜」
いつものようにパパが熱苦しい愛情表現を発揮しているが、今回ばかりは俺も同じような気持ちなので何も言えない。
「ママこの子の名前だけどシルフィールと言う名前はどうかな」
「シルフィール。なんて可愛らしい名前かしら。いい名前ねシルフィール。あなたの名前はシルフィールよ」
シルフィール。なんて愛くるしい名前なんだ。パパにしてはいい名前を考えたな。だが名前と風貌に惑わされてはいけない。
その日から俺のシルフィールへの監視が始まった。
とにかく寝る時間以外は目を離さないようにして、ずっと同じ部屋で過ごしている。
俺の経験からして、赤ん坊の時の一番の問題はお漏らし等のおむつ交換の時に受ける屈辱だ。
恐らく転生者で有れば、何らかの違和感のある反応が見られるはずだ。
ママに危害が及ぶようなことがあってはいけないので俺がおむつ交換の係りを願いでる。
もちろん前世でも子供がいた事の無い俺におむつ交換の経験は全く無いが、今世の赤ちゃんの時に散々ママに交換された事を鮮明に覚えているので問題なく出来るはずだ。
そしてその時はすぐに来た。
「オギャー、オギャー、オギャー」
「あらあら、シルフィールちゃん。おむつ交換でちゅね〜」
「ママ、ぼくが交換するね」
「ファルエルちゃん無理しなくてもいいのよ」
「全然無理じゃないよ」
早速シルフィールのおむつ交換に取り掛かるが、初めてのおむつ交換は全く苦にならなかった。
他人のおむつ交換など想像もした事がなかったが、シルフィールのおむつ交換は苦痛とは程遠い感情で、なぜか汚いとも一切思わなかった。
自分の感情がどうなっているのか自分でもよく分からないが、シルフィールのおむつを交換する事に喜びに似た感情を覚えている。
俺は変になったのか?おむつ交換に喜びを覚えるとは一体どうしてしまったんだ。
自分の感情と葛藤しているうちにおむつ交換は滞りなく終了を迎えた。
「あら〜。さすがファルエルちゃんね〜。おむつ交換まで完璧にできちゃうなんて、すごいわ〜。ママ驚いちゃった」
しまった。
余りに集中しすぎてシルフィールの反応を見るのを忘れてしまった。
次からはしっかりシルフィールの動きを観察しなければならない。
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