第23話 パパ達の戦い
夜になれば抜け出して魔法の練習が出来ると思っていたが、甘かった。ママは俺と同じベッドで寝る事にしたようで、全く身動きが取れないので全く抜け出せそうには無い。
そういえばママはずっと俺に張り付いているが、今日一日パパを見かけていない。そういえばパパだけじゃなく、グランパやグランパパも見ていない。
俺が目を覚まして元気そうだから安心して帰ってしまったのだろうか?
「お父さん方、それでは向かいましょうか。準備は大丈夫ですか?」
「問題無い、いつでもいけるぞ」
「私もこの剣があれば大丈夫だよ。それでは行こうか」
僕は自分が許せない。アムラエルが死んでしまった時にはこの世界が終わったとさえ思った。
あまりに酷い姿に、通り魔的なものにあったのだと思い込もうとしていたのかもしれない。
この子の死が自分への恨みによるものだとは思いたくはなかったのだろう。
僕はなんて馬鹿なのだろう。僕の馬鹿さ加減のせいでまた同じ事を繰り返すところだった。
最愛のファルエルまでも、もう少しで失くしてしまう所だった。
ファルエルが意識を取り戻すまで確信は持てなかったが、我が子達に2度までも惨劇がおきたことで、僕は確信してしまった。
これはリクレエルの仕業だと。
僕にこれ程までに恨みを持つ人間はリクレエル以外には考えられない。
このファルードの領主たる僕をこれ程までに恨んでいるのは、前領主補佐官であったリクレエル以外には思いつかない。そしてファルエルが目を覚まして事情を聞いて確信した。更にアムラエルが同じ天使に殺された事を聞いて僕の怒りは突き抜けてしまった。
絶対に許す事はできない。もう一時でもファルエルを危険に晒す事はできない。今すぐリクレエルを処罰する以外にない。
僕とお父さん達3人は馬を走らせリクレエルの屋敷に向かった。
およそ1時間程度で着いたが、相手も警戒していたのか僕たちが到着したと同時にリクレエルが出迎えてきた。
「これはこれは、ラファルエル様ではありませんか。一体どうされたのですか?もう5年以上お会いして無かったと思うのですが」
「リクレエル久しぶりだな。今日来た理由はわかっていると思うがな」
「は〜。理由ですか?私には全くわかりかねます。5年もお会いして無いのですから、来られた理由など分かるはずがないでは無いですか」
「そうか。では言わせてもらう。先日僕の息子のファルエルが何者かに襲われた」
「そうなのですか?お子様がいる事すら私は存じ上げておりませんでした。お子様は大丈夫だったのですか?」
「ああ、お陰様でな。今は元気にしているよ」
「それはよかったですね。それはそうと、その事と私が何か関係するのでしょうか?」
「5年前、長男のアムラエルが誰かに殺された。そしてまたこのタイミングでファルエルが襲われた。ファルエルによると茶色い髪に頬に傷のある男だったそうだが、お前の知り合いか?」
リクレエルの頬が一瞬ぴくりと動いたが、表情には全く出さずに
「何をおっしゃっているのか意味がわかりませんね。私がそのような男を知るわけがないでは無いですか」
「そうか?僕にはお前しか思い当たらないのだが。5年以上前から殺したい程私を憎んでいる相手はお前以外には思い当たらないんだよ」
「何をおっしゃるのですか。ラファルエル様に恨みなど一切ございません。罷免されたのは私自身の過ちのせいです。間違ってもラファルエル様に恨みなどございません」
「そうか、では僕のジャッジメントを受けろ。それでお前の言葉が真実かわかる」
「何を仰っているのですか?証拠もないのにジャッジメントを受けろとは。了承できませんね」
「こちらは、覚悟を決めてきているのだ。お前の同意を得るつもりはないんだ」
「それは横暴というものではないですか?もしジャッジメントを受けて私が無実だった場合どうされるのです?勘違いではすみませんよ」
「ああ、その場合はワシが己の首でもなんでもお前にやろう。死んでお前に詫びてやる。そもそもお前を重用したのはワシの責任。ワシが全責任を負う」
「い、いえ。前領主たる貴方様に責任を取っていただいても、私には何の得もありませんので、お断りします」
リクレエルにようやく焦りの色が見え始めたが、未だにしらばっくれている。
今回はそれで済むはずがない事を理解していないのだろう。
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