第21話 5年前
俺は家族みんなに5日前の出来事を話した。
外に出た途端突風が吹いて吹き飛ばされた事。
その直後、風を纏った鳥に襲われた事。
俺が追い詰められた時に、とどめを刺そうとあの天使が現れた事。
そして兄の事をその天使が語った事。
追い詰められた俺が魔法を発動してその天使を倒した事。
倒した直後にママが飛び出してきて、ママを目掛けて鳥が攻撃しようとしたので俺が倒した事。
全てを話し終わったが、全員の中で疑問が湧き上がってきたようだ。
「ファルエル、ちょっといいか?ママを助けたとは聞いていたから、何かの力を使ったんだとは思うけど、ファルエルは魔法は一切使えなかったよな」
「まあ、5日前までは全く使えなかったけど」
「危ない状況になって、急に使えるようになったと言うことか」
「ぼくにも理由はわからないんだけど、あの時は使えるようになったんだよ」
「しかし、ファルエルに教えていた攻撃魔法は『ホーリーボール』だけだったよな。殺しをやるような天使を仕留められるとは思えないんだが」
「う〜ん。それはぼくにはわからない事だけど、必死だったからすごく効いたんじゃないかな」
「それじゃあ本当にファルエルが倒したのか」
「うんそうだよ」
「そうか・・・・ファルエルお兄ちゃんの敵をとってくれたんだな。本当はパパが成さないといけない事だったんだ。すまない。本当にありがとうな。ううううぅう」
そう言うとパパはまた泣き出してしまった。
「やっぱりファルエルちゃんがママを助けてくれたのね。あまりに一瞬の出来事だったからママの見間違えかもとも思ったんだけど。ファルエルちゃん本当にありがとう。それより身体は大丈夫?どこかおかしいところはない?」
「うん。もうどこも痛くないよ」
「嘘でないのは分かるが、魔法を使えなかったファルエルが刺客を返り討ちにしたなど、わしの孫でなければ信じられん話だな」
「この歳で刺客を討つとは、やはり天聖になる星の元に生まれてきたのだろうか」
「ファルエル、魔法は今でも使えるのか?」
「僕もあの時使っただけだからよくわからないよ」
「それもそうだな。それよりもお前が倒した天使の特徴を教えてくれないか?」
「う〜ん。特徴はね、短い茶色の髪でね、灰色っぽい服を着てたかな。あとは顔の頬に切り傷みたいなのがあったよ」
「そうか・・・・。わかった。助かったよ。ファルエルはまだ小さいと思って話してはなかったけど、こうなった以上話しておこうと思う」
「うん」
「ファルエルのお兄ちゃんの名前はアムラエルだ。ファルエルによく似て本当に元気で可愛い子だった。歩けるようになって、しばらくすると自分でも家の周りに散歩にいくようになってな。パパ達はアムラエルが成長してきたんだと喜んで、家の周りだけは自由にさせてたんだ。それがある日夕方になっても家に戻ってきていないのをママが気がついて、外を見に行くと既にな・・・・。恐らく風系統の魔法か何かでボロボロにされていたよ。頑張って逃げようとしたんだと思うがうつ伏せに倒れていたんだ。くっ・・・・」
「それでね、ママ達もアムラエルを殺した相手を探そうとしたんだけど、一切痕跡が残っていなくて。多分パパの事をよく思ってない相手じゃないかとは思ったんだけど証拠も何もなくて。それで、ファルエルちゃんが生まれてからはずっと一緒にいる事に決めて、外にも1人では出さないようにしてたの」
そうか、それで俺はほとんど外に連れて行ってもらえなかったのか。
それにしてもお兄ちゃんは2歳かそこらであいつに殺されたのか。
俺だから対処できたが普通の2歳児にあいつの対応ができるはずもない。
くっ・・・話を聞いただけでも怒りがこみ上げてくる。
「ファルエルちゃん」
その瞬間ママが抱きしめてきた。
「ファルエルちゃん優しいのね。お兄ちゃんの為に怒ってくれてるのね。本当にありがとう」
怒りの度合いはママの方が遥かに高いはずだが、俺のことを気遣ってくれているのを感じ幾分か気持ちが落ち着いてきた。
お兄ちゃんの事は今更どうしようもないが、ママを守れてよかった。
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