第20話 事情
夢から覚めた俺は家族全員に泣きつかれたが、全員が落ち着くまでしばらく待った。
ママに聞いて俺が5日間寝込んでいた事は分かったが、それ以外の状況が全く分からないので更に確認することにした。
「ママは、ぼくが倒れたあとは、襲われたりしなかったの?」
「ファルエルちゃんが、変な鳥を退治してくれたから無事でしたよ。本当にありがとう」
「それじゃあ、あの天使の事は見ていないんだ?」
「ファルエルちゃん以外の誰もいなかったわよ」
「そう、みんなおちついて聞いてくれる?」
「うん、なんですか?」
「ぼくにはお兄ちゃんがいたんでしょ?」
「そうね。もういなくなってしまったけどね」
「あの鳥を使役していたのはね、お兄ちゃんを殺したやつだったんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺が真実を伝えた瞬間部屋の中の時間と空気が止まってしまった様な錯覚を覚えた。
ママとパパそしてグランパ達も顔が見る見るうちに真っ青になって言葉を失ってしまっていた。
「す、すまない。ファルエルどう言う事だ?何を言ってるんだ」
「ぼくが、おうちの外に出たら、あの鳥が襲ってきたんだけどね、僕が動けなくなった最後に、隠れていたあの天使が出てきたんだ。それでねぼくのお兄ちゃんを殺したって。簡単だったって」
「っつ・・・・・・・・・・・・・・・」
「ファルエル、その天使はどこに行った。どんな顔だった。どんな姿だった。頼む教えてくれっ!」
パパが怒っていた。俺には努めて優しく喋ろうとしているが、内から吹き出す怒りが全身から迸っていた。
子爵級悪魔だった俺が圧倒されるほどの怒気を放出している。
このパパの姿を見て俺は悟った。あの天使の言っている事が本当だったのだと。
「パパ。まず言っておくね。その天使はね、もういないよ」
「どこに行ったんだ?どっちの方向に行った?なんでもいいから手がかりを教えてくれ。パパはどうしてもその天使に会わなければいけないんだよ」
そう言葉を発したパパの後ろでグランパとグランパパからもパパと同種の怒気が噴出しているのが見て取れた。
言葉だけではなく本当に3人の怒気で空気が震えている。
部屋の空間自体が震えているのがわかる。
家族なのであまり気にした事はなかったが、この3人は本当に強い。恐らく前世の俺よりも強い。
「安心して。いなくなったって言うのは、ぼくが倒したんだ」
「えっ・・・・・・」
また部屋の空気が止ってしまった。
「すまないファルエル。パパがおかしくなってしまったのかファルエルの言っている言葉の意味がわからない。もう一度言ってもらってもいいか」
「だからね。ぼくが倒したんだよ」
「・・・・・・・・・・ファルエルが倒した?」
「倒したって言うのはどう言う意味なんだ?押し倒したってことかい?」
「そうじゃなくて、本当に倒したんだよ」
「・・・・・・・・・・お父さん、ファルエルの言っている意味が分かりますか?」
「・・・・・・・・・・・・・・すまない。俺にもファルエルが何を言っているのか分からない」
「もしかしたら、まだ目覚めたばかりで混乱しているのかもしれませんね」
まあ、俺の言葉に驚くのは理解できるが少し失礼だな。
「グランパパ、ぼくは大丈夫だよ。本当にあの天使をぼくが倒したんだ。だからもう大丈夫だよ」
「ママ、ぼくはおかしくなったのか?それともまだ夢の中にいるのか?すまないがほっぺたを思いっきり叩いて見てくれないか?」
「私も夢の中にいるみたいです。夢なので思いっきり行きますね」
「バチィイイイン〜」
「ママ痛い・・・・」
「私も手が痛いです」
「夢じゃないのか・・・」
「夢じゃないですね・・・」
「・・・・・・・・ファルエル。お願いだパパ達にも分かるように話してもらえるかな」
「うん、じゃあわかるようにお話しするね」
俺は漸く落ち着いたパパ達に事情を説明することになった。
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