第18話 夢の中
「きゃ〜!誰か来て、ファルエルちゃんが。すぐ直してあげるからね『ホーリーキュア』絶対にママが助けるがら、しっかりして」
俺はまた夢を見ていた。子爵級悪魔の姿に戻った俺がなぜかママに抱っこされている。
俺は悪魔だぞ?
なぜ天使であるママが俺を抱っこしているんだ?
よくわからない状況の中、動き様もないのでママに抱っこされたままになっている。
あったかくて気持ちがいいので全く問題はないのだが、ゆっくり休みたい、そう思った瞬間、今度はパパが現れた。
夢の中のパパはなぜか泣きながら
「すまんファルエル。すまん。パパを許してくれ」
と悪魔の俺に謝っている。
夢の中だがパパが泣いているのを初めて見た。いつも暑苦しく豪快なパパが大粒の涙を止めどなく流している。
そもそも俺は、大人の男性が泣いているのを見た事がなかった。それが、あのパパの泣いているところを見るとは、やはりこれは完全に夢だなと思いながらも、パパの謝罪の意味がわからなかった。
俺はパパに何か謝ってもらう事など一切無いはずだ。
まあいつもの髭ジョリジョリは少し謝ってもらってもいいくらいだが。
ふわふわした気持ちのいい状態で休んでいると、今度はグランパとグランパパが夢に出て来た。
なぜか二人ともパパと同じ様に大粒の涙を流している。
「流石だ。流石はワシの孫だ。家族をママ達を守ったんだな。絶対に死ぬな!ワシの命をやるから死んではならんぞ」
「ファルエル。やはりお前はすごい子だ。3歳児が敵を倒すなど聞いた事が無い。お前は必ず天聖になる子だ。私の誇りだ。何があっても生きろ。私の命などいつでもやるから生きろ」
一体この2人は何を言っているんだ?
悪魔の俺が死ぬわけないじゃ無いか。
しかも2人とも命をくれるらしい。年寄りの命なんかいるわけないだろ。2人ともしっかり長生きしてくれよ。命などもらって、起きたらぽっくり逝かれたら目覚めが悪くて仕方がない。
それと天聖ってなんだ?この前は天剣って言ってなかったか?
しばらくすると今度はグランマとグランママまで出てきた。
「ファルエル、ママと赤ちゃんを守ってくれたのね。本当にありがとう。あなたは私の誇りだわ。ママも赤ちゃんも無事よ。あなたのおかげだわ」
「ファルちゃん。私の命もあげるわ。何がなんでも助けてあげるからね。あなたは神の生まれ変わりだわ。絶対に死なないのよ」
普段あまり話さないグランマとグランママも泣いている。しかも同じく命をくれるらしい。だから年寄りの命なんかもらっても仕方がないんだって。しっかり長生きしてくれよ。なんだ?うちの家族は命をあげるのが流行っているのか?命なんかそう簡単にもらえるわけないだろ。
しかもグランママ、俺のどこが神の生まれ変わりなんだよ、どっからどう見ても俺は悪魔だぞ。
いまいち天使にとっての神の立ち位置がよくわからい。
俺を崇め奉るつもりか?
不思議な夢はそれからも続き、家族が入れ替わり立ち替わりで登場してくる。
しかも全員が登場してくる度に大粒の涙を流している。
この水の感じ、まさか俺はまたおねしょをしているのか?3歳にもなって夢を見ながらおねしょをしているのか?
だからみんな大粒の涙を流しているのか?
やばい。起きたら速攻で布団を干さなければまずい。
焦りながらも、やはりママに抱っこされている様な、ポカポカした感じが続いており気持ちが良い。
やっぱり気持ちがいい。夢の中でも気持ちがいいので寝てしまいそうになるが、意識を手放そうとするとその度に家族に誰かが
「死ぬな〜!死ぬんじゃないファルエル〜!」
と大きな声で呼びかけてくるので、深い眠りにつく事が出来ずにずっと夢を見ている。
流石に、もううるさい。いい加減静かに寝かしてもらえないものだろうか。
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