第16話 危機
俺には大きな変化が訪れていた。
ママのお腹に赤ちゃんを身篭った事と俺が3歳になりかなりの事を一人でできる様になったので、今まで一切一人では外に出る事は許されていなかったが、家の周辺だけであれば一人で出歩く事を許されるようになった。
まあ周辺だけなので家の者以外には誰共会うことも無く、外部の情報は何も入って来ない。
だだこれまで家ばかりで過ごしていた事を考えると、やはり外に出れるようになった事は大きな進歩と言える。
一人で外に出る事が出来るようになった俺は、今までの鍛錬に加えて家の周囲を走り回る事を始めた。
3歳児なのでスピードは知れている。しかも家の中にずっといたせいか、身体能力は魔力操作の訓練と共に上がっているが、体力が決定的に足りなかった。その為息もすぐ上がってしまうので今後のためにも鍛える事とした。
それからは、約3カ月間毎日走った。走ると魔力操作による身体能力強化が体力にも作用するのか、日々体力が向上し、3カ月後には何周しても息が切れる事は無くなった。
この頃には家の周辺を走るだけではもの足りなさを感じたので、俺は少しだけ距離を伸ばす為に家の敷地の門を出た。
門を出た瞬間、目の前に突然、旋風が巻き起こり俺はその旋風に巻き上げられてしまった。
文字通り吹き飛ばされてしまったので、空中でなんとか立て直そうともがいてみるが、3歳児の身では軽すぎるのかどうしようも無い。
だだ、このままでは叩きつけられて死んでしまうかも知れない。
空中ではどうしようも無いので頭を切り替えて着地の瞬間に全神経を集中する。
風の勢いが弱まって来て俺の体は重力に負けて、地面に叩きつけられてそうになるが、俺の小さな翼と足に全神経を集中して、着地を試みる。
俺の翼は小さく、飛ぶ事はできないが、魔力を目一杯集中させて僅かばかりの強化を図り、重力に抵抗し、着地の衝撃を少しでも弱める為に足にも神経を集中させる。
「く、うううぅうう〜」
今の俺に出来る精一杯の抵抗を必死に試みたが、流石に無傷というわけにはいかず、おそらく足が折れた。
悪魔だった時に散々苦痛を味わったので痛みに対する耐性はかなりある方だと思うが、3歳となったこの身体での骨折は,すこぶる痛い。
「いった〜うぅう」
着地に際に恐らく中足骨が折れた。
それにしても、今の突風は何だ?
特に天気が悪かったわけでもない。
だとすると一体・・・
痛みに蹲っていると今度は真っ白い鳥がこちらに向かって降下してくるのが見えた。
明らかにこちらに向かって飛んできており、何となくだが不穏な気配を醸し出している。
やばいと思い、咄嗟に飛びのこうとするがジャンプする瞬間、力を込めた足に激痛が走り動く事が出来なかった。
「うううっ」
「ズド〜ン!」
動きを止めた俺に向かって白い鳥は突撃して来た。
腕をクロスして致命傷だけは避けるが、物凄い勢いでぶつかって来た。どう考えても普通ではない。
魔法なのか鳥が風を纏っている。風を纏った状態で思いっきり激突して来たので、俺は再び吹き飛ばされてしまった。
腕が折れた。身体を守る為に防御した右腕が完全に折れてしまった。
今度も耐えがたい激痛が襲って来たが、痛みに悶える余裕はなかった。
もう間違いない。これは俺を狙っている。
このタイミングで襲って来るとは、まず間違いなく俺の兄を狙った奴だろう。
信じられない事だが、俺が一人で家の敷地から出るのを見計らっていたのだろう。
それしか考えられない。
俺が3歳になる今までずっと監視していたに違いない。
「くそったれ、出てこい卑怯者が!」
天使に転生してから、言葉遣いもママ達に合わせて綺麗になっていたのだが、襲われた焦りと、兄を殺したであろう敵への怒りから完全に悪魔の時の素に戻っていた。
「出てこい。八つ裂きにしてやる!俺の家族に手を出す奴は絶対に許さん」
怒りで我を忘れていたが、俺は丸腰で腕と足を骨折しており魔法も使えない。
例え相手が出て来たところで3歳児の俺には対抗手段が一切なかった。
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