第14話 特訓
俺は全く使える気配の無い聖魔法を寝ても覚めても練習している。
およそ1カ月程毎日練習を繰り返したが、全く発現する気配がなかった。
この頃には流石に俺も悟った。
俺は聖魔法を使うことは恐らく出来ない。
出来ないが、この状況で出来ないと言う事は出来ない。
魔法を使う事の出来ない自分を想像してみたが、このままでは俺の存在意義が無い。
流石にまずいので、聖魔法の練習と並行して今まで以上に読書に耽り、知識を詰め込む事に力を注いだ。
知識だけでも足りない。
聖魔力は感じられるので、流れる動作をとにかく鍛えた。何かの効果があるのかはわからなかったが何かの足しになればと思い徹底して右回りの流れを意識してきたえた。
そして、1歳の身ではどれだけも出来ないが、できる限り身体を鍛えた。
寝る時間以外はとにかく自分を高める事に費やした。
パパとママも俺の頑張りは感じているようでとにかく褒めてくれる。魔法を発現できない事を一切責めたり嘆いたりはしていない。
ここは本当に不思議なところだが、嫌な気はしないので、まあ頑張るしか無い。
そこから約5カ月間は同じことを繰り返し続けたが、相変わらず魔法は発動しなかった。
ただし、少しだけ変化があった。
まず魔力の流れだが、意識しなくても常時右回りで高速に回り続けている。そのせいか総量も増えた気がする。
そして魔力を常時回し続けたせいか、身体能力が上がってきた気がする。通常の筋力の向上とは別に魔力によるブーストがかかっている気がする。1歳半の身ではブーストがかかっても大した事は無いが、それでも、魔法が使えない俺としては、魔力の使い道が広がった気がして嬉しかった。
1歳半になり、かなり動けるようになったが、相変わらず俺はあまり外に出してもらえる事はなかったものの、その理由も分かった。
俺は、パパとママの長男だが、第一子ではなかった。俺には2つ上の兄がいたらしい。
いたらしいというのは今はいないという意味だ。
俺が生まれる前に、死んでしまったらしい。
はっきりとはわからないが敵対する勢力に殺されてしまったようなのだ。
俺が天界で会ったことがある天使は、身内を含めて極少数だけだが、皆俺に本当によくしてくれる。なので天界にいる天使は皆善良なのだと思い込んでいたが、そんな事はなかったようだ。
悪魔と同じように争いも有れば、良い天使も悪い天使もいるようだ。
流石に悪魔は居ないようだが、魔獣や妖と呼ばれる類の害獣もいるらしい。
俺のパパとママに敵がいるとは到底思えないが、実際に起こったようなので、本当にいるのだろう。
「ファルエルちゃんも、自分のことが自分でちゃんとできるようになるまではずっとママが一緒ですからね〜」
「おお僕のファルエル。お前のことは何があってもパパが守り抜くからな。安心しろ!」
最近になって、この人達が俺の能力や才能とは全く別の所に愛情を注いでくれている事を痛感している。
全く成果の出ない俺に対して微塵もマイナスの感情を示さない。
「おおっ。わしのファルエル。1歳半にしてそれだけ動けるとはやはりわしの孫だな。なにっ今読んでいるのは『天界と魔界の大戦史』を読んでいるのかっ。ゆくゆくは将軍にでもなるに違いない。めでたい」
グランパも俺が魔法を一切使えないことは知っているはずだが、全く俺を責めるような言葉を伝えてこない。
もう一人のグランパも
「私の愛しいファルエルよ。何と理知的で努力のできる子なのだろうか。この幼さでこれ程までに努力できる子を見た事は無い。私はファルエルの事が誇らしくて仕方がないよ」
などと言って俺を褒めてくれる。
魔界にいた時に魔法を失敗しよう物なら
「こんな魔法もできないカスが、この魔界に存在しているとは信じがたい。塵芥でももう少しマシだぞ。次失敗しよう物なら、死んでしまえ」
と本気で言われたものだ。
それが今はどうだ。出来の悪い俺に全く違う感情を向けてくれている人たちがこんなにいる。
前世での俺は人の為に何かを頑張った事はなかった。
今までは全て自分の為に頑張ってきた。
しかし、今はこの人達の為に頑張りたい。
どうにかこの人達の為に魔法が使えるようになりたい。
ここから数話かけて序盤の山場を迎えます。
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