第12話 聖魔法の練習
家族全員で1歳の誕生日のお祝いをした次の日から俺は遂に魔法を教えてもらう事となった。
こんなにあっさり教えてもらえるので有れば、こんなに苦労して本を読もうとしなくてもよかったかもしれない。
「ファルエルちゃん。本当は5歳ぐらいまでは教えなくていいかな〜と思ってたんだけど。パパ達がファルエルちゃんならすぐにでも教えるべきだって言うから、試しに聖魔法の練習をしてみましょうね」
「うん。がんばる」
「それじゃあ、まずはね〜体の中を流れる魔力を感じるところからね。体のどこでもいいから、あったかいような、ふわふわしたものを感じられるようになるのが第一段階なんだけど、ファルエルちゃんお腹の辺りでも意識してみて」
「ママ、たぶん、これでしょ。からだのなかいっぱい」
「ファルエルちゃん。もうわかるの?ママこんなに直ぐ魔力を把握出来たの聞いた事がないわ。まあファルエルちゃんが間違った事を言うとは思えないから次に進んでみましょうね。やっぱりファルエルちゃんは凄いわね〜」
ママはこう言っているが、聖翔の儀を終えた瞬間からすぐに、魔力っぽいのを感じられるようになっていたので、全く問題にならなかった。
悪魔の時の魔力の感じとは明らかに違うので、身体が違うせいか、それとも天使と悪魔で使う魔力自体が違うのかもしれない。
「それじゃあね〜。ファルエルちゃん今度はね、そのふわふわした魔力を体の中でこっち向きにぐるぐる回してみてね。早く回せれば回せるほど魔法が使いやすくなるからやってみようね」
ママは右回りで魔力を回すように言ってきたので、早速やってみる。
悪魔の時にはこんな作業はなかったので、やはり何かが違うのかもしれない。
身体の中にある魔力らしき物に意識を集中して、右回りで流れていくように誘導してみる。
それまでボワ〜ンと存在していた魔力が規則性を持ってゆっくりと流れ出したのが感じられる。
流れが出来ると後は特に苦労しなかった。そのまま意識的に誘導を続けて加速させていくと、調子が出てきたのかどんどん早くなっていく。
どのぐらいのスピードになればいいのかわからないが、感覚的にはかなりのスピードでぐるぐる回ってる気がするので、言われたことはしっかり出来ているのでは無いだろうか?
元々暗黒魔法を使えていたのだから、俺にとって魔力の操作など造作もない事だ。
まあ、それなりにこつと集中力を要するので、ただの1歳児には、ちょっと難しいかもしれない。
「ママ、できたよ。こっち回りでできた」
「ファルエルちゃん、流石に一日ではこれはできないのよ」
「ううん。できた」
「ファルエルちゃん、ちょっと待ってね」
そう言うと、ママが俺の背中の辺りに手を置いた。
「ファルエルちゃん。ママは驚いちゃったわ〜。本当に出来たのね。やっぱりファルエルちゃんは特別なのね。これだけ凄いと天才とかじゃなくて、魔法の神様の生まれ変わりなのかもしれないわね〜」
いや、ママ。俺は、魔法の神様とかじゃなくて子爵級悪魔の生まれ変わりなんだよ。
「ファルエルちゃん、普通はここまでで1年ぐらいは、かかっちゃうんだけどもう出来ちゃったわね〜。後はね、聖魔法の呪文の意味を理解して唱えるだけなのよね。普通だと呪文の意味の理解が小さい子供には難しいんだけど、ファルエルちゃんは『天使の健康と医学』とか『地政学』とか読んでるものね〜。すぐにでも理解できそうね。試しに簡単なので試してみましょうか」
流石はママだ。早速聖魔法を試させてくれるらしい。
室内ではかなり危ないので、庭に移動してから聖魔法の練習を続けることになった。
「それじゃあファルエルちゃん。『ホーリーボール』の魔法を使ってみましょうね。『ホーリーボール』は聖なる光の球が飛んでいく魔法だからね。まずママがやってみるからママの真似をしてみてね」
そう言ってママは右手を天に向かって突き上げて『ホーリーボール』と唱えると、巨大な光の球が天に向かって飛んでいった。
『ホーリーボール』は初歩的な魔法のはずだが、ママから放たれた魔法は、俺よりも大きな光のボールがすごい勢いで飛び出して行った。
すごい・・・
これは明らかに普通ではない。やはりママは凄い。
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