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再探査、開始。


「…は?撤収です?」


「…なんでまたそんな急に。」


「…なあ主任サマよ、ソイツぁ…」


デコボココンビは三者三様、反応は似ていても出てきた言葉はアッシャーがやはりと言うか一番確信に迫っていた。


「きな臭ぇなんてもんじゃねぇなおい。」


「…詳細は話せないが…従業員は殆ど今日中に撤収してもらう。」


「殆ど、って事は…?」


「俺とアーシェラ、それにお前ら俺直属の三人は残れ、撤収前に最終調査をしてから帰る。」


「…何を調査するので?」


とは、デク。


「アッシャーと俺が地龍に出くわしたのは話したな。」


「ええ、よくご無事で。」


「…地龍ってのは魔物だ、このクロノギアにおける魔物の定義を言ってみろ、デク。」


「…えっ、と確か…既存の生物に魔石がなんらかの形で取り込まれ、淀みに触れて変異したモノ…でしたっけ?」


そう。

デクの言うように魔物とは魔石と、淀みと言われる穢れに触れた生物に起きる急激なメタモルフォーゼだと言われている。


誰一人としてそれを確認した訳ではないが、魔物と呼ばれる生物は全てその心臓付近に魔石が癒着するようにして存在する。


その為に魔石のかけらを長年にわたり取り込んだ生物が「淀み」に触れて変異するとされている。

実際に魔石を粉末にして与えたラットに過剰なマイナス因子を含む魔力媒体…つまりは使い潰して黒く変色した廃棄予定の魔石を括り付けたところ、その肌が変質したのが確認されたとか言われている。


ただ、不思議と研究はそれ以降遅々として進んでいないそうだ。


「そうだ、概ね正解だが…地龍が発生…或いは寄ってきた場所だ、腐っても純粋な龍種…高純度、AやSランクの魔石があの縦穴の下に存在する可能性は高いと思わないか?」


「…なるほど、主任サマはそれを屁理屈にして近いうちにここを軍部の横暴から取り戻す算段をしたいわけだ。」


「…あくまで土産になる情報を確保しておくだけさ、最終的に判断するのは役員会さ。」


「…危険だと言ったんだけどね…この人、聞かないのよ…俺はもうブラック企業の歯車じゃない、って…というか、ブラック企業って何…?」


「…はあ、まあ確かに理不尽極まりないしなあ。」


「主任が言うなら、いいんじゃないか?」


ボックルの言葉に、デクが乗っかる。


「ハッーーまあ、俺は今更だな。」


アッシャーはカラカラと笑い、頷く。


まあ、これは俺の我儘みたいなものだ。

前世の俺は自分に能力が無いと嘆いて、会社には服従しなくては…せめても俺にできるのは指示を守ることだけだと唯唯諾諾(いいだくだく)と従うだけだった。

結果として我を殺し、只管に働き続けた結果。

一人孤独に…過労死したのだ。


もう、あんな目にあうのは2度とごめんなんだ。

だから今生では会社の意に従うだけではダメだ。

ある程度真面目に従いながら、それでいて自分に出来ることをしてアピールしておかないといけない。


俺は無能では無い、傀儡でもないのだ、と。

そんなガキみたいなプライドの話だ。


因みにこの話、後になってうちあけたら…「なんで自分で企業しなかたの?」とうちあけた相手に言われてしまった。

…そんな根性、なかったんだよ。

社畜とはよく言ったものだ…生まれ変わってもその辺りは変わらないままだったらしい。


「整備の連中に、コンボイ人数分とパーツを積んだ輸送車両を置いてけって指示しといたから格納庫に行くぞ。」


「準備がいいねー。」


「主任さ、なんかいつもよりイキイキしてない?」


「…(ストレス)たまってたんだなあ…かわいそうに…キレイなお姉ちゃんがお酌してくれる店紹介しようか?」


その言葉に思わず頷きかけたんだが、アーシェラの視線が物凄く怖かったので遠慮した。


…何でだ。



で、五人で魔導機械(ウォーロック)の格納庫に行くと…先客が居た。


「おう、ガキども…楽しそうな事してやがんな、あん?」


「…オッフ。」


そりゃそうだ。

考えてみりゃ整備に話した時点で筒抜けデスヨネ。


「…おやっさん…ご一緒、します?」


もちろん、事情は話した上で先に撤収をお願いしていたのだけども。

…まあ、魔導機械(ウォーロック)使う時点でこの人が出てこないわけなかったんだよ。


まあ、予定外だけどおやっさんが来るのは正直頼もしいな。


「お前らが俺について来いヒヨッコどもが!」


金槌の柄で、思い切り殴られた。

何で俺だけ!


「事情話すだけ話して俺を蚊帳の外にしようとしやがった罰だ、この、ダボが!」


因みにダボ…とは兵庫県や神戸あたり使われる訛りで、アホ、バカ、と言った意味である。

何故か、この世界ではドワーフの訛りになっている。


見ればすでに、おやっさん用の機体を含めた5機のコンボイが武装済みで待機していた。

全機に前回同様のカノーネの魔導砲の模造品(レプリカ)、 近接武器はおやっさんの機体以外は分子カッターを、おやっさんの機体だけは魔導砲無しに両手持ちの、大振りのメイスみたいな鈍器…回転掘削式の通称、石喰(ストーンイーター)を握っている。

うち一機は二人乗りの特別仕様である。


本来来客を乗せて坑道内を視察などするためのツーシートだが、今回は起動免状を持たないアーシェラを乗せるために出してきたのだ。


キーを挿し、捻ってコンボイの魔石式原動機(フェイタルエンジン)を動かし、計器類をチェックする。

全て順調だ。


「…オールグリーン、補助機構…FCS起動。」


普段使わない、火器管制(ファイアコントロール)システムを立ち上げる。

本来はテロなどの標的になった時に緊急対応するためのシステムだが、重機であるコンボイで地龍相手にアッシャーと俺が射撃戦なんて出来たのはコレのおかげだ。


先日、マッピングした横穴から先のマップデータを並行して立ち上げ、坑道内へと歩を進める。


五機の鋼は、坑道の先…闇に覆われた深い穴へと探査を開始するのだった。







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