その少年は、夢を見る
「...くん、和哉くん」
懐かしい声がした気がした。うっすらと目を開くと散らかってる自分の部屋が広がってた。
「夢か.........」
それにしても誰の声だったんだろうか。幼馴染みの美奈子の声とは違う、鈴を転がしたような柔らかい声...なんてちょっと気持ち悪くないか自分。まあいつか観たアニメのキャラか何かだろうと自己完結をする。そんな考えを巡らせながら、ふと時計を見ると朝8時...って8時はえーと8o'clock?いつも起きるのは7時30分だからとどのつまり...
「はぁぁぁ?!」
いつもならこの時間は学校に着いている時間だ。
「やばいやばいやばい...!」
俺は大急ぎで学ランを着ると、カバンにタブレットを放り込んで部屋を出ようとする。
「っとその前に...父さん行ってきます。」
六畳ばかりの部屋の隅にある小さな棚の上に置かれた写真に向かって少し祈ると今度こそ俺、柳和哉は部屋を飛び出した。
結局始業の時間に間に合う筈もなく、校門についた頃には8時20分になっていた。当然門は閉まっている。ため息を付きながらバックの中から1枚のカードを引き抜くと校門の左側にある認証ゲートに当てた。重苦しい音がして門が開く。もう1度ため息を付くと、右腕に着けている学校支給品の腕時計型ARデバイスで時間割を確認する。
「1時間目は現社か...。色々ついてないなあ.....」俺はトボトボと校舎に向かって歩いて行く。まったく、科学技術はどんどん進んでいってるっていうのに、学校というのはどうしてこうも頑ななんだろうな。未だに公共交通機関以外使用禁止とか頭おかしいぜまったく.....。