私が護るよ
こちらの連載は、後回しにすることになりました。
いつになるかはわかりませんが、よろしければお待ちいただけると幸いです。
こちらは、現代に妖や神といった存在がよみがえった世界です。
世界に人間以外の存在が蘇って、既に20年以上の時が経った。
ーー千年以上も前に、人と人外のモノ達との争いが激化したらしい。それを終わらせるために人外のモノ達を人というワクの中に押し込める術が使われたそうだ。
その術は、術を掛けた一族が代々守り続けていたのだが、その意味を本気にしなかった後継者のせいで、引き継ぎを失敗。結果術は解けて、世界に人外のモノたちが溢れた。
それでも、あまり混乱が起こらなかったのは、人と人外のモノ達の双方に、本能に刻まれていたからなのだろう。ごく自然に、それまでと変わらないように、現状をほとんどのモノが受け入れた。受け入れられなかった少数は、彼らと異なる場所で、彼らを無視するように生活をするようになったことで、問題自体はほぼ起きなかった。
そうして、特に争いもなく、数十年の時が過ぎた頃に、それは起こった……。
人外の中でも、特に力が強いもの達。彼等は『神』と呼ばれる。とはいっても、実際に力の強さ以外は他の人外とも変わらないけれど。神と呼ばれるモノ達も、力の強い人外としか認識してはいないし、本来、神と呼ばれるモノが持つような『創成』の力を持つものも存在しない。
いや、もしかしたらそういう本来の神は、自身の創った世界の外で見守る者なのかもしれない。
そういう、普通の神々はまあいい。問題は、自身を唯一の神とするモノだ。
『彼』は、世界を自らが創造したのだから、全ての者は従え、といった。だけれど、彼の神のたる眷族たるモノ達以外が従うことはなかった。……当然のことだが。
それを知り、怒りをおぼえたらしい彼の神は、それを長期に渡る封印故と判断した。そして、自身の本来の力を取り戻すとして、ひとりの少女を自身の物としようとしている……。
「ふざけるな!!」
大柄な少年が吠えた。
ここは、学校の生徒会室。神に狙われた少女というのが、学校の生徒会長の妹だったため、その事を知った会長が役員を集めたのだ。そして、以上の事を説明した結果、彼、生徒会副会長、大神蒼牙が切れた。
「斎があんなのの巫女になんかなる必要ない!」
「まったくだね」
こちらは会計の烏丸黒羽。長身、スレンダーな体型の美女で、女子生徒のファンが多い。
「斎くんをあんなやつらの道具にされてたまるか」
「そうだよ! 斎ちゃんは、ボクの巫女になるんだから!」
こちらは小柄な少年、猫宮弥刀生徒会書記をしている。
「斎ちゃんを守らなきゃ!」
「じゃないでしょ。何で斎があんたの巫女にならなきゃいけないの。それを選ぶのは巫女自身。通常なら、中学を出てからの話でしょ?」
すぱん、と猫宮の頭をはたきながら、可愛らしい少女がつっこむ。生徒会庶務、宮地梓。斎と同じく巫女の資質を持つ少女だ。
『巫女』『巫』そうよばれる者たちがいる。自らの仕える人外に、力を与える存在。神の血を引く人間のほんの僅かが、その力を得る。
宮地は日本の神の中でも力を持つ神、スサノオの血を引く巫女であり、生徒会長である天辺煌、その妹の斎は最高神とされるアマテラスの血を引く術者、および巫女なのだ。
そのために、あくまで人でありながらも、天辺は宮地を自身の巫女として持っているし、あちらの『神』も、強い巫女としての資質を持つ斎を狙っているのだ。
……いまだ、斎が12の少女であるにも拘わらず……。
「……どちらにしろ、選ぶのは斎だ。俺たちは斎の平穏を護ればいい。あのロリコンは、年を偽って来年斎と同学年に入学する予定だそうだ。……いいか、絶対に斎を護るぞ」
「「「「はい!!」」」」
生徒役員全員にとって、斎は可愛い妹分であることは確かで、護ることを決意をするのだった……。
「……来年、あっちの神様が、あたしを巫女にするのにくるんだって……」
斎は傍らの人物にそう告げる。
「あの神様の巫女になっちゃったら、もう静ちゃんとも会えなくなっちゃうのかな……」
しょんぼりとする斎に、返事をする。
「大丈夫だよ。選ぶのは斎だから。斎が私から離れることを望まなければ、ずっと一緒にいられるよ?」
「ほんと? 静ちゃん、ずっと一緒にいてくれるの?」
「斎が望む限りはずっと側にいるよ。私は斎の剣だから。私が斎を護るのだから」
「うん!」
嬉しそうに笑いながら、斎は静ー十束静に抱きつく。
剣神の一族ゆえに、伴侶を選ぶまでは性別を持つことのない、神の後継たる少年は、そっと愛しい少女を抱き締めた。
補足
生徒会長 神に近い術者。巫女もち。
副会長 神格化した狼。
会計 神に仕えるもの、ヤタガラス。
書記 猫又。お稲荷さんにすべきか?
庶務 会長の巫女。実質婚約者の立場。
幼馴染み 巫女の幸せを願う剣神。性別を持たない。巫女の相手第一候補。
こちら、連載になる場合は、この短編が一話になるかと思います。