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熱病

浮気はしないと思う……(´-ω-`)

ただからかっているだけ。

ただなぁ……。中々に複雑な存在だからなぁ(´-ω-`)(´-ω-`)

 断続的な、呼吸音。息苦しそうに、二酸化炭素を排出する。

「ねぇ、そんなに無垢って大切なの……?」

 ソファにぐったりと横になり、弱々しい、虫の声で彼女は返答した。頬真っ赤に染め上げられ、蒸気して、熱に浮かされた瞳は情を誘う。熱をあげた女とは、どうしてこうも男を誘うのが上手いのか。

「何時か知ることじゃない……。守ったって無意味じゃない……」

 女の体がソファ上で弱々しく蠢く。そっと猫のように近付いて、指先を唇に近付けると、熱っぽい湿った吐息が吹きかけられた。

 より近づけて唇に触れようとすると、怒ったように手を払われた。

「弱っている女に漬け込んでんじゃねぇよ……。只でさえ惚れやすい状態なんだから……。其れに浮気するような奴なら心から軽蔑する」

 とろとろの双眸が私を見据える。眉は不愉快そうに顰められているが、其れでもいじらしく、好みのものが見れば一発だろう。

 私はさも楽しそうに口角を上げると、手を離した。

「熱い……熱いよ……。爛れるように、燃えるように……」

「冷ましてやろうか?」

 そうすると激しく頭を振り、其れを否定した。余りにも無理をし過ぎて、けほけほっと咳を溢す。

「御前は“そういうの”を軽視する傾向にあるからな」

「いずれ穢れるの。醜く、歪んで、捻くれて、澱んでしまうの……。其れを守って何になるの? いずれ穢れてしまうのに……」

 其れでも守りたがるのが人間なのだろう? という言葉を込み込んだ。女から距離を置き、最早所有席である椅子に腰掛けた。観察すると面白い。極上の酒を前に差し出されているようだ。

「お前が熱を出すと発情期の猫のようだな」

「黙れ、狸。触ったら殴る。浮気したら殺す」

 その瞳までも、女を屈服させる男にとっては煽り文句でしかなかった。女は私の事を睨みながら、虚勢としか思えない態度で此方を見据える。

「もう、会うことはないと思っていたから、来て遣ったのに……最悪……」


            ―終―

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