名前の由来
For硝吸鎌
何より異名が素敵なんだよ。君に似合の花さ。
大量に送ってやりてぇわ。トリカブトを。
By作者
黄昏の集い。その一室、死神の王が鎮座するその場所で、一人の女が姿を表した。今、この場所の主は此処にはいない。「少し様子を見てくるから」という事で席を外しているのだ。
その光景に大して驚きもせず、女は隅に置かれた一つの箱を一撫でした。
「久しぶり、鳥兜」
その名を呼ばれた際に、棺から呪詛めいた殺気が飛び散った。思わず女が身をそらした次の瞬間、目の前に見目麗しい男が姿を表した。
鴉の羽のような黒髪が床に向かって真っ直ぐに伸びている。紫水晶の想像が不快感を隠すことなく前を睨む。
「貴様に許した覚えはないのだが」
「そう怒らないでよ。硝吸鎌」
自身の冠する普通名詞の呼び名で呼ばれ、渋々ながら殺気を収める。だが不快感を消し去る事無く、此方を睨む。その様子を見て、女は僅かに頬を綻ばせた。
以前では有り得なかったことだ。姿を現すのも、怒りに身を任せて物を壊さないのも。それもこれも、彼に出会って軟化した。
「大事なんだよね。過去の相棒。でもなんで“要智”はそんな名前にしたのさ」
「嫌味だそうだ。死に際に残した最後の嫌味だから大切しろと」
吐き捨てるような言い方に反し、口調の裏には思い出を語るような優しさを感じさせた。まるで二度と会えない相手から選別を受け取ったような。
ま、硝吸鎌が自分の認めた相手にだけ許した呼び名だ。それだけ彼も大切にしているし、そしてその名を穢されるのも嫌う。
「ねぇ、一ついい事を教えてあげよう。彼奴は間違いなく恋人に会ったよ。会って幸せになった。だからきっと、今度は遺言を果たしに来るよ」
紫の双眸が、闇に濡れた双眸に僅かに光が灯る。生まれて初めて美しい物を写したような。そんな目だった。それから今までに見たこともないような顔で笑った。
「そうか.......」
「結婚式の神父役にお前を送り込んでやりたけど、そりゃ無理か」
「やれ、貴様なら出来るだろ」
肩に指を食い込ませ、左右にふる。表情は真剣そのもので、だからこそ苦笑いを浮かべた。
「祝儀はロングチェーンのピアスでいいな」
人の話を全く聞かずに、計画を立て始める。
彼は立ち直ったばかりだ。だからこそ、思い切り甘やかしてやりたい。
硝吸鎌は推しを推してるファン。
推しが幸せなら全然OK。自分が悪者になるのも厭いません。
自分を救ってくれた、かつての相棒には口には出さないものの滅茶感謝してます。
だから許せないんだろうな。「鳥兜」呼び。




