夕日が染める
こんな青春送ってみたかった・・・
そんな男くさい青春を送った作者の願望です。言ってて悲しい
「よっし、あ~がりっと」
そんな言葉と同時に、アイツは席を立った。
「んじゃ、約束どおり後の掃除は任せたからな~」
文句を言う暇もなく、アイツは教室を飛び出していった。大富豪で最下位だった奴が放課後の掃除を請け負うというのが俺達の恒例行事だが、まさか負けるとは・・・。やらずに帰るというのも考えたが、前回それで担任にお灸を据えられたことを思い出したのでその考えは却下された。仕方なしに掃除用具入れの方を向くと、一人の女子が視界に入る。
「あれ、藤本。お前も今日当番だったっけ」
そう声をかけると、同じく掃除当番の藤本はやけに目を細めてこっちを見た。
「おい、何で目細めてんだ。あれか、夕日が目にしみるのか。涙の言い訳にしちゃうのか」
「睨んでるんだよ、アホ。あんたらが遊んでる間にひたすら掃除してたんだからね、私」
どう見たって目細めてるだけじゃん・・・と思いつつ箒とちりとりを取り出す。モップは藤本に任せて、ゴミを集めようといざ掃きだしたときに藤本から声がかけられた。
「あ、箒やるんだったらついでに探し物頼みたいんだけど」
「いいよ。なに探せばいい?」
「ネックレス。シルバーの、リングが付いてるやつ」
「オーケー、見つけたら言うわ」
そんなやり取りを最後に、お互い無言で掃除を続ける。窓から入ってくる夕日は赤く教室を染め上げ、なんだか漫画でありそうな風景だな、と思った。
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「おっ」
掃除も終わり、箒を片付けようとしたころにそれは見つかった。
「こりゃ気付かないわな・・・。おーい藤本、あったぞ」
壁と掃除用具入れの僅かな隙間にあったネックレスを取り出しながら藤本に教える。
「ホント!?・・・うん、これこれ。よかった~。みんなに見せてたらいつの間にか失くしちゃってね」
安堵の表情を浮かべる藤本。なんだろう、藤本にとって特別なものだったりするのか?そう聞いてみたところ
「え?いやいや、普通にこの前自腹で買ったんだよ。デザインが気に入ってさ」
と言った。何だ違うのか、つまらん。勝手な失望の腹いせに、軽口で返すことにした。
「ま、それを見つけた俺の株急上昇だな。告白ならいつでも受けますからね~」
そうおちゃらけながら言ったところ、藤本は急に真面目な顔になり
「あ、そう。なら今言わせてもらうわ。私あんたのこと・・・」
その続きを聞き、真っ赤になる俺の顔。続きを口にして同じく真っ赤になる藤本の顔。
顔が真っ赤なのは夕日のせい。顔が熱いのも夕日のせい。俺の返事でさらに真っ赤になるお互いの顔も、真っ赤になりながら二人して笑いあうのも、全部ぜんぶ、夕日のせいだ。