永久就職!~甘い話には裏がある!~
最近の事情は、重々分かってます。分かってますけどっ!なんで、なんで、なんでぇぇぇえ!!
就活氷河期とか、就職難とか、就職ツンドラ地帯とか、とかとかとかとか!!私に降りかかるなんて思ってなかった………。
「あーあーあーあーあー、どっかにコロコロと転がってませんかー就職先」
「いや、ないっしょ?」
苦々しく言うのは、友人カナちゃん。
「ないねー、うん。あったら逆にすごいわ」
哀れんだ瞳で見下ろすのは、ナナちゃん。やめて、その瞳はやめて。
「なんでぇぇぇえ!私だけっ!?カナちゃんもナナちゃんも決まって……うぅう…」
「もう諦めて短大にしたら?」
「いーやーだー」
「はー、諦めの悪い子だねぇカナぁ?」
「ねぇ、ナナぁ?」
うなだれて、机に突っ伏した私を見下ろしてる見下ろしてる…はぅ、ずるいぞ!そなたら!
「む~このまま、自己就職に突入かぁ~」
「そーなったら、ハローワーク通いまくりだねぇ…がんばっ!」
「んにゃー、もう…だめ…かな…?」
「でもさー、ハローワークで新たな出会いあるかもよ?」
ナナちゃんが、怪しげな笑みを浮かべてニヤニヤこちらを見る。
「あーそれいいね!いいよいいよ!」
カナちゃんは、満面の笑みを浮かべて
「私にも紹介してねっ」という。ナナちゃんは、未だニヤニヤしながら
「ふふふ、ルイちゃんにもついに彼氏かにゃ?」
と呟く。
「………ないない」
ちょっと、恥ずかしくて頬を赤らめる。
「ふふふ、おねぇさんたちはいつルイちゃんに彼氏ができるのか楽しみなのにゃー」とカナちゃんはぎゅっと抱きついてくる。
「……はにゃ!」
「しょうがない、もう一度行ってくる!進路指導室っ!」
「はいはい、いってらっしゃい」
「ほい、がんばっ!ルイちゃん」
「うん!」
しかし、出鼻を挫かれるとはこういうことか?
「はにゃぁっ!」
教室の戸を開け、飛び出そうとしたがばふんっと誰かにぶつかる。
「おおう、すみません。痛かったです?」
と、上を見上げると…ぎゃぁぁぁあ!
「はは、大丈夫だいじょーぶ!」
爽やかという言葉がとてつもなく似合いすぎる学校一イケメンの彼。さらさらと流れる黒髪が、さらっともうさらっとあぁ!触りたいっ!……じゃなくてぇ…やばい!女子からの集団リンチが目に見える!!
「ややや、すみません、すみません!そして、すみませんんんんん!」
と叫んで(といっても皆さんに迷惑にはならない程度だ)、進路指導室へとかけてく。
***
「先生ぇ…助けてくださいよぉ~!本当に、助けてくだせぇ~」
「おいおい、それやめろ。」
親しみやすい進路指導の先生、通称まっさん。松先生で、まっさん。まぁ、私は呼んだことないけど。
「まっさん、ルイちゃん助けたげてー」
「おおう、カナちゃんまじ天使!」
「そーそー。まっさんなら出来るっしょ?ほら、ルイちゃんいい子だし成績も悪くないし!」
「おおう、ナナちゃんまじ女神!」
「だからこそ、大学薦めてんのにこいつ。勿体ないって、その頭」
「まぁーねぇ?このこ頭勿体ないってのは認める。」
頭勿体ないってどういうこと?アホって言いたいんですか?
「ふ~ん、就活氷河期ってこういうことですか、先生」
にっこり笑顔を浮かべた爽やかイケメン。ちょっと、何故ここにいます?
「あー霧崎。お前は安泰な未来だからなー」
そう、学校一イケメンな霧崎くんは安泰な未来しかない。それもそうだ、家は大企業の霧崎グループだし将来はそこのトップだし。ついでにいえば、彼が来年から通う大学も彼の家のものだ。ま、彼は実力で大学合格してるけど。
「あー、そうだ。小春さん、いい就職先知ってるけど?」
小首を傾げて、こちらを見つめる霧崎くん。む?何故、私に就職先を教えてくれるんでしょうか?
「どんな内容?」
「そーだね、室内だねほとんど。あとは君次第だね」
まぁ、そうだよね、出来次第で仕事内容も変わるんだろうね
「時間とかは?」
「んーそうだね、これも君次第だね。」
「ん、じゃぁ!給料はっ」
ここ、重要!「結構いいよ?」
まじ?まじ?転がってたぁあああ!
「それ、そこ!そこに就職しまっす!」
「決まりだね、じゃぁここにサインと判子押してね?」
といわれ、さささっとサイン!押印!
あれ?なんか、違う気がする?
*****
「はい、コレ。就職の証」
そう言われ、手渡されたのは小さな箱。
「なんです、これ?」
そう呟いて、見下ろす。その箱を見るため、カナちゃんもナナちゃんも乗り出してみる。というか、周りの女子たちもみんな見ている。遠くても必死に見ている。怖い。
「ほら、開けて。就職の証だからさー」
と、急かされ開けると…
「「指輪っ?!」」
私より先に叫ぶ、カナちゃんナナちゃん。
「なんですか、これ!」
「え?就職の証、だけど?」
ふわり笑ってそれをとると、私の左手をとると…薬指にはめる。……薬指?!
「えっと、職場の皆様こちらをはめておいでで?」
「いや?職場といっても、定員一人だけだし。その一人が君だし?」
「ちょっと、え?一人?ていうか、職業はなんです?!」
カナちゃんも、ナナちゃんも頷いてる。
「え、いってなかった?俺の奥さん?」
…………………え?
「ええええええ!」
「ちょ、ルイちゃん?!」
カナちゃんの叫び声と、ナナちゃんの呼びかけが遠くに聞こえた。
「ほら、だってサインしたでしょ?それにもう、出しちゃった…婚姻届。」
にっこり満面の笑みを浮かべる霧崎くんは、ついでとばかりにスマホを取り出して婚姻届を出しているシーンの写真
見せてくる。
「……ほら、いい就職先でしょ?俺に永久就職。自分でいうけど、時期社長だし?給料もいいし、資産もあるし?老後も大丈夫。嫁として、俺の隣にいるだけでいいから」
****
というわけで、私。高校生で、結婚してました。
………同意してないんですけど。
「そこに、就職する。って言ってたよね、泪?」
「き、霧崎くん?!」
「霧崎くん?霧崎泪なんだよ、もう。なら、霧崎くんって自分にも当てはまっちゃうよ?」
にやり、笑って催促される。はうあう。
「ら、瀬くん!」
「じょー出来。」
ちゅっと、キスが落とされる。ぎゃあー!
皆さんも気をつけて、甘い話には裏があるっ!!